近年、脚光を浴びているペットテック。センサーやカメラ、ITソフトウエアなどの技術を使って、飼い主さんが外出している間のペットの様子を見守ったり、さまざまなバイタルサインを確認したりできる製品・サービスのことをいいます。
そこでペットテックには今どんなものがあるのか、調べてみました。また、数あるペットテックの中で、ペットの健康に関するプロフェッショナルである獣医師が注目しているものは?
見守りカメラも、おやつを与える機能や自動走行など進化中
ペットテックの代表格といえば、「見守り」用のペットカメラです。飼っている犬や猫の姿を固定カメラで撮影し、その映像を飼い主さんはスマートフォンなどからリアルタイムに確認できるというもの。多くは、動くものを検知して自動的にカメラの角度を調節し、映し続ける機能を備えています。
ペットカメラは画質が年々向上しているだけでなく、カメラの遠隔操作、ペットとの双方向の会話機能、遠隔でおやつを与える機能、音声入力への対応など、新たな機能が続々と登場しています。さらに、ペットの遊び相手を務めながら撮影する自走式ロボット型の製品も誕生しました。
価格は、3000円台から高機能な製品では3万円前後になることも。月額料金を払って利用するサービス型の商品もあります。
体重・尿量などチェックできる猫用スマートトイレ
猫用トイレも先端技術で進化しています。自動クリーニング機能の付いたトイレでは、猫が排泄してトイレを出ていくと、自動で砂をさらって、固まった排泄物だけをダストボックスに回収。飼い主さんはダストボックスを引き出して中身を捨てればOK。トイレ掃除の手間や時間を軽減できるだけでなく、飼い主さんが留守の時間もトイレを清潔に保てる利点があります。
健康チェック機能が付いたトイレも人気です。トイレに乗った猫の体重、トイレに入った時刻、トイレにとどまった時間、尿量などを計測する機能が備わっていて、猫に多い腎臓病の兆候を捉えるのにも有効です。専用アプリとセットになっていて、数値に異常があれば通知してくれるものもあります。
こうした尿量を計測できるトイレにはカメラやセンサーが搭載されており、IoTトイレ、スマートトイレなどと呼ばれることも。カメラで猫の顔を識別することで、多頭飼いの場合も猫ごとにデータを管理できるものもあります。価格は2~10万円程度。サービス型商品では月額数百円から1000円程度が主流です。
高機能化したトイレ砂でペットの健康を維持
トイレ本体だけでなく、トイレ砂も高機能化しています。電気ではなく化学を応用した製品。尿のpH値(水素イオン指数)によって色が変わる猫砂を、さまざまなメーカーが販売しています。猫は尿が高pH(アルカリ性)の状態が続くと尿路結石になりやすかったり、低pH(酸性)に傾いてのシュウ酸カルシウムの可能性もあったりするので、健康維持を目的に導入する飼い主さんが多いようです。
pHの他に、たんぱく質やビルビリン(ヘモグロビンの分解物で黄色の色素。含有量が多いと黄疸と診断される)の含有量をチェックできるものもあり、今後はチェックできる要素が増えていくのかもしれません。
迷子対策に心理チェックなど、ウエアラブル機器も多彩
ペットの首輪やハーネスなどに装着できるウエアラブル機器も、ペットテックの花形といえます。GPSセンサーを内蔵したタグなどを首輪に装着すると、ペット(首輪)の位置情報が確認でき、迷子になったときに探し出しやすくなります。
小型・軽量の活動量計を首輪に装着する飼い主さんも増えています。3軸加速度センサーなどを使って運動量やカロリー消費量、睡眠の質・量などを計測し、専用アプリでグラフなどにして分かりやすく表示するというもの。ペットのダイエットや病気の予防、治療効果の確認(例えば、関節炎の犬などに付けた場合、痛みや症状がある場合には動きが見られないが、治療していくと動きが見られ状態が改善していると確認できることがあります)などに使えます。
ちなみに、ペットにセンサー機器を装着するのではなく、飼い主さんが犬の散歩時に自分のスマートフォンを使って、散歩コースや距離、時間を計測するアプリなどもリリースされています。
“ペットの精神状態”を推し測れる?
また、心拍センサーを使って心拍情報をモニタリングする機器も。心拍の波形などから、喜びやストレスなど、“ペットの精神状態”を推し測るアルゴリズムも研究開発が進められています。飼い主さんとペットの意思疎通の助けになったり、飼い主さんからペットへの思いやりの気持ちがいっそう喚起されたりする効果があるようです。
獣医師も注目、自宅での健康管理テクノロジー
ペットの安全確保や健康維持、飼い主さんの負担軽減など、さまざまな目的のもとに開発されているペットテックの数々。たくさんのペットと日々接する獣医師の目にはどう映るのでしょうか。獣医師の山本昌彦さんに聞きました。
「私は決してペットテックの専門家ではないのですが、うちでも猫を飼っているので、IoTトイレには興味があります。IoTトイレもそうですが、家にいながらにして健康のチェックができる技術はいいですね。こういうものがあると、飼い主さんの意識の向上にもつながるのではないでしょうか。
ペットの病気やケガの治療は、動物病院だけでするものではありません。自宅にいるときの飼い主さんの協力(普段のお世話、予防、看病など)が非常に大切です。ペットテックも、治療の効果をデータで確認したり、普段から数値の推移を見ていて異常があれば動物病院へ連れて行ったり、といった形で活用していただくとペットの健康維持につながっていくと思います」
◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん
獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/
取材・文/赤坂麻実
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