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病院清掃35年のプロが語る「エアコンの下にソファを置かないほうがいい」理由とは?

エアコン
エアコンの真下に何があるかで部屋の清潔度が違うという…その意味とは?(Ph/photoAC)
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寒い冬、エアコンの暖房機能をフル稼働させている家庭もあるでしょう。実はこのエアコン、掃除のプロに言わせれば、真下に何の家具やモノを置くかによって部屋の清潔さが大きく変わってくるそうです。どういうことでしょうか? 「健康」という視点でさまざまな掃除術を紹介した『病院清掃35年のプロが教える 最新科学でわかった病気にならない掃除術』(幻冬舎)の著書がある松本忠男さんが解説します。

エアコンの真下にはホコリが溜まっている?

そもそも、エアコンの真下はどのような場所なのでしょうか?

「多くのエアコンは、いったん部屋の空気を吸って、冷やすか暖めるかをして、空気を吐き出します。問題は空気を吸うとき、つまり風下に当たる部分。エアコンが吸って吐いて空気の流れを作っているわけですが、その流れに乗って部屋中のホコリが吸い寄せられます。

すべてが吸われてフィルターを経由してくれればよいのですが、比較的重いホコリは吸い込み切れずに下へ下へと落ちて行きます。このため、空気の入口であるエアコンの真下は、他の場所に比べてホコリが多く溜まってしまうのです。

空気清浄機も同様です。部屋の空気を吸って集めて、フィルタリングして吐き出しているため、風の通り道は汚染物質が集まりやすいといえます」(松本さん・以下同)

エアコン
エアコンの真下はホコリが多く溜まりやすい(Ph/photoAC)
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病院でもエアコンの真下には医療機器を置かない

ということは、エアコンの真下や空気清浄機の付近は、ウイルスをはじめ、カビやPM2.5などなど、部屋中の有害物質が集まっている可能性があるということ。もしエアコンの真下に、ダイニングテーブルやベッド、ソファを置いていたら…?

「実は病院でも、エアコンの真下には医療機器や医療材料などを置かないようにしているケースが多いんですよ。エアコンによって集められたホコリで、患者さんに直接触れる医療材料が汚染されたてしまったら、かえって悪影響になりますから」

壁際や窓際にベッドやソファを寄せるのはNG

もう一つ、衛生上気をつけたい場所が窓際や壁際。ここにベッドやソファをぴったり寄せて配置している家庭は多いと思いますが、実はとても不衛生なのだそう。

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NG例の1つ。ソファやベッド置き場所を間違えるとホコリやカビの溜まり場に!(Ph/photoAC)
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「窓際、壁際は、冷えたり暖まったり、1日の中でも温度変化の大きい場所です。温度が変化する場所には上下の気流が発生します。特に冬場は、室内の暖かい空気が冷たい窓ガラスに当たって急激に冷やされ、下向きの風が走る『コールドドラフト現象』が起こります。冬の寒い朝、窓際にいると風がピューピューと聞こえることがありますよね。それは、窓の近くで気流が発生しているために聞こえるのです。

コールドドラフト現象が起こると、室内のホコリやカビが気流に乗って窓際へ窓際へと移動してきます。仮に、窓際にベッドがあれば、ホコリやカビはベッドに当たって、その場にとどまります。つまり、窓際に置いたベッドは、ホコリやカビの出口となり、そのまま滞留してしまいます。もっとも清潔であるべき場所が、皮肉にも、部屋中の汚染物質が溜まる場と化してしまうのです」

ベッド、ソファは窓や壁から5~10cm離す

解決法はただ一つ。ベッド、ソファを窓や壁から5~10cmほど離すことです。

「ベッドやソファを窓や壁から離すことで、窓際、ベッドやソファの下、床の順に空気が流れていき、ホコリなどが滞留しにくくなります」

モノを減らせばホコリが溜まりにくくなる

でも、そもそもマメに掃除をして部屋のホコリを溜めなければ、掃除後に限らずいつでも窓開け換気もできるし、壁際や窓際にベッド、ソファを自由に置いてもいいのでは…? そう考える人もいるでしょう。

ところがどっこい、部屋によっては、普通に生活しているだけであっという間にホコリが溜まってしまい、掃除してもしきれないことも。

「ホコリが溜まりやすいのは、モノであふれかえっている部屋です。

掃除するにしても、モノがなければあっという間に終わりますよね。ところがモノが多い部屋は、一つ一つのモノにホコリが付着したり、掃除の都度モノを移動したりしなければならず、手間も時間もかかります。忙しいときは細かい雑貨のホコリを取らず床だけ掃除をすることもあるでしょう。そうなると、モノについたホコリは風に乗って部屋中に広がります。

したがって、モノの数を減らすことこそ、掃除がしやすい部屋であり、ホコリが溜まりにくい部屋の絶対条件となるのです」

汚い部屋のイメージ写真
モノであふれかえっている部屋はホコリが溜まりやすい(Ph/photoAC)
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「モノの表面積を減らす」のもカギ!小物類はケースにまとめて

同時に、モノの表面積を減らす工夫も大切だと、松本さん。どういうことでしょうか?

「なるべく小物類は置かない、ケースなどに入れてひとまとめにしておく、使わないときは戸棚の中に片づける、などです。表面積が多いということは、ホコリなどが付着する面積が広いということ。例えば、化粧品のボトルが10本置かれていたら、10本分の表面積が汚れます。

ではどうするか。すべてのボトルを1個のケースに収納すれば解決します。全体の表面積は減りますし、汚れてもケースの表面をサッとひと拭きするだけで済みますから、ボトルを1本ずつ拭き取るよりははるかにラクです」

キレイな部屋の写真
ホコリなどが付着する面積を減らせばホコリも溜まらず掃除もラクに(Ph/photoAC)
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電源コードや化粧品ボトルも箱やタオルでホコリを防ぐ

他、ホコリの付着で悩まされがちなモノといえば、電化製品の電源コードでしょう。複数の電源を差し込める電源タップも、1本1本のコードにホコリがびっしり付着し、電源タップ付近に複数のコードが絡み合っていれば、電源タップとその周辺がホコリの集合体になってしまいがちです。

「解決法としては、例えばダンボールをくりぬいて、その中にコードを収納しておくのも一つ。これなら表面に見えるのは段ボールだけですし、汚れもひと拭きで取れます。

なお、化粧品のボトルであれば、上からタオルをかぶせておくのも一案です。ポイントは、いかにモノの表面積を減らすか。表面積が増えれば増えるほど、細かいモノがあればあるほど、掃除は大変になり、ホコリも集まってきます」

モノを一つ減らすだけで、ホコリも減るし、掃除もラクになります。掃除がラクになれば、頻度も上がり、部屋のホコリはより一層溜まりにくくなります。これを機に、モノを増やさないように、あるいは週末に一つでも多くの不要物を見つけて処分するようにしたいですね。

◆教えてくれたのは:松本忠男さん

プラナ代表取締役社長、ヘルスケアクリーニング代表取締役社長・松本忠男さん
プラナ代表取締役社長、ヘルスケアクリーニング代表取締役社長・松本忠男さん
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プラナ代表取締役社長、ヘルスケアクリーニング代表取締役社長。東京ディズニーランド開園時の正社員、ダスキンヘルスケア勤務を経て、亀田総合病院のグループ会社に転職。現場の清掃管理者経験を含め33年間、病院清掃に従事。トータル700人以上の清掃スタッフを育ててきた経験から、掃除のコツやノウハウを、医療、介護施設、清掃会社、家庭などに伝授している。著書に、『病院清掃35年のプロが教える 最新科学でわかった病気にならない掃除術』(幻冬舎)などがある。

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