
家族の一員である愛犬。ずっと一緒に元気に過ごすために、ワンコの食事を気にしているかたも多いのではないでしょうか? 『獣医師が考案した一汁一菜長生き犬ごはん』(世界文化社)では、食によるペットの体調・体質改善について取り組んできた獣医師の林美彩さんと古山範子さんがタッグを組み、愛犬の健康を考えた手作りレシピが満載。栄養を考えた一汁一菜はどのように考えられているのか、紹介します。
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“一汁一菜長生き犬ごはん”とはどんなもの?
愛犬家ならば、誰しもが家族の一員であるワンコに健康で長生きしてほしいと考えますよね。そこで、ワンコのごはんのプロフェッショナルが新たに提唱するのが、“一汁一菜長生き犬ごはん”。なぜ一汁一菜なのか、またどのように作って与えるべきなのか、その基礎から解説します。

なぜ一汁一菜がワンコによいのか
一汁一菜とは、おかずと汁物を合わせた、バランスのよい日本の伝統的な食事のこと。主菜と汁物を分けることで、ワンコの早食い防止による消化器への負担軽減と、水分補給や効率的な栄養の吸収ができるというメリットがあります。
手作りレシピは週に1度でもOK
手作りと聞くとなんだかハードルが高そうに感じますが、基本的にはスーパーで売っている食材を切って、焼いたり、蒸したり、煮たりするだけのお手軽なもの。しかも、ワンコにはそのまま出して、飼い主用には調味料を加えればいいので、一石二鳥のペアレシピにもなります。
家族の一員でもある愛犬のために旬の食材を選び、おいしく健康を目指すのが、この一汁一菜レシピ。毎日頑張って作らずとも、週に一度の特別な食事のレシピとして使うのもOKです。

ワンコに与える分量の計算方法は?
毎日の食事のカロリー量を計算するのは、大変なことです。そこで、愛犬の体重によって、メインとなるたんぱく質(肉または魚)の量を基準にしましょう。
食事の比率は「たんぱく質(肉・魚)約1:野菜0.8~1.2:炭水化物(いも類・穀類)0.3~0.7が基本。がん疾患がある場合は、炭水化物を減らして、たんぱく質をプラスします。
また、ワンコにとって水分摂取も大事。犬は体重の約70%(子犬だと約80%)が水分でできています。そのため、体内の水分を失うと体の働きに支障が生じてしまうんです。
ワンコの1日に必要な水分量(フードの水分も含む)の計算は、電卓を使えばOK。まず、体重(kg)を3回かけて、ルートを2回押し、その数字にさらに132mlをかけましょう。

食事の考え方の基本3か条
日本の伝統的な食事法を生かした“一汁一菜長生き犬ごはん”。続いては、守るべき3か条を知っておきましょう。
【1】旬の食材をたっぷりと
年間を通して出回っている野菜でも、旬のもののほうが栄養価が高いです。さらに夏の野菜は体の熱を落ち着かせるもの、冬の野菜は体が温まるものなど、その季節の養生につながる特性を持っています。
旬の食材を意識して体質にあわせて選ぶことが、我が子を愛することにつながります。
【2】味付けも調理もシンプルに
旬の食材は香りも味も格別。ワンコには食材の持ち味を生かして、おいしく味わってもらいましょう。調理も煮る、焼く、蒸すなど簡単な工程ですが、これらが丁寧に作られることによって、愛情がたっぷり含まれた食事になります。
【3】調理法も多彩に取り入れて
同じ食材を使っても、調理法によって嗜好性が変わります。いろいろと工夫をして、我が子が喜んで食べてくれる食事を目指しましょう。

しっかり混ぜてから一菜、一汁の順で食べてもらう
ワンコに与えるときは、1匹に対し一汁用と一菜用の器をそれぞれ用意しましょう。人肌に冷まし、しっかり混ぜてからごはんを出すのが基本。そして、一菜、一汁の順で出しましょう。一汁が先だと、胃液が薄まる可能性があるからです。
好きではない食材が入っていると残したり、遊んだりするワンコもいますが、その場合はかつお節や青のり、ごま、納豆、桜えびなど、好きな具材をトッピングしてあげてみて、それでも食べない場合は下げましょう。残すことが続く場合は、フードとの併用も検討してみるといいですよ。
春におすすめの一汁一菜レシピ
甘みのつまった春キャベツや春大根をおいしくいただきましょう。分量は、5kgのワンコの場合に2食分です。

キャベツの炒めもの(一菜)
《材料》
キャベツ…25g 卵…1個 アルガンオイル(サラダ油でも可)…小さじ1
《作り方》
【1】キャベツを一口大にちぎり、卵を溶きほぐす。
【2】フライパンにアルガンオイルをひき、溶き卵をいり、いったんボウルに移す。
【3】同じフライパンでキャベツがしんなりするまで炒めたら、【2】を加えて軽く混ぜ合わせて完成。
鶏もも肉のフォー(一汁)
《材料》
鶏もも肉(ブロック)…160g 大根…20g 大根の葉…40g 干ししいたけ…3g(中1個) フォー…20g 水…300ml
《作り方》
【1】干ししいたけを水で洗い、水300mlと一緒にボウルに入れて5~6時間ほどおいてもどす。鶏もも肉、大根は1cm角に、大根の葉ともどしたしいたけは細かくきざむ。
【2】フォーを水につけてもどし、3cmに切る。
【3】鍋に干ししいたけのもどし汁と鶏もも肉と大根を入れて火にかける。
【4】やわらかくなってきたら、大根の葉、しいたけ、フォーを入れ、火が通ったら完成。
◆教えてくれたのは:獣医師・林美彩さん
獣医保健ソーシャルワーク協会所属。学生時代に飼っていた愛犬・茜を迎えたことをきっかけに、手作り食を学ぶ。大学卒業後は、西洋医学、代替療法両方の動物病院の勤務、サプリメント会社での相談対応に従事。西洋医学と代替療法の良いところを融合させた治療、病気にならない体作り、家庭でできるケアを広めるため、2018年3月に「chicoどうぶつ診療所」を開院。https://www.chicoah.com/
◆獣医師・古山範子さん
麻布大学獣医学科卒業。中山動物病院(茅ヶ崎市)非常勤講師。ペットのためのホリスティックケアセラピスト養成講座講師。日本獣医ホメオパシー学会認定獣医師。日本ペット栄養学会会員。日本獣医動物行動研究会会員。国際薬膳師。獣医保健ソーシャルワーク協会所属。愛猫4匹と暮らし、手作り食を中心に犬猫の養生法を提案する、犬猫養生Harmonyを主宰。https://ameblo.jp/animal-harmony/