ライフ

20年以上住まいを見てきたプロが伝授!「捨てる」ではない片付け攻略3か条

壺やカセットテープなど
家の片付けをするとき、物は捨てなくてもいい?(Ph/photo AC)
写真6枚

年齢とともに生前整理を見据えて片付けを…と考えていても、いざ着手するとなるとそう簡単ではないものです。幸せ住空間セラピスト・家事効率化支援アドバイザーで、20年以上にわたり片付けに悩む家庭の現場を見てきた古堅純子さんは、物は無理に捨てなくてもいいといいます。その理由と、片付けを攻略するための3か条を伝授してもらいました。

* * *

片付け攻略3か条【1】物は捨てなくてOK

物を大事にするべきだと教えられて育ってきた人が多い、50代以降の世代。だからこそ、なかなか捨てることができずに、片付けることもままならない…と考えているかたもたくさんいるように感じます。けれど、片付け=捨てる、と考えなくていいのです。

物を無理に捨てなくていい理由

ミニマリストという言葉が流行するほど、片付けをするときには必ず物を減らさなければならないという意識があるかもしれません。けれど、生きてきた年数が長い分だけ、思い出の詰まったものが家にあふれていますよね。そういった思い入れのある物を捨ててしまうことは、気持ちがしんどくなることだってあります。それで体調が悪くなってしまうお客さまも多く見てきました。

無理に捨てると、あとで必ず後悔します。捨てなければよかったと、寂しさがこみ上げて、物との別れが生きるエネルギーを減らしてしまうのです。

捨てるのではなく、まずは物を寄せてみる

私が提唱しているのは、物を捨てることから始めるのではなく、まずは物を寄せるという方法です。物で埋もれていた場所を別の場所に寄せて“更地”にし、とりあえずスッキリとした空間にするだけで、生活や気持ちが大きく動くことがあります。

紅茶などが並んだおしゃれなスペース
片付いた部屋が人生を楽しむモチベーションに(Ph/photo AC)
写真6枚

スッキリとした空間ができると、そこで子育て中はできなかったことをしたい、独身時代の趣味をもう一度楽しみたいなど、明るい未来や目標を描くことができるんです。

物を寄せるということは、あくまでも緊急避難であり、片付けの一歩目にすぎませんが、この方法なら物を捨てることが苦手な人でも、とっかかりやすく、幸せな暮らしにつながりやすいというのが、私の長年の仕事での経験から得られた結論です。

片付け攻略3か条【2】物を寄せて、空間を作り出す

寄せる片付けをするときは、ちまちまとした物の整理収納は後回しにして、とにかく空間を確保してみましょう。

「物だまり」を寄せてスッキリさせる

物が多くて空間がない家に共通することは、ひと目で分かる「物だまり」があることです。「物だまり」の中には、たいてい核となる物が鎮座しています。例えば、リビングで動線をふさぐ大きなソファー、部屋の大部分を占める3点セットの婚礼家具、廊下にある大きな健康器具などです。それらはだいたいまったくその機能は果たされずに、物置になっていたり、使わないものばかりが収納されていることが多いです。

散らかったソファの上
片付かない家には物だまりがある(Ph/photo AC)
写真6枚

これらは稼働していなくても、なかなか手放しづらい物だからこそ「物だまり」になりがちです。もったいない、まだ使えるなどの理由で捨てられないのも分かります。そこで、「物だまり」の核を物が置かれやすい場所から離れた部屋の端に置いてみましょう。それだけで物だまりが解消されて部屋がスッキリとして、空間が広がって暮らしやすくなります。

ひと部屋つぶして物置部屋にするのもおすすめ

ほかにも、頑張って片付けてもなかなか部屋が片付かない。まだまだ物が多いけれど、捨てたくないというときの一番手っ取り早い方法は、家の中で比較的使わない部屋をひとつつぶして、物置部屋にしてしまうことです。物が多すぎて、空間を作りたいのになかなかできないと言う人は、使っていない物をどんどん物置部屋に寄せて片付いた部屋を作ってください。

ひと部屋つぶしてしまっても、ほかの部屋で快適に暮らせればよし、とすればいいのです。今の暮らしに不必要なものや、じゃまになっているものは、とにかく物置部屋に移動しましょう。ここまでハードルを下げれば、片付けにとりかかりやすくなるはずです。

収納されたスペース
物置部屋はバックヤードを意識して何がどこにあるか分かりやすく(Ph/photo AC)
写真6枚

物置部屋をつくるときのコツは、運んだものを後で整理できるよう、見えるように秩序をもって並べておくこと。物が多すぎて収拾がつかない場合は、何が入っているか書いたダンボールに入れて積み重ねる方法でもいいですよ。

在庫を並べるバックヤードをイメージするといいですね。そうすれば、日用品の買い置きなども、二重に買ってしまうことを防げます。

片付け攻略3か条【3】空間を作って新たな楽しみを生む

片付いた空間ができると、物だらけの部屋で暮らしていた人の生活にかなりのインパクトをもたらします。空間ができると、まずその場所をキレイにしたいという欲が湧いてきてお掃除をするようになります。清々しさを味わうことで、心が動き、何かをしたいという意欲が生まれるんです。最後に、空間作りの着手の仕方をお話します。

空間作りはパブリックスペースから

どこから空間を作るべきか迷ったときは、まずはリビングやダイニングといったパブリックスペースから行うことをおすすめしています。

快適なパブリックスペースを作ることで、そこに住む家族みんなが満足感や驚きを感じて、感動を共有することができます。すると、家族みんなを巻き込んだ片付けを進めやすくなりますよ。

新たなスペースがあると、できることが増える

パブリックスペースがスッキリとしたら、どんなに狭くてもいいので、自分だけの場所や自分専用の空間を作りましょう。それが安らげる空間になります。

本とスタンドライトがあるベッドサイド
自分専用のスペースを作って安らげる空間に(Ph/photo AC)
写真6枚

例えば、リビングが片付いたら、そのコーナーに座布団と小さな机を置いて書斎を作るのもいいですね。寝室が整頓されたら、ベッドの脇に自分だけの小さなサイドテーブルと照明を置き、読書を楽しむ場所にすることもできます。新たに専用のスペースが生まれることで、たくさんの楽しみが生まれ、整理収納へのモチベーションもアップするはずです。決してあきらめずいくつになっても自分だけのワクワクするスペースを作ってみてください。

◆教えてくれたのは:幸せ住空間セラピスト・古堅純子さん

古堅純子さん
幸せ住空間セラピスト、家事効率化支援アドバイザーの古堅純子さん
写真6枚

幸せ住空間セラピスト、家事効率化支援アドバイザー。整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師、企業内整理収納マネージャーの資格を所持。1998年、老舗の整理収納サービス会社に入社。20年以上現場第一主義を貫き、クライアントのもとへ通う。5000軒以上の家でサービスを重ね、古堅式メソッドを確立。オンラインを含むコンサルティングやメディア出演や講演も行う。著書は累計60万部で、最新著は『「シニアのための なぜかワクワクする片づけの新常識』(朝日新聞出版)。YouTubeチャンネル「週末ビフォーアフター」は、1000万回再生を突破。チャンネル登録者数9万1000人(2022年4月現在)。https://s-d-m.jp/talents/jyunko-furukata/

構成/イワイユウ

●生前整理は終活ではなく「前向きに生きるきっかけ」整理収納のプロが教える心構え

●人気整理収納アドバイザーが片付け下手な人に「最低限やっておこう」と提案する3つのポイント

関連キーワード