結婚後の夫婦はさまざま。多様化の時代と言われるいま、別居婚、週末婚、通い婚など、婚姻関係にもバリエーションが広がっています。『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)を上梓した岡野あつこさんに、さまざまな夫婦のあり方を聞きしました。
別居婚、週末婚、通い婚の違いとは
別居婚、週末婚、通い婚、どれも夫婦が別々の場所で暮らす点が共通しています。それぞれの違いは、会う頻度やタイミングのようです。岡野さんが解説します。
「別居婚は夫婦が別の場所に住み、好きなタイミングで行き来します。会う頻度は月に1回でも半年に1回でもよく、非常に自由度の高い関係です。壇蜜さんやmisonoさん、ダイヤモンド☆ユカイさんなど、芸能人が別居婚を選択していることでも話題になりました。
別居婚には前向きな別居と嫌い別れの別居の2パターンあります。関係が破綻している夫婦の別居は離婚に至りますが、お互いに納得して、自由に生活しながら婚姻関係を続ける夫婦も増えています」(岡野さん・以下同)
週末婚は、平日は自分の好きなように過ごし、週末だけどちらかの家で一緒に過ごすというライフスタイルです。
「結婚してもシングル時代と変わらない生活を送りたい、平日は仕事に集中したい、仕事時間が不規則で相手に迷惑をかけたくない、そんな夫婦の選択肢になるのが、週末婚です。会うのは週に1度なので、どんなオシャレをしようかな、2人でなにをして過ごそう、話したいことがたくさんある!と、結婚後も新鮮さを失わずにいられます」
転勤、親の介護などの事情も
通い婚は、夫婦が別々に暮らしながら、定期的に相手の家を訪れて過ごします。
「こちらも自分の生活を確保しながら夫婦関係を維持できます。事情はそれぞれで、どちらかが転勤族で相手に合わせて引っ越しを繰り返すのが難しい、親の介護などで実家に住まなければいけない、自分の生活拠点は残しておきたい、などがあります」
まさに夫婦の形は多様化しているといえます。岡野さんはこう言います。
「一つ屋根の下で暮らさなければ婚姻生活は破綻している、という固定観念はもう古い。大切なのは夫婦が話し合い、互いに納得して生活スタイルを選択すること。ただし、お子さんがいる場合は慎重に進める必要があるでしょう」
50代が理想とする結婚のかたちとは
50代になると子供が自立したり、勤めているのであれば役職定年で時間に余裕ができたりする時期です。その時間で、いままでできなかった趣味を始める人もいるでしょう。夫婦の関係性や距離感を見つめ直し、これからの生き方を考えるいいタイミングとも言えます。
「今の生活スタイルで満足しているのであれば、継続するのが一番です。しかし、もし誰にも縛られない自由な時間をすごしたいと考えているならば、夫と離れて暮らしてみると、新しい気付きがあるかもしれません。
ただし、別居婚も週末婚も通い婚も住まいが別になるので、家賃や光熱費が2重にかかってしまいます。そこでおすすめなのが“別居婚ごっこ”、つまり前向きな家庭内別居です。
部屋に余裕があるなら、夫婦で部屋を分けて暮らし、基本的にはお互いに干渉しない、声をかけない、などのルールを決めます。そして週末婚なら週末だけ仲良くしようねとか、通い婚なら用があるときにドアをノックしてねとか、お互いに気持ちのいい距離感を模索して暮らしてみるのです。お試しなので、期限を決めておくのもいいですね」
“別居婚ごっこ”で関係改善した例も
このような“別居婚ごっこ”を経て、関係が改善した夫婦もあったそうです。
「長年の家事に嫌気が差した妻が、離婚覚悟で夫にそう伝えると、夫が食事を作るようになって離婚の必要がなくなったという話があります。お互いに自立することで、妻がやってきたことの大きさを知り、夫は感謝の気持ちを持つようになって、妻に優しくなったというケースはよくあります。
夫婦関係もグラデーションの時代になりました。毎日顔を合わせなくても、一緒に暮らしていなくても、お互いに快適に過ごせていたら、それがその夫婦にとってベストなかたちなのです」
◆教えてくれたのは:夫婦問題研究家・パートナーシップアドバイザー・岡野あつこさん
1954年8月5日生まれ。埼玉県出身。36歳で起業し、自身の離婚経験を生かして結婚・離婚・再婚相談事業を開始。32年間のカウンセリングにおいて、3万8000件以上の相談を受ける。カウンセラーを育成する岡野あつこのライフアップスクールでは、約2200名の卒業生を輩出。テレビ・ラジオ・講演など幅広く活動し、YouTube岡野あつこチャンネルも好評。2022年9月に『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)を出版。https://rikon.biz/
取材・文/小山内麗香