女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」がスタート。第2回は、愛犬「モチ」について。
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我が家のモチは、8才のトイプードル(女の子)である。
あまりにも可愛いので、時々、モチのことを間違えて息子の名前で呼んでしまうほど(笑)。私にとっては“わが子”のような存在だ。
いつも愛情いっぱいに接しているのだが、全くと言っていいほど言うことを聞いてくれない。
「モチおいで~」と呼んでも、気分じゃないとプイッとお顔を横に向ける。そうかと思うと呼んでないのに、スリスリしてきて抱っことせがむ。そう、ツンデレなモチは犬なのにまるで猫みたいなのだ。
トイレはしっかり覚えてくれているので、それは助かるし、お座りも、お手もおかわりもしてくれる。
でも、「お手」と言って片手を出すと、モチは左右の手を連続でぱぱっと出し、お手とおかわりを瞬時にすませる。「はいはい、これでいいでしょう!」という感じだ。笑ってしまう。
数年前まではお散歩も誰か一人と行ってくれていたが、最近は二人以上いないと歩いてくれない。これは夫と私と息子の三人で一緒に散歩した後からなので、きっとそのときがモチにとって最高に楽しかったからなのだろう。
おやつの催促は首をちょいちょいと
おやつも、あげた後に私がどこにしまうのかをずっと見ている。そしてもっと欲しいときにはおやつをしまった場所を見て、私の顔を見て首をちょいちょいと振って催促してくる。そんな姿が愛らしい。
モチには決まった行動がある。夫と私がソファーに座っていると、私の足を手でちょいちょいして膝の上にのりたいとおねだりをする。次に私の膝の上で、夫の方を見て手をちょいちょいして夫の方に行きたいと言う。
そして私が腑に落ちないのが、膝の上でのモチの座り方だ。夫にはお顔を向けて座るのに、私にはお尻を向けて座る。ほぼ100パーセントの確率でそうだ。私がモチの向きを変えても一秒とたたないうちに、お尻を向ける。
「モチ、なんでお父さんにはお顔で、お母さんにはお尻なの~」と言っても、首をちょっとあげてしたり顔…そのときの夫の自慢げな顔! 「モチは可愛いね~お父さんにはお顔で、お母さんにはお尻なの~」と言いながら満面の笑みだ。なんだか私に敗北感が漂う。
そうかと思うと、お腹を上にして撫でて~とするのは私にだけだ。私が撫でているところを、夫や息子が横から撫でると、ん?という表情をしてスッとお腹を隠す。
そんなとき「モチはお母さんが撫でるのがいいんだよね~」と今度は私が満面の笑みである。
親ばかだが、こんなモチが可愛くてたまらない。何より家族みんなをすぐ笑顔にする天才だ!
文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。