
女性の睡眠時無呼吸症候群は、更年期以降の50~60歳代から発症が増えると言われています。寝ている間に症状が起こるので自覚しづらく、治療を受けられずに悪化してしまう場合もある怖い病気です。「適切な診断を受けたうえで生活習慣の見直しをすると、症状が軽快する可能性がある」と漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは言います。そこで、睡眠時無呼吸症候群の予防や改善のために心がけたい生活習慣や食事、効果が期待できる漢方薬について教えてもらいました。
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放置すると危険な睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まり、全身が酸欠状態になることで、熟睡できなかったり、合併症を引き起こしたりする病気です。

睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠中の無呼吸は自覚しづらいですが、関連して以下のような症状があらわれます。起きた時に口の中が乾燥しているのが気になるなど、当てはまる症状がないかチェックしてみましょう。
・大きないびき
・就寝中や起床時の口の乾燥、喉の痛み
・寝汗
・中途覚醒
・頻尿
・日中の眠気
・起床時の頭痛
・だるさ
・集中力の低下
・イライラ
また、呼吸が停止し酸素不足になると全身の機能障害が起こり、以下のような合併症を発症しやすくなります。
・高血圧
・虚血性心疾患
・脳血管障害
・糖尿病
・脂質異常症
睡眠時無呼吸症候群は生活の質を低下させるだけでなく、突然死の可能性も高めるため、予防と早期の治療が大切です。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群の原因は、大きく分けて2つあります。
1つは、息の通り道である気道が塞がれる閉塞性と呼ばれるものです。脂肪による気道の圧迫、筋力の低下による舌の喉への落ち込み、鼻の疾患による鼻づまりなどのほかに、生まれつきのあごや喉、扁桃腺の形や大きさが影響する場合もあります。
もう1つは中枢性とよばれる、呼吸の調整をしている脳の異常です。脳の病気や心不全の人に起こりやすいと考えられていて、原因となっている病気の治療が優先されます。
睡眠時無呼吸症候群の対処法
睡眠時無呼吸症候群は自覚症状などの問診にくわえて、寝ている間の呼吸状態や脳波などと併せて診断されます。そして、状況に合わせて、マウスピースや睡眠中の呼吸を助ける装置の着用、投薬、手術などの治療が行われます。並行して生活習慣の改善が重要です。

ダイエット
脂肪で気道が狭められている場合は、ダイエットによって体脂肪を減少させることが有効です。気道が確保されやすくなり、睡眠時の無呼吸が起こりづらくなります。ただ、食事量を減らしたり、無茶な運動をしたりして体重を減らすのではなく、しっかり食べてカロリーを使う、老廃物を速やかに排出するなど代謝を高めて過剰な体脂肪を減らすことが大切です。
睡眠の質を高める工夫をする
気道を確保するように睡眠中の体勢を工夫することで、症状が軽減できる場合があります。傾斜枕などを使って上半身を少し高めにしたり、うつぶせや横向きで寝たりすることが有効と報告されています。寝付く前に、呼吸のしやすい体勢を探ってみましょう。

飲酒習慣を見直す
アルコールは筋肉を弛緩させる働きがあり、口腔内の筋肉をゆるめて舌を喉へ落ち込ませやすくします。そのため、節酒や禁酒も睡眠時無呼吸症候群の対策に効果的です。
睡眠時無呼吸症候群の対策におすすめの食材&栄養素
睡眠時無呼吸症候群の予防や改善におすすめの食材は、ごぼうです。ごぼうは噛み応えがあるため、食べる際に自然と咀嚼(そしゃく)を増やせます。咀嚼が増えると口周りや舌の筋力が高まるので、舌が喉へ落ち込むのを防ぐことにつながります。
また、ごぼうには、体脂肪を減らす働きがあるクロロゲン酸も含まれています。

「春ごぼう」と呼ばれる春から初夏に出回るごぼうは、早採りのためみずみずしく香り高いのが特徴です。定番のきんぴらごぼうや煮物はもちろん、加熱時間が短くてもおいしく食べられるので、サッとゆでてドレッシングと和えてサラダにしてもおいしく食べられます。
ごぼうに限らず、食材を大ぶりに切って調理し、よく噛んで食べる意識を持つことも咀嚼を増やすことにつながります。また、口は味を感じると飲み込む仕組みになっているので、味付けを薄めにすると、味を感じるまで時間がかかり、自然と咀嚼回数を増やすことができるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群には漢方も使われている
睡眠時無呼吸症候群の改善には漢方もおすすめです。漢方薬は不調を治すだけでなく、体質改善により健康な体に近づくことができます。

睡眠時無呼吸症候群は、肥満や鼻炎だけでなく過剰な水分が気道に貯まる「痰飲(たんいん)」でも気道が狭くなり、発症すると考えられます。痰飲がたまる原因は水分代謝や胃腸の働きの低下、ホルモンバランスの乱れなどのため、肥満や鼻炎の改善を促したり、体の水分の循環や胃腸機能を整える働きのある生薬を含む漢方薬を選びます。
睡眠時無呼吸症候群でお悩みの人におすすめの漢方薬2つ
・大柴胡湯(だいさいことう)
脂質代謝を改善してダイエットをサポートする漢方薬です。がっしりとした体つきで、便秘気味の人に用いられます。
・葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
体にたまった余分な水分を排泄することで、鼻づまりを改善する漢方薬です。鼻づまりや慢性鼻炎の人に用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。