
「夏風邪」という言葉があるように、風邪をひいてしまうのは冬ばかりではありません。夏は各地でイベントが開催されて楽しい季節ではありますが、無計画に羽を伸ばしていると体調を崩してしまうかも…。そこで、夏風邪や免疫について、医学博士の高尾美穂さんに聞きました。
楽しくても体は疲弊し免疫を落とす
夏は大きなお祭りや花火大会など、楽しいイベントが目白押しです。家族行事でも長期休暇を使って旅行や里帰りをする人も多いでしょう。普段と違う毎日はワクワクしますが、身体的には負荷がかかっているかもしれません。

「仕事のない休日に出かけることはリフレッシュになるかもしれませんが、体にとっては普段通りの生活の方が楽であることもあります。普段とは違う場所に宿泊することで、睡眠時間が短くなったり、睡眠の質が下がることもあるでしょう。イレギュラーな行動を繰り返すことで身体的には疲れてしまう。夏は日が長いので、朝早く目が覚めやすく、ほかの季節よりも活動時間が長くなって体力を消耗することもあります。
こうして暑い季節に刺激的なイベントを楽しんでいるうちに、夏の終わりには疲れが溜まった状態になりかねません。それが10代の若者ならば一晩眠ればあっさり疲労が回復するかもしれませんが、40代50代と年齢を重ねると、そうはいきません」(高尾さん・以下同)

ストレス、生活リズムの乱れなども影響
疲れやストレスは免疫を低下させます。
「免疫機能は、疲労、ストレス、睡眠不足、生活リズムの乱れなどで低下します。ウイルスや病原体など、万病のもとを退治する免疫が落ちれば、夏風邪を含む病気にかかってしまう要因となるのです」

楽しいことと疲れが癒えることはイコールではないと肝に銘じて、風邪をこじらせてイベントをキャンセルするような残念な事態にならないよう気を付けたいところです。
休日は2種類に分ける
夏を楽しく乗り切るために、高尾さんは休日を2種類に分ける提案をします。
「アクティブに過ごす休みの日と、本当に体を休ませる休息日、種類のOFFを予定することでバランスをとります。リラックスする日は温泉に行くとか、家族でマッサージをしあうのでもいいと思います。休暇だからとギチギチに予定を組むばかりではなく、心が満たされるように、のんびりした時間をすごすのも贅沢な休日の過ごし方だと思います」
体を休めると言っても、冷房の効いた部屋でキンキンのビールを飲みながら1日中ほとんど動かずにテレビを見る…という過ごし方はNGです。
「免疫細胞の約7割は腸に集結しているので、内臓を冷やすと免疫機能が低下します。だらだらと過ごす日があってもいいとは思いますが、まったく動かないと筋肉がこり固まって体調不良を招くので、テレビを見ながらでもいいので1時間に一度はストレッチを挟みたいところです。
昼間ウトウトしてしまうと夜の睡眠の質にかかわりますし、エアコンの風を浴び続けていると喉が乾燥してウイルスが侵入しやすい状態にもなります」

休日も生活リズムを変えない
暑い外から帰ってきたら、一気に部屋を冷やして汗をひかせたいところですが、手洗いうがいという基本的な感染症予防はもちろん、湿った服から着替えたり、シャワーを浴びたりして、必要以上に体を冷やさない工夫も必要です。
「家であれば自分でエアコンの温度をコントロールできるので、外との温度差をなるべく小さくすることが、体を労わることにつながります。休日だからといって夜ふかしをして昼まで寝ている、という普段と違いすぎるサイクルをするのも、自律神経を乱す原因になります。
可能ならば普段とあまり変わらない時間に寝起きして、朝は太陽光を浴びて体内時計をリセットし、規則正しい生活を送っていただきたいです」
免疫を落とさないように毎日を過ごすことが、元気に夏のイベントを楽しむコツと言えそうです。
◆教えてくれたのは:医学博士・高尾美穂さん

愛知県出身。イーク表参道副院長。産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。ヨガ指導者としても女性の健康を支えている。著書に『更年期に効く 美女ヂカラ』(リベラル社)、『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)など多数。https://www.mihotakao.jp/
取材・文/小山内麗香