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薄井シンシアさん、娘の大学入学がきっかけの「47歳で再就職」を語る 子育て経験で仕事に役立ったのは「聞く力」

子育てで最も役に立ったのはリスニング能力

子育ての経験が一番役に立ったのは、人の話を聞く能力です。私は娘の話をいつも真剣に聞いていました。作業をしながらではなく、正面を向いて注意深く聴く。このリスニングスキルのお陰で、仕事を再開してからも相手の要望を先入観を持たずに把握できるようになりました。

薄井シンシアさん
子育てで最も役に立ったのはリスニング能力とのこと
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同僚から得た情報をつなげれば、お客さまが本音ベースで求めていることが見えることもあります。これは娘を常に観察して、じっくりと話を聴いた経験が役立っていると感じます。

「魚の寿司」は私の固定観念

例えば、バンコクの学食に勤めていたとき、「お寿司」というヒット商品を生み出したのも、その一例です。小学校高学年の子供たちから、ずっと「お寿司を食べたい」と言われていたけれど、私は刺身を扱うのは衛生的に無理だと思っていました。

でも子供たちに「どんなお寿司が好きなの?」とたずねるうちに、ほとんどの子どもは、かっぱ巻きや卵が食べたいのだと気づいたのです。ああ、そうか。子どもたちが考える寿司は、魚の寿司ではないんだ。それなら食堂でも提供できるかもしれない。「お寿司は生魚」という考えは私の固定観念だと気づきました。

薄井シンシアさん
自分の固定観念に気付いたそう
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そう考えていたとき、偶然にもNYへ向かう飛行機の中で、コンビニで販売されているような包装の巻き寿司が提供されました。私は「これだ!」と思って、寿司のビニール袋をそのままバンコクに持ち帰り、食材屋さんに渡して「このパッケージを使った巻きずしを〇〇円ぐらいで開発してよ」とお願いしました。

娘と一生懸命に宗教の勉強をした

娘が小学6年生のときはオーストリアのウィーンに住んでいました。学校の宗教の授業で、それぞれの宗教家に扮した劇をすることになり、娘は先生から「アクバル」という役をもらいました。アクバルは、どの宗教にも属さず、それぞれの宗教家に質問をする役です。

ある日、帰宅した娘が「『アクバルは担当がないから勉強しなくていい。ずるい』と言われた」と話しました。私はすぐに「それは違う。アクバルが一番難しいんだよ。みんなによい質問をするには、すべての宗教の勉強をしなくちゃいけないからね」と答えて、娘と一生懸命に宗教の勉強をしました。娘がどのぐらい宗教を理解しているのかや、授業の意図を把握していたからこそ出た言葉だと思います。劇は成功しました。

◆薄井シンシアさん

薄井シンシアさん
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1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う高校のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラに入社し、オリンピックホスピタリティー担当に就任するも五輪延期により失職。2021年5月から2022年7月までLOF Hotel Management 日本法人社長を務める。2022年11月、外資系IT企業に入社し、イベントマネジャーとして活躍中。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。@UsuiCynthia

撮影/小山志麻 構成/藤森かもめ

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