健康・医療

医師が教える「リバウンドしない」4つの条件と「やってはいけない」ダイエット法

太もものサイズを測る人
ダイエット成功のためには4つの条件を満たしていることがカギ(Ph/photoAC)
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さまざまなダイエットを試しているものの、なかなかやせない。一時的にやせたとしても、また戻ってしまう…。そんな悩みがある人に、ダイエットを成功させるには4つの条件を満たしたダイエット法を選んだほうが良いと話すのは『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット』(アスコム)の著者で順天堂大学医学部教授の小林弘幸さん。ダイエットを成功させるための条件と、やせる体づくりに必要な要素について教えてもらいました。

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さまざまなダイエット法を試してもうまくいかない理由

日々新しいダイエット法が話題になりますが、試してみても思うような結果が得られなかったり、一時的にやせてもすぐに戻ってしまったりすることはありますよね。また、さまざまなダイエット法に詳しい人ほど、体重があまり変わっていないということもよくあります。

「一時的にやせたことへの安心感や満足感から、徐々にダイエットをさぼりがちになり、リバウンド。それが『○○ダイエットで失敗した』という感情をわき上がらせ、別のダイエットに手を出す。想像するにこんなところでしょうか」(小林さん・以下同)

食べ終わった皿
ダイエットに成功した満足感や安心感がリバウンドの原因(Ph/photoAC)
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リバウンドしないダイエット法4つの条件

ダイエットにおいて大切なのは、いろいろなダイエット法を試すことでも、永遠にダイエットを続けることでもなく、リバウンドせず着実に体重を落とすこと。リバウンドしないダイエットには、次の4つの条件を満たすダイエット法を選ぶことが大切と小林さんは言います。

その1 お金、時間、手間がなるべくかからないもの
その2 あなたのライフスタイルを鑑みて週4日は忘れずにできそうなもの
その3 急激に体重を落とさないもの
その4 勝手にやせる体になるもの

この4つの条件を満たすダイエット法であれば、「ダイエットの終わり」に到達できるのだそうです。

「自分の体を健康にするための行動が『日常』になったとき、それが『ダイエットの終わり』だと私は考えます。そこにたどりついたとき、もうすでに『リバウンドという悪魔』は、あなたのそばから去っているはずです。ただし、そこまで到達するには、どうしても時間がかかります。『継続』が大切になるのです。ですから、その1、その2にあるような要素が欠かせないのです」

急激に体重を落とすダイエットはNG

短期間で大幅に体重を落としたダイエット法の話を聞くと、ついつい興味がわいてしまいますが、「この急激なダイエットこそ、『リバウンドの悪魔』の大好物」と小林さん。急激にやせるには、どうしても過剰な食事制限が必要になり、過度のカロリー制限によって人間の体はエネルギーの消費を抑えるようになってしまうからです。エネルギーの消費を抑えると、体温が下がり、代謝も低下し、どんどんやせにくい体に。また、過剰な食事制限はむしろ、食べすぎの原因にもなるそうです。

お腹を触る女性
過剰な食事制限は代謝が下がってしまうおそれも(Ph/photoAC)
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「『栄養が足りない、これは食べなくては危ないぞ』と感じた体は、主に胃からグレリンという食欲を増す作用のあるホルモンを過剰に分泌し、脳に食べるように働きかけます。そして、食欲を増すグレリンの過剰な分泌は、カロリー制限をやめたあともしばらくは続くともいわれています」

糖質制限ダイエットもリバウンドしやすい

パンやお米などの糖質を減らす糖質制限ダイエットをやる人も多いですが、激しい糖質制限もリバウンドしやすいダイエット法。

「糖質をとると、脳内に幸せホルモンといわれる、ストレスの軽減に役立つセロトニンが増えるのですが、糖質制限をすると、このセロトニンが不足してイライラしやすくなったり、不安になったりします。そして、それを解消しようと糖質を欲するようになり、甘いものを過剰に摂取する原因となってしまうのです」

やせる体づくりには体の司令塔である「自律神経」を整える

過剰な食事制限で急激に体重を落とすことなく、食べながら徐々にやせていくのがダイエットの鉄則。そして、この徐々にやせていくための体づくりに大切なことの1つが、「自律神経」を整えることです。自律神経とは、中枢神経と体のあらゆる器官をつないでいる末梢神経の1つ。内臓の働きや呼吸、血流、体温の調整など、体の機能を24時間コントロールする体の司令塔のような役割を担っています。

「暑くなったら汗をかく。これも体内の温度が上がりすぎてオーバーヒートしないように、自律神経が汗腺を刺激して汗をかかせて、体温を適切にコントロールしているから起こります。このように、自律神経が各器官に命令を与えることで、私たちは生命を維持しています」

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2種類

自律神経には、体が活発に動いているときに優位になる「交感神経」と、リラックスしているときに優位になる「副交感神経」の2種類があります。一般的には、日中の活動的な状況のときは交感神経が優位な状態になりますが、夜にかけて活動が落ち着き、副交感神経が優位になると、血管が拡張して心臓の動きはゆるやかになり、血圧が低下し、体は休息モードになっていきます。

天秤と人形
自律神経のバランスが整っていることが大事(Ph/photoAC)
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「この2つは、どちらかが優位な状態を保つことがいいということではありません。仕事や作業などで活動的に動こうとするときには、交感神経が優位に活発に働かなくては、やる気も出ないし、集中もできません。一方で、夜寝る前などの体を休めるときなどは、副交感神経が優位に働いていないと、体が十分に休めずに、不眠や慢性疲労といった症状を抱える原因となります」

自律神経が乱れると代謝が下がり太りやすい体に

よくいわれる「自律神経が乱れた状態」というのは、2つの神経が必要なときに必要な分だけ働いていない状態です。例えば、ストレスを受けた時、体はいつも通りの状態を保とうとして、交感神経が活性化されます。エネルギーを高め、ストレスという非常事態を乗り切るためです。しかし、強いストレスによって交感神経が優位な状態が長く続くと、夜になっても副交感神経がうまく働かず、体はリラックスできなくなり、不調が出てしまいます。

「不調をなんとかしようと自律神経が頑張ることで、自律神経がオーバーワークになってしまい、本来の働きがどんどんできなくなってしまうのです。例えば、胃腸の働きが抑制されて食べたものの消化が滞り、便秘になり、ぽっこりお腹になりやすくなります。そしてなにより、血流が悪くなることで代謝が下がります」

つまり、不調の悪循環が生まれ、ダイエットも失敗しやすくなってしまうのです。

やせる体づくりには腸活も必須

自律神経を整えることに加えて、やせる体づくりのために重要なもう1つの要素が、腸内環境を整えること。「腸と自律神経には密接な関係があるからです」と小林さん。

腸と脳は互いに影響を及ぼしあう関係

腸と脳とは、自律神経、内分泌系、免疫系の3つの経路を介して、互いに影響を及ぼしあう関係にあり、交感神経が優位なときは、便を排出するための運動であるぜん動運動は停滞し、副交感神経が優位なときは、ぜん動運動は活発になるといわれています。

ベッドに座りお腹を押さえている女性
腸と脳には深い関わりがある(Ph/photoAC)
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「ぜん動運動がしっかり起こっていると、便などの腸内の不要なものが次々と押し出され、腸内環境にもいい影響がでます。そのため、ストレスを受けて交感神経が優位な状況が続くと、便秘しやすくなるといわれています。また、逆に腸内環境が悪くなると、脳が不安を感じ、自律神経が乱れやすくなるといわれています」

腸活でダイエットを助ける「短鎖脂肪酸」を増やす

さらに、腸活によって腸内環境が整うと、「短鎖脂肪酸」というやせる物質の産生にも役立ちます。「短鎖脂肪酸」は、ビフィズス菌などの善玉菌と呼ばれる腸内細菌が、食物繊維やオリゴ糖などをエサとして食べることで産生する、代謝産物の1つ。「短鎖脂肪酸」にはいくつかの種類がありますが、そのうちの1つである「酢酸」には、脂肪細胞に余分なエネルギーが取り込まれるのを防いで、脂肪をたまりにくくする効果があります。

「この『短鎖脂肪酸』の恩恵をうけるには、善玉菌が元気でなくてはなりません。そのためには、善玉菌が元気に活動できる環境を整える必要があります。そして、その環境こそが腸内に便がたまっていない状況なのです。つまり、代謝を下げる自律神経の乱れから身を守るためにも、やせる物質である『短鎖脂肪酸』を体内で多く産生するためにも、腸内環境をよくする腸活は、欠かせないものなのです」

過度な食事制限で急激に体重を落とすのではなく、「自律神経」と「腸内環境」を整えて、徐々にやせていくことが、ダイエットを成功させる秘訣だといえます。

◆教えてくれた人:医師・小林弘幸

スーツを着た男性
医師の小林弘幸さん
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こばやし・ひろゆき。順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。「腸のスペシャリスト」として、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設。著書に『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット』(アスコム)、『医者が考案した「長生きみそ汁」』(同)など。

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