健康・医療

ダイエットのために「悪い朝食、いい朝食」 朝にバナナがいい理由を医師が解説

洋風の朝食
ダイエットするなら朝食は食べたほうがいい。ではその内容は?(Ph/photoAC)
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生活が忙しく、朝食をとらないという人も多いですが、朝食をとることでダイエットが成功に近づくことを知っていますか? さらに、朝食の内容次第でダイエットの効果は一段とアップするそうです。そう教えてくれた『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット』(アスコム)の著者で順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんに、朝食をとることによるメリットと「やせる朝食」について教えてもらいました。

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やせる体づくりには朝食をとることが必要

やせる体づくりには、「自律神経」と「腸内環境」を整えることが大切です。自律神経が整うと、胃腸の働きが促進されて、お腹がすっきりしたり、代謝が上がってやせやすくなったりするからです。そして、腸と脳は密接に関わっているため、腸内環境が整うと、自律神経が整いやすくなります。

そのために必要なことは、きちんと朝食をとること。朝は自律神経が副交感神経から交感神経へと切り替わるタイミングであり、朝食をとることで、その切り替えがスムーズになるからだそうです。

「朝食をとることで、自律神経がおやすみモードから活動モードへとスイッチが切り替わり、体のリズムが整います。さらに食べ物が胃に入ることで腸のぜん動運動も活発になり、自然な排便が促されるのです」(小林さん・以下同)

朝は体内時計も調整するチャンス

また、朝は体内時計を調整するチャンスでもあります。朝に目が覚めて夜に眠くなるのは「体内時計」が働いているからです。しかし、「体内時計」がきちんと働いていないと、自律神経に乱れが生じ、腸の働きも停滞してしまいます。

時計が置いてあるベッド
体内時計を整えるのに有効な2つのこと(Ph/photoAC)
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「体内時計は、ぴったり24時間ではなく、少しずれているので、朝に調整する必要があります。この体内時計の調整をしてくれるのが、朝日を浴びることと朝食です。自律神経が乱れてやせにくい体にならないためには、朝食は非常に大切だといえるでしょう。また、体内時計を調整するという観点からいうと、毎日同じ時間に朝食をとることを心がけるとよいでしょう」

ダイエットでは血糖値の急上昇に要注意

ダイエットのためには、毎日同じ時間に朝食をとることを心がけることはもちろん、何を食べるかも重要です。

朝食ではパンや白米が定番ですが、これらに含まれる糖質は体内で消化されてブドウ糖に代わり、血糖値を上げます。すると今度は、血糖値を下げるために膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。

インスリンには血中の糖分を脂肪に変えて体にため込む働きがあり、糖質で血糖値が急上昇すると、血糖値を下げるためにより多くのインスリンが分泌されるため脂肪がつきやすくなるそうです。

血糖値を測る機械
インスリンの分泌が多くなると脂肪を溜め込みやすくなる(Ph/photoAC)
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「本来ならエネルギーとして消費できたはずの糖分まで、余計に脂肪に変えて体にため込んでしまうのです。さらにいえば、インスリンが大量に出て糖を処理したことにより、急上昇した血糖値は急降下します。血糖値が急降下すると、今度は、脳が糖質を欲し、食欲が増進して空腹を感じやすくなり、過食を招くということです。つまり、食後の血糖値の急上昇を防ぎ、血糖値をゆるやかに上げていくことがダイエットには大切なのです」

朝食におけるキーワード「セカンドミール効果」

朝食においては「セカンドミール効果」という概念も知っておくべきと小林さんはいいます。「セカンドミール効果」とはどういうものなのでしょうか。

「トロント大学のジェンキンス博士が発表した、『最初にとった食事(ファーストミール)が、次の食事(セカンドミール)のあとの血糖値にも影響を及ぼす』というものです。ファーストミールで血糖値の急上昇を招かなければ、セカンドミール後の血糖値上昇が抑えられる。つまり、朝の食事内容によって、1日の血糖値を安定させることができるということです」

ファーストミールとして最適なのは、糖質の上がり方がゆるやかなGI値の低い食品です。GI値とはGlycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、その食品を食べた直後にどれだけ血糖値が上がるのかを、ブドウ糖を基準(=100)として相対的な数値で表したものです。

ライ麦パンと白パン
朝食の内容はGI値を意識して。白い食パンより茶色のライ麦パンや全粒粉のパンのほうが低GI(Ph/photoAC)
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「朝食の定番であるパンや白米などはGI値が高いといわれています。基本的に精製されていない色のついた炭水化物は、糖の消化吸収をゆるやかにしてくれる食物繊維を多く含むため、血糖値の急上昇が抑えられるといわれています。お米なら白米よりも茶色の玄米、白い食パンより茶色のライ麦パンや全粒粉のパンのほうがGI値は低くなります。

大豆製品や野菜類(ただし、じゃがいもはGI値が高め)もGI値が低いといわれているものです。また、基本的に砂糖を使っているものは、GI値が高くなると考えられるので、甘い菓子パンなどで朝食を済ませるのは、避けたほうがよいでしょう」

皿に盛られた白米
白米もGI値が高いとされる(Ph/イメージマート)
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「やせる朝食」の3つの条件

小林さんは、ダイエットの観点から次の3つの条件を満たした朝食をすすめています。

・GI値がなるべく低いもの
・できるだけ簡単に用意できるもの
・腸内環境が改善される成分が入っているもの

そして、これらを満たす「やせる朝食」として、小林さんがすすめているのが「バナナ」です。

「まず、甘いので糖質が多く、血糖値が急激に上がりそうなイメージがありますが、バナナはGI値が低い食品です。そして、2つ目の条件、できるだけ簡単に用意できるものという条件に、一番マッチするのが、バナナではないでしょうか」

バナナの食物繊維が腸内環境の改善に役立つ

バナナであればカットや加熱などの調理が不要で、皮をむけばすぐに食べられます。持ち運びもしやすいうえ、出先でもコンビニなどで手に入れることができるため、忙しい人でも続けやすそうですね。

3点目の「腸内環境が改善される成分が入っているもの」についても、バナナは食物繊維が含まれている点がおすすめなのだそう。食物繊維は、腸内環境を整える際に重要な善玉菌を元気にさせることができるからです。

皿にのったバナナ
手軽で食物繊維を含んでいるバナナが朝食におすすめ(Ph/photoAC)
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「食物繊維は一般的に、水に溶けるかどうかで、2種類に分けられます。善玉菌が居心地のいい環境にするのが、水に溶けない『不溶性食物繊維』です。善玉菌の居心地がいいのが、腸に便がたまっていない環境です。不溶性食物繊維は、水分や老廃物などを吸着して、便のかさを増やして排出しやすくしたり、腸を刺激して、ぜん動運動を活発化し、排便を促したりといった性質をもっており『腸のおそうじ繊維』といえる存在です」

2種類の食物繊維を含んだバナナで善玉菌を元気に

そして、善玉菌を元気にするためのエサとなるのが、もう1つの水に溶ける「水溶性食物繊維」。昆布やわかめといった海藻類、こんにゃく、里いもなど、ヌルヌル、ネバネバしたものや、ごぼうなどに多く含まれており、この「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類をバランスよくとることが腸内環境を整えるためには大切です。

3本のバナナ
2種類の食物繊維が含まれる(Ph/イメージマート)
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「バナナには不溶性と水溶性、両方の食物繊維が含まれていますし、なにより、その両方の食物繊維の腸活効果を併せ持つ、レジスタントスターチという成分が豊富です」

「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」、そしてレジスタントスターチが含まれたバナナを毎朝とることで、善玉菌が元気になって腸内環境が改善し、腸内環境の改善で自律神経が整うことで、やせる体に近づいていくことが期待できます。

◆教えてくれた人:医師・小林弘幸

スーツを着た男性
医師の小林弘幸さん
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こばやし・ひろゆき。順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。「腸のスペシャリスト」として、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設。著書に『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット』(アスコム)、『医者が考案した「長生きみそ汁」』(同)など。

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