節約や将来のライフプランを考える上でやっておきたいのが保険の見直し。では、子どものためにお金を残す「生命保険」と万が一のときに役立つ「火災保険」ではどちらがより必要なのでしょうか。『一生お金に困らない!新・お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)の著者で元メガバンク支店長でもあるお金の専門家・菅井敏之さんが教えてくれました。
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子が成人したら「生命保険」から「火災保険」へ
病気やけがで健康保険適用外の出費がかさんだり、働けなくなったりするリスクを考えると、「収入や貯金に不安がある人は、万一の備えとして医療保険に入るメリットがあるでしょう」と菅井さん。
一方で、親に万一のことがあっても子どもに多額のお金を渡す必要がなくなるタイミング、つまり子どもが社会人として自立した時点で生命保険は見直すべきだといいます。そして、目を向けるべきは「火災保険なのだそうです」
「50歳を境に、『生命保険』から『火災保険』と考えて、未加入ならば加入するべきです」
日本の災害リスク
世界の陸地面積の0.28%なのにもかかわらず、世界の活火山の7%以上がある日本。世界でおこるマグニチュード6以上の地震の2割は日本で起こっているそうです。
さらに、異常気象によって台風や豪雨、突風や河川の氾濫、土砂災害などの甚大な被害を受けている地域のニュースを目にすることも増えたのではないでしょうか。
「ご自身のライフプランや資金計画のなかで、自宅や車が浸水する、屋根が飛ばされるといった事態を想定していた方は、何人いらっしゃったでしょうか。これらを自分で負担するとなると、かなりの金額になります」
選ぶポイントは補償内容
火災保険といっても、補償の対象となるのは出火による損害に限りません。落雷やガス漏れによる破裂や爆発、風災、水濡れ(漏水)、水災、盗難、外部からの飛来物被害なども対象になります。ただし、オプションになっている場合もあるので、注意が必要です。
「『水災』は多くの場合、『火災保険』の『オプション』になっています。2019年の台風19号では、オプションをつけなかったため、多くの人が補償を受けられなかったと聞きました」
さらに、地震による火災は「火災保険」の対象外のため、地震による火災をカバーするには「地震保険」に入る必要があります。「地震保険」は単体では加入できず、「火災保険」と一緒に加入する必要があります。
「対象が【1】建物だけ、【2】家財だけ、【3】建物と家財と3つにわかれており、持ち家の人とマンションを所有する人では、話が違います。マンションの人にとっては壁も窓ガラスも自分の持ち物ではなく、その被害は管理組合がかける保険から補償することになっていたりするわけですね」
家を買ったり、借りたりした際に、ハウスメーカーや仲介業者、金融機関などからすすめられるままに火災保険に加入したという場合は、補償内容の見直しをしてみましょう。
また、予期せぬ災害ややっかいな事故などにあった場合、保険の対象かどうか判断が難しく保険料の支払いが難航することもあります。菅井さんは、火災保険にも詳しいプロの代理店と契約することも考えた方がいいと話します。
「火災保険は、年3~5万円くらいという『保険料』ではなく、どこまで補償してくれるかという『補償内容』で選ぶべきです」
おすすめの火災保険の特約
加えて、火災保険の特約に「個人賠償責任保険」もしくは「日常生活賠償責任保険」がある場合、菅井さんは加入することをすすめます。
これは「洗濯機のホースが外れ、マンションの下の部屋が水浸しになった」「植木鉢が突風で飛び、隣家の窓ガラスが割れた」「自転車で歩行者と衝突し、けがをさせてしまった」など、家族に責任があるケースも補償の対象となるそうです。
意外にも火災だけでなく、補償の対象が広い火災保険。これまで火災保険を重視していなかった人は、この機会に補償内容の確認や特約の検討をしてみてはいかがでしょうか。
◆教えてくれた人:菅井敏之さん
すがい・としゆき。1960年、山形県生まれ。学習院大学卒業後、1983年に三井銀行(現・三井住友銀行)へ入行。個人・法人取引、およびプロジェクトファイナンス事業に従事し、2003年に金沢八景支店長(横浜)、2005年に中野支店長(東京)に就任する。48歳で銀行を退職したのちアパート経営をスタートし、現在は10棟80室のオーナー。銀行を舞台にしたテレビドラマの銀行監修を務めるほか、報道・情報番組などのメディアにもお金の専門家として出演している。著書『お金が貯まるのは、どっち!?』シリーズ(アスコム)はシリーズ52万部を突破。https://toshiyukisugai.jp/