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66歳オバ記者、境界悪性腫瘍の診断から1年 足腰は重く、階段上りは限界 それでも仕事で感じたやりがい 

オバ記者
大病してから約1年。体力がなくなったと感じることが多くなったオバ記者
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ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(66歳)は昨年10月、「卵巣がんの疑い」で手術を経験。その後、境界悪性腫瘍と診断された。それから約1年、「体力の衰え」を感じる出来事があったという。

* * *

「足腰」は元に戻らない

1か月ぶりのアルバイトで茨城県の小学生の国会案内をしたの。衆議院議員事務所でのアルバイトもなんだかんだで足掛け6年。途中3年間はコロナ禍で、小学生を乗せた観光バスがピタリと来なくなったけれど、最近では国会議事堂裏の道路は全く何事もなかったよう。以前と同じように観光バスが数珠つなぎだ。

が、元には戻らないものもあるの。それは私の足腰よ。以前は地下の集合広間から3階の本会議場まで、小学生の先頭に立って階段を上ったのよ。これを一日、2セットのこともあって、このときはさすがにバテたけど、とにかくやることはやった。それが今は「国会見学をお願いします」と言われると言葉には出さないけれど、「え~っ、やるの~」と引いちゃうんだよね。

オバ記者
あまり知られていないけど国会議事堂には緑がたくさんある
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この日もそう。この日の案内は小学生35名、大人4名と聞いてから、議員会館の窓の外を見たら結構な数の観光バスが並んでいる。こうなるとどうなるか読めるんだよね。大勢が一度に押しかけると、私の出番はなくなるんだよね。私は衆議院議員が子供たちに挨拶をする前に、短く口上を述べるだけ。あとはトイレに行くタイミングを作るくらいで、何もすることはないの。要所要所でのアナウンスは、衛視さんが年季の入った案内をしてくれる。まぁ、楽と言えば楽なわけ。コロナ明けからは、心臓破りの階段上りは勘弁してもらって、すっとエレベーターに乗っちゃうし。

オバ記者
前は階段なんて余裕だったのに今はもうムリ
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案内係魂にスイッチが入った

ところが3階の本会議場まで行ったら不思議なことが起きたのよ。今日くらいの大人数だと混雑するから本会議場はところてん式にただ通過するだけなのに、どうしたことか前にも後にも人がいない。パカーンと前後が空いちゃった。傍聴席に座って案内テープを聴いて、それでもまだ後ろから追い立てられない。

こうなるとたちまち私の案内係魂にスイッチが入っちゃう。彼ら小学生の卒業アルバムに貢献したい一心で、子供たちを議場を背景に立たせて「この角度から写真撮ってくださーい」と引率の先生にお願いする。「わぁ、いいんですか。こんなところで写真撮れたの、初めてです」と先生は大興奮よ。で、仕上げは議事堂背景の集合写真。この時、子供の最もいい表情を引き出したくて、「いちたすいちは~」と声を張り上げちゃう。

オバ記者
ついつい出ちゃうサービス精神(写真は国会議事堂。春は桜が満開に!)
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「辞めよう」という思いが吹き飛んだ

そのかいあって? ひとりの女児から「お姉さんは子供さん、いるんですか?」と意外な質問が飛んできたの。「いないけど、なんで?」と聞いたら「もし子供がいないんだったら、あと6年たったら私、結婚できるから結婚して」だって。顔を見ると半分本気、半分“あなたは何者?”というか興味津々という感じ。

オバ記者
小学生からの急なプロポーズは驚いた
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女同士の結婚というのも、こだわりがないのが今時の子? それにしても意外な申し出にちょっと怯んだけれど、とっさに「いいよう。でもおばちゃん、独身だから結婚じゃなくて養子にしてあげるよ」というと、ちょっと考えて「うん、それでもいいよ」と返ってきたの。「そうしたら親孝行してもらうからねえ。私、けっこう毒親かもよ(笑)」「えっ? 毒親かぁ。それもどうかなぁ」。「そういうあなただって今言ったことなんかすっかり忘れて、私を捨てるくせに」と言うと、「かも(笑)」「ひどーい」。このやり取りを女児の友達たちはニヤニヤしながら聞いているって、なんかとてもいい時間。

ああ~、もう体力きついし、国会案内のバイトもそろそろ辞めようかなという思いが、一瞬で吹き飛んだわよ。

一念発起してジム通いを始めたけれど…

きっとよほど嬉しかったんだね。彼女たちを見送ったら急に足が軽くなって、私が勝手に「国会議事堂七不思議」と名付けている伊藤博文像を久しぶりに見に行っちゃった。広い敷地内に私がしる限り銅像はこの一体だけで、それが人目をはばかるように木々に隠れている。てか、この銅像を見学に来た人を今まで見たことがないし、ネットにもほとんど記述がないんだわ。

伊藤博文像
「国会議事堂七不思議」のひとつ?伊藤博文像
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伊藤博文はともかく、皇居の周辺って歩くと、「あんた、誰?」って名前を聞いたことがない銅像があちこちに建っているんだよね。私が気になっているだけで4体あって、急ぎ足で紹介文を読んでもチンプンカンプン。それをまた見て歩きたいんだけど、自分の足に自信がないの。コロナで失われた3年間のうちに、親の介護と自分の入院、手術(境界悪性腫瘍)で、ほとんど運動らしい運動はしていなかったから、すぐ疲れちゃう。道の真ん中で立ち止まって腰を伸ばすって、これ、おばあさんがすることじゃね?

それをこの秋はどうにかしたいと一念発起して、スポーツジムに通い出し、先日はトレーニングジムに顔を出して、初心者用のプログラムを作ってもらった矢先に、先日の寒さよ。真夏日の次の日が11月初旬の気温って、あんまりじゃない? 街に出たらダウン着ていた人がいたけど、こちらは綿シャツに薄いカーディガン。これが祟って大風邪で2日ダウン。

オバ記者
一枚であったかくなる服を買いに行こっと
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66歳。これからは体力差、努力差のほかに、用心深さ差がものをいうのかも。おばちゃんの荷物は大きいと言われようとなんだろうと、一枚であったかくなる服を持ち歩かないとダメだね。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

【369】「境界悪性腫瘍」手術から1年 開腹術後は「借り物」だった体はどう変化したのか?

【368】お彼岸に思い出した母親介護の日々「なぜ母ちゃんは急にサラダが好きになったのか?」

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