
この夏、連日の猛暑でエアコンや扇風機をフル稼働させた人も多いでしょう。暑さがひと段落した今でも、室内の風通しのために扇風機やサーキュレーターを使い続けている人もいるかもしれません。そこで気になるのが、扇風機やサーキュレーターの“寿命”。家電ライターの田中真紀子さんに、寿命の見極め方を教えてもらいました。
ただちに使用をやめるべき、“異常”状態とは?
まず、扇風機やサーキュレーター、エアコンを、長期間あるいは高頻度で使っている人は、どんな“症状”が出たら危険信号とみなすべきでしょうか? 田中さんが解説します。

「NITE(ナイト:独立行政法人製品評価技術基盤機構)によると、2008年から2012年度までの5年間に通知された製品事故情報のうち、エアコンおよび扇風機による事故は合計657件。これらのほとんどが発熱、発煙、発火を伴っており、122件が火災事故につながっています。そして、事故の大きな原因になっているのが、長年使い続けたことによる経年劣化です」(田中さん・以下同)
そこで内閣府では、下記のような異常があったらただちに使用をやめるよう注意喚起しています。
【扇風機】
1.スイッチを入れても、ファン(羽根)が回らない
2.ファンが回っても、回転が異常に遅かったり不規則だったりする
3.ファンが回転するときに異常な音や振動がする
4.モーター部分が異常に熱かったり、焦げくさいにおいがしたりする
5.ファンにヒビがはいっている。ファンガードが変形している
6.電源コードが折れ曲がっていたり破損したりしている
7.使用時に電源コードに触れると、ファンが回ったり回らなかったりと不安定である
【エアコン】
1. 電源コードやプラグが異常に熱い
2. 電源プラグが変色している
3. 焦げくさいにおいがする
4. ブレーカーが頻繁に落ちる
5. 異音がする
6. 室内機から水漏れがする
7. 架台や吊り下げ等の取付部品が腐食していたり、取付がゆるんでいる
8. 電源コードに傷や破れがある
寿命の目安となるのが「設計上の標準使用期間」
そしてもう一つのチェックポイントとして、田中さんは「設計上の標準使用期間」を挙げます。これこそ、家電の寿命の目安になる表記だそう。
「設計上の標準使用期間」はどこを見ればわかる?
「家電の中でも、経年劣化に注意すべき家電は『長期使用製品安全表示制度』の対象となっており、『設計上の標準使用期間』と『経年劣化についての注意喚起』等を本体に表示することが義務づけられています。
対象となっているのは、『扇風機』『電気冷房機(エアコン)』『電気洗濯機(洗濯乾燥機は除く)』『換気扇』『ブラウン管テレビ』の5製品。我が家で使っている扇風機にも、『設計上の標準使用期間10年』ほか注意喚起のラベルが貼られていました。
ですから言ってみれば、この年数が、寿命の目安といってもいいかもしれません。もちろん使用頻度によっては、もっと早く寿命が訪れる場合もありますし、期間経過前に故障が起きないというわけではありませんので、期間前でも上記の異常を確認する必要があります。
なおサーキュレーターは、制度ができた2009年当初は、扇風機に分類されていたため表示義務がありました。今はサーキュレーターとして独立したため、正確にいうと表示義務はありません。ただし実際にチェックしてみると、多くのメーカーで引き続き表示しているようです」
「設計上の標準使用期間」とは
そもそも、設計上の標準使用期間とはどういう意味で、通常どれくらいの期間なのでしょうか。
「設計上の標準使用期間とは、電気用品安全法に基づき、『標準使用条件の下で使用した場合に経年劣化により安全上支障なく使用することができるとして設計上設定されたもの』です。扇風機やサーキュレーターは5年から10年、エアコンは10年と定めているものが多いですね」
なお、「標準使用条件」は製品ごとにJISによって定められており、扇風機の場合は次の通り。
【扇風機の標準使用条件】
・運転時間:1日に8時間使用する(延べ時間)
・運転回数:1日5回使用する
・運転日数:1年間に110日使用する
・スイッチ操作回数:1年間に550回スイッチを操作する
・首振り運転の割合:すべて首振り運転を行う
「つまり設計上の標準使用期間が“10年”であっても、使用条件以上に使用した場合、例えば毎日24時間使い続けた場合は、標準使用期間はもっと短くなると考えたほうがいいでしょう。サーキュレーターの場合も同様です」
設計上の標準使用期間は長いものを選ぶべき?
果たして、設計上の標準使用期間は、長い方がいいのか、短い方がいいのか、それともそこは気にせず自分の目的に合う機能を選んだ方がいいのか…。田中さんの考えは?
「個人的な考えですが、標準使用期間が長いものは、それだけ不具合が起こる可能性が少ない設計をしていると考えられます。サーキュレーターの場合は、首振りしないタイプのほうが配線が劣化しにくいですし、負荷がかかりにくい構造を採用している場合もあります。実際は、標準使用期間を過ぎても壊れなければ使用し続ける可能性もあると思いますので、やはり長い方が安心といえるでしょう。
ちなみに、設計上の標準使用期間とは別に、修理の際の部品を保存しておくべき期間(補修用性能部品の保有期間)も定められており、エアコンは9年、扇風機は8年となっています。そのため標準使用期間内に万一故障してしまい、部品の保有期間を過ぎてしまっていると、修理できなくなりますので、あわせてチェックしておくと安心です」
前述のとおり、扇風機やサーキュレーターは、設計上の標準使用期間を5年から10年と定めているものがほとんど。そんな中、期間を「10年」と定めている製品として、次の2点を紹介してくれました。
【1】バルミューダ『The GreenFan』

まずは、標準使用期間を10年と定めている扇風機から。
「二重構造の羽根を搭載し、種類の異なる風速の風を押し出すことで、自然界の風のようにゆっくり大きく広がる風を生み出します。肌当たりのやわらかい風は15m先まで届き、広いリビングでも快適に過ごせます。首振り角度を任意で設定できる機能や、別売のバッテリー&ドックを使えばコードレスとして持ち運ぶことができ、使いやすい機能も充実。DCモーターならではの高い静音性で就寝時にも最適です」
【2】シャープ『プラズマクラスター扇風機 3Dサーキュレーションファン PJ-R2DS』


こちらも、標準使用期間が10年の扇風機です。
「コンパクトな扇風機であると同時に、上下に約100度、左右に約90度の立体的な首振りで部屋の空気をかき回すサーキュレーターとして使えます。細く長い羽根形状が直進性の高い風を生むアホウドリの翼形状を応用した羽根から生まれる風は、遠くの天井の隅まで届きます。搭載されているプラズマクラスターは、浮遊カビ菌を除菌したり、静電気を抑えたりする働きもあるため、乾燥する季節にもおすすめ」
サーキュレーターや扇風機を通年使い続けている人は、要チェックです!
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん

白物家電や美容家電を中心に家電に詳しいライター。雑誌やウェブなど多数のメディアで、新製品などをレビューしている。https://makiko-beautifullife.com
取材・文/桜田容子
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