女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第59回は、寧々さんの「地方ロケ」について。
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今月は、仕事で沖縄、神戸、広島と移動続きだ。地方ロケは、普段の生活とは違い、その土地の空気感を感じたりその土地ならではの美味しいものを頂けるので楽しい。
以前先輩の役者さんに、地方に来たら銭湯に行くのが良いのよと教えてもらった。地元の方の言葉も耳に馴染んでくるし、おすすめの場所なども教えてもらって楽しいと伺った。なるほどなあ~と思った。銭湯は、探して行くのがなかなか難しい時もあるのだが、私はまず近くのスーパーマーケットに行く事にしている。そこでぶらぶらしていると、家族連れが会話している何気ない日常の雰囲気とかが自然に伝わって来て、心があったかくなる。
地域の言葉が耳に入ってきて、なるほど~こういう風に話しているんだなと勉強になる。後は、時間に余裕があればとにかく散歩している。公園や路地などを歩いているとその土地の雰囲気が、その時演じている役にそっと近づいてきてくれている感じがして心強い。もし、この土地に生まれていたら、どんな風に過ごしていたのかな~とか想像するのも楽しい。
ただ、年齢もあるのか以前よりも移動は疲れるようになった。荷造りも慌ただしい。東京に帰って来て、急いで洗濯などをしつつ他の家事もあると、心に余裕がなくなってくる。
家に帰れば掃除が大変
セリフも覚えなければいけないし、考えなくてもいけない。移動中に読んで考えて覚えようと思うのだが、最近は気がつくと台本を持ったままだいたい眠ってしまっている。飛行機はまだ到着すれば着地の時の振動でだいたい目が覚めるが、新幹線はいつも乗り過ごしたかとドキッとする。窓から景色を見ても今ひとつわからず、慌ててスマホのグーグルマップで自分の位置を確認する羽目になる。まあ。今のところ乗り過ごした事はないですが。
家に帰れば掃除が大変だ。
特に水回りの掃除は必須だ。
夫と息子は、水回り掃除が苦手なのか、やらない…。
毎回家を空けて帰って来る度に、もし私がいなかったらどうなってしまうんだろう~と不安になる。
しかし夫と息子は気にしている様子もない! 時々腹がたつが、結局あまり言わずにやってしまう私もいけないんだろう。心の中で「どうどうどう~私!」と呟いている。いや、叫んでいる! しかし彼らは涼しい顔で何事もなかったように穏やかに過ごしている。電球を交換してくれたり、パソコンの事をやってくれて助かっている事もあるし、感謝 感謝です。
それでも様々な土地に行ける地方ロケは、やっぱり楽しい!
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。