雑談上手になるためには、雑談への苦手意識をなくしたり、雑談のテクニックを習得したりすることも大切ですが、それ以上に重要なのが「感じのよさ」があること。そう話す、コミュニケーションコンサルタントのひきたよしあきさんに、感じのよさを出すために必要なことや、気持ちのよい雑談をするために気を付けたいことを教えてもらいました。
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雑談の3段階ピラミッドとは
雑談上手になるために、「雑談が苦手というメンタルを克服すること」や「雑談の技術を磨くこと」といったことが挙げられますが、その前にまず知っておくべきことがあるそうです。それは、雑談上手になるために大切なことを示した「雑談の3段階ピラミッド」。ピラミッドの土台となるのは「感じのよさ」であり、その上に「メンタル」、最上位に「技術」が位置します。
「雑談において土台となるのが『感じのよさ』です。感じのよさを身につけるだけで雑談の苦手を大きく減らすことができます」(ひきたさん・以下同)
感じのよい人になる最初のステップは「清潔感」
感じのよい人になるためには何をすればいいのでしょうか。「まずは鏡の前の自分を見つめてください。顔だけでなく、姿勢や服装もしっかりと見てください」とひきたさん。身だしなみが整っているかや、猫背になっていないかなど、鏡できちんと自分の姿を確認し、清潔感がある見た目かどうかをチェックするのが重要と言います。
「話す内容や、声の大きさ、話すスピードなどを気にする前に、まずは、『見た目』から『イイね!』と思ってもらえるように、整えることが大事なのです」
感じのよさを出せる「笑顔」
さらに「感じのよさ」を出すためにできる最も簡単な方法は、「笑顔」。アイドルや接客業の人が笑顔でいようとするのは、人を相手にするとき、笑顔が最大の武器になると知っているからです。笑顔でいれば、それを見た相手は安心して心を開いてくれますし、冷たそうな表情をしていれば、相手は身構えてしまいます。
「笑顔は、相手から好感を勝ち取り、警戒心を解くための、手軽で効果のある武器なのです」
口角を上げて笑顔の練習を
そうは言っても、笑顔を作るのは苦手、という人もいると思います。そんな人にひきたさんがおすすめするのは、鏡を見るついでに、口角を上げて笑う練習をすること。
「笑顔をつくるときのポイントは、感情とは別に、口角を鍛えて頬を上げること。感情ではなく、筋肉を動かすかどうかの問題です。笑顔が苦手な人は、口角を上げることからはじめましょう」
相手を話しにくくさせる「決めつけ」
笑顔で感じのよさをつくっても、とある無意識にやりがちなことが気持ちのよい雑談を阻害している可能性があります。例えば、関西人に対して、「関西人はおもしろい」、「関西人は話にオチを求める」といったイメージを持っていませんか? 相手がそのイメージ通りとはかぎらないにもかかわらず、相手にそのイメージを押し付けてしまい、話しにくくさせてしまうことがあるのだそうです。
「その無意識の決めつけによる発言が、知らず知らずのうちに、相手にストレスを与えたり、傷つけたり、怒らせたりしているかもしれません」
誤解を生む4つの決めつけ
こうした無意識の決めつけを「アンコンシャス・バイアス」と言います。ひきたさんによれば、その中でも次の4つは特にやってしまいやすいそうです。
【1】固定観念や思い込みで決めてかかる(ステレオタイプ)
【2】よかれと思って言ってしまう(慈悲的差別)
【3】自分の正当性を証明しようとする(確証バイアス)
【4】成功例の押しつけ(成功者の経験)
「このアンコンシャス・バイアスの怖いところは、『無意識に(アンコンシャス)』やっていることです。言っている本人は、まったく気づいておらず悪気がないのです。だから、なかなか自分では気づくのが難しいんです」
決めつけバイアスの逃れ方
アンコンシャス・バイアスをなくすにはどうしたらいいのでしょうか。「『私の発言にも、必ずアンコンシャス・バイアスが含まれている』と意識することです」とひきたさん。先ほどの4つの例の逆、つまり、自分が間違いや勘違いをしている可能性はないか、本当に相手のための発言になっているか、自分の主張が公平な意見か、例として取り上げたことが、言いたい事柄を証明してくれるかといったことを意識したりするといいそうです。
「ポイントは『自分の中の決めつけ、思い込みがないか疑うこと』。雑談の際も、『あれ? これはもしかすると、私の偏見かも』と思うクセをつけてください。いつも、そういう視点でものを見て、発言できる人は、相手からも話しやすい人になるはずです」