暮らしのプロが実際に使ってみて「これ買ってよかった!」と実感した便利グッズと、暮らしに役立つテクニックを教えてもらうこの企画。今回は、管理栄養士で防災食アドバイザーとして活躍する今泉マユ子さんが、防災食に便利な「野菜ジュース缶」について教えてくれました。
長期保存可能な“野菜の保存食”で災害時の野菜不足を解消
今泉さんが防災食としておすすめするのが、「野菜ジュース缶」。コンビニなどで売られている紙パックの野菜ジュースとは異なり、長期保存可能な缶タイプは防災食にうってつけなのだそうです。
「私は東日本大震災をきっかけに災害食の研究をはじめ、全国各地の自治体を視察。備蓄食品の内容や賞味期限が切れた備蓄食はどうするのかなどを聞き、実際に備蓄倉庫も見させてもらいました。自治体の備蓄はエネルギー源になる主食(アルファ化米や保存できるパン)が多く、たんぱく質源になる魚系の缶詰は少しありましたが、野菜の備蓄はほとんどありませんでした。
防災でいちばん大切なのは命を守ることですが、東日本大震災や熊本地震では災害関連死も多く、せっかく命が助かっても、長引く避難生活で栄養・衛生環境の悪化により体調を崩してしまうケースも多くありました。健康を維持するためには栄養バランスを整えることが重要です。
避難生活を送った人は野菜不足から便秘になる人が多く、口内炎もできて体調不良になる人がとても多かったそうです。健康を守るために体の調子を整えてくれる野菜はとても大切です。災害時は電気・ガス・水道などのライフラインが停止している可能性があるため、生野菜があっても調理ができない場合もあります。水や熱源が不要で封を開ければすぐに摂取できる野菜ジュースや野菜スープを備えておくことをおすすめします」(今泉さん・以下同)
災害時の健康維持に役立つ野菜ジュース
防災食、非常食というと、エネルギー源になる主食系が多いイメージですが、災害時とはいえ、栄養が偏ってしまって体調を崩してしまう可能性も。そういったケースも考え、野菜ジュースは便利だといいます。
「災害が起きたあと、体の調子を整えてくれるビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な野菜の摂取はとても大切ですが、しかしそれは災害時に限らず普段の生活から大切なことです。健康のために成人がとりたい野菜量は1日350gと言われていますが、厚生労働省の調査では多くの人が野菜摂取目標量の350gに対して60g少ないと言われています。野菜不足解消のためにも普段から野菜ジュースや野菜スープの活用に慣れておくことをおすすめします。
忙しい朝に野菜を調理するのは大変なことですが、野菜ジュースや野菜スープを活用して野菜摂取量アップするのも手軽でいいと思います。普段から飲んだり食べたりして慣れ親しんでおくことがポイントです。災害が起きたあと、特別なものを食べることがストレスになることがありますが、『いつものあれ』は心の安心につながります。さらには水分補給にもなる野菜ジュースを普段の食事でおいしく食べながら備えましょう」