健康・医療

《年末年始は注意》ビールは中瓶1本まで!「脂肪肝」を予防するお酒の量の目安と食事、運動は?

乾杯している人
忘年会シーズンは食べ過ぎ、飲み過ぎに注意!
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食べ過ぎやアルコールの飲み過ぎは、脂肪肝による肝機能障害が進行する原因の1つです。「忘年会シーズンはとくに注意が必要です」と話す薬剤師の山形ゆかりさんに、肝機能障害に関係する脂肪肝の症状や原因、予防のためのセルフケアと漢方薬について教えてもらいました。

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脂肪肝の原因と症状

脂肪肝とは肝臓に中性脂肪がたまった状態をいい、放置すると肝炎や肝硬変につながり、最終的には肝がんにいたる可能性もあります。

脂肪肝や肝炎は初期症状がほとんどありませんが、進行すると全身の倦怠感や食欲低下、嘔気、黄疸、皮膚のかゆみなどがあらわれることがあります。

「アルコール性肝炎」は初期症状が出ることもある

脂肪肝の原因は、ほとんどの場合が大量のアルコール摂取と過食です。アルコール摂取が主な原因の場合「アルコール性肝炎」、過食が主な原因で運動不足や肥満なども関係している場合は「非アルコール性脂肪性肝炎」と分類されます。

初期症状がほぼない肝炎ですが、「アルコール性肝炎」の場合は肝臓の腫れや右上腹部の痛み、黄疸、尿の変色(紅茶色)といった症状がすぐに出ることもあります。

お腹を押さえる人
「アルコール性肝炎」の場合は肝臓の腫れや右上腹部の痛みなどの症状が現れることも
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エストロゲンの減少と脂肪肝の関係

日常的に飲酒をしている人はもちろん、40代以降の女性は脂肪代謝を促進する女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで中性脂肪がたまりやすくなるため、脂肪肝に注意が必要です。また、痩せ過ぎている場合も脂肪肝と無関係とは言い切れません。低栄養でたんぱく質が不足している状態の場合、肝臓内の代謝異常が起き、脂肪肝になる可能性があります。

脂肪肝を予防する方法

脂肪肝を予防するには、飲酒量を減らし、肝臓に中性脂肪がつかないようにすることと、運動によって内臓脂肪を代謝することが必要です。

お酒は適量にする

厚生労働省は、「節度ある適度な飲酒」として1日の平均純アルコール摂取量を約20gと設定しています(厚生労働省「アルコール」https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html)。

主な酒類に含まれる純アルコール量20gの目安は、ビールは中瓶1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、ウイスキーは60ml、焼酎(35度)は70ml、ワインは200mlです。お酒の種類やアルコール度数が上記に当てはまらない場合は、お酒の量(ml)×アルコール度数÷100×0.8(アルコールの比重)=純アルコール量(g)という計算式で求めることができます。

瓶ビールとグラス
ビールの場合は中びん1本程度が「節度ある適度な飲酒」
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ただし、一般的に男性よりもアルコール分解速度が遅い女性や少量の飲酒で顔が赤くなってしまう人、65歳以上の高齢者などは、20gよりも2分の1から3分の1程度少ない量が適当と考えられています。純アルコール摂取量を把握して、肝臓を気遣った飲酒をするように心がけましょう。

内臓脂肪を代謝する

脂肪肝に関わる肥満は、主に内臓脂肪型肥満といわれています。そのため、内臓脂肪を代謝することも脂肪肝の予防に効果が期待できます。そこで、有効なのが有酸素運動です。

ウォーキングやジョギングなど、外での運動に抵抗がある場合も、自宅でできる有酸素運動があります。例えば、踏み台昇降や階段の昇り降り、寝転がって行うエア自転車こぎ、フラフープなどがおすすめです。

エア自転車漕ぎをする女性
エア自転車漕ぎも自宅でできる有酸素運動
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また、有酸素運動に加えて筋トレをすると、基礎代謝がアップするため、内臓脂肪が減りやすくなります。時間があるときは、有酸素運動を始める前に10分ほどスクワットや腹筋などの筋トレをするとよいでしょう。

脂肪肝を予防する食事

脂肪肝を食事で予防するには、1日の摂取カロリー量を適切にすることを心がけるとともに、必須アミノ酸のひとつで、肝機能改善や脂肪肝予防効果が期待できる「メチオニン」を含む食材を積極的に取り入れましょう。

適切な1日のカロリー摂取量は、活動量や年齢、体重などの要素で変動しますが、活動量が少ない成人女性は1400~2000kcal、男性は2200±200kcal程度です。このカロリー摂取量のうち、脂質は20〜30%が適切な摂取量といわれています。自身の活動量や年齢などから適切なカロリー摂取量を割り出し、適切なカロリー摂取を心がけましょう。

メチオニンは肝臓で老廃物や毒素、中性脂肪などの排出や代謝を促す働きがある栄養素です。メチオニンは、まぐろやかつお、ぶり、牛肉、チーズなどの食材に多く含まれています。ただし、肉やチーズなどは脂質が多い食材でもあるため、食べ過ぎないようにしましょう。

ぶりの切り身
メチオニンとビタミンB6を含み、これからの季節に旬を迎えるぶり
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また、メチオニンによる脂質の代謝を促すにはビタミンB6の摂取も必要です。メチオニンとビタミンB6を含むぶりは、12月から3月が旬のため、これからの季節にぴったりです。

切り身の場合、表面につやがあり、血合いが鮮やかな紅色(白っぽくないもの)で黒ずみがないものが鮮度のよいぶりです。刺身や煮物、鍋などで冬の味覚を楽しみながら、脂肪肝を予防しましょう。

脂肪肝の予防には漢方薬も役立つ

有酸素運動による内臓脂肪の代謝や食事による脂肪肝の予防効果をアップさせるには、漢方薬を併用するのもおすすめです。

「代謝を上げて、運動の効率をよくする」「自律神経を整えてストレスによる過食を防ぐ」「脂肪の吸収を抑える」「余分な脂肪を便といっしょに排出する」といった作用がある漢方薬は、肥満症の治療薬としてダイエット外来や婦人科でも処方されています。これらの漢方薬は、脂肪肝の予防にも効果が期待できます。

さまざまな生薬
脂肪肝の予防に役立つ漢方薬を紹介
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おすすめの漢方薬

・大柴胡湯(だいさいことう)

便通をよくして老廃物を排出するとともに、脂質代謝を整え肥満症の改善に働きかけます。ストレスで食欲が増しやすい人に用いる漢方薬です。

→大柴胡湯について詳しく知る

・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

脂肪燃焼を促し、肥満症やむくみを改善する効果が期待できます。便秘ぎみでお腹に脂肪がたまりやすい人に用いる漢方薬です。

→防風通聖散について詳しく知る

漢方薬を始める際の注意点

漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。

ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。

◆教えてくれた人:薬剤師・山形ゆかりさん

白衣の女性
薬剤師の山形ゆかりさん
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やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。

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