「それ、私じゃないよ」
こういう“行き違い”が起こると、とっさに身構えちゃうんだわ。年に何度もない取材の申し込みを断っておいて、そのことをすっかり忘れているって、これはもう物忘れのはんちゅうを超えているよ。
背筋が強張りだした。が、次の瞬間、ちょっと思い当たることがあり、念のため、「取材のテーマは何?」と問うと「離婚ですけど」とライター嬢。このひと言で瞬時に解決したね。
「それ、私じゃないよ。私より若くて才能ある、『離婚してもいいですか?』という漫画を描いているイラストレーターの野原広子さん!」と私。「ヒェーッ、私、なんてことをしたのかしら」とライター嬢は顔を引きつらせてたっけ。
「野原広子って本名ですか? いい名前ですよね」と初対面の人から言われると、「はい、本名です」と答える。で、相手によっては「でも野原は離婚した夫の姓で、語呂がいいから結婚したけど、残念ながらうまくいきませんでした」と、余計なことまで言うこともある。私にとって“離婚”は40年も前の記憶のかなたの出来事だけど、それだけになんの感情もなくつらつらと口から滑り出るんだわ。
それにしても、気がかりなのはもうひとりの野原広子さんよ。「オバ記者ですよね?」とか聞かれていやな思いをしてはいまいか。昨年暮れの「野原広子ちがい」の一件からすごく気になっている。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
【381】66歳オバ記者、定期検診で「膵のう胞」が見つかりモヤモヤな年越し 「気をもんでも答えがすぐ出るわけじゃない」の心境に