
「長期間せきが続いている場合、喘息を発症している可能性があるため注意が必要です」と話すのは薬剤師の山形ゆかりさん。そこで、喘息の症状や原因、発作や悪化を防ぐための食事や漢方薬について教えてもらいました。
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喘息の症状
喘息(気管支喘息)は、さまざまな原因で気管支の炎症が慢性化して気道が狭くなり、刺激に対して敏感になることで起こります。
喘息の主な症状は、発作的な喘鳴(のどがゼーゼーと鳴る)や激しいせき、胸の痛み、動悸などです。症状が悪化すると、呼吸困難を起こすなど命に関わることもあります。
喘息は大人になってから発症する場合もあります。とくに、冬は乾燥した冷たい空気やかぜなどにより喉への刺激が多くなるため、喘息の発作が出やすい傾向にあります。

喘息の種類と原因
喘息はアレルギーが原因のものとそうでないもので、アトピー型と非アトピー型の2種類に分けられます。
アトピー型
アトピー型は、アレルギー反応で気管支の炎症が起こる喘息です。小児喘息は、このアトピー型が多いといわれています。
アレルギー反応の主な原因(アレルゲン)には、ほこり、ハウスダスト中のダニやカビ類、ペットの毛やフケ、花粉などがあり、血液検査でアレルギー反応の有無や強さを数値化してあらわす好酸球の数やアレルゲンを調べることで診断できます。
非アトピー型
アレルゲンが特定できない喘息は、非アトピー型に分類されます。
かぜや感染症、気温・湿度の変化、喫煙、アルコール、肥満、運動不足、過労、ストレスなどさまざまな要因によって起こると考えられており、成人になってから発症する人が多いのが非アトピー型喘息の特徴です。複数の原因が絡み合っていることも多いため、アレルゲンを避けることで回復が見込めるアトピー型と比べ、完治しにくいのが特徴です。
季節を問わず発作が起きやすい非アトピー型喘息ですが、かぜやウイルス感染がきっかけでせきが止まらなくなり、発症する場合があります。

かぜをひいたときに、いつもよりせきが長引いていたり、「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」など呼吸時の音がおかしいと感じたりした場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
喘息の発作・悪化を予防する方法
大人に多い非アトピー型喘息を予防するには、気管支の炎症の原因になっている生活習慣を改善したり、喘息が起こるきっかけをなるべく作らないようにしたりする必要があります。
たとえば、喘息の発症や悪化の要因として肥満や運動不足が挙げられます。肥満の場合、内臓脂肪に含まれる脂肪細胞から喘息を悪化させる物質が出されたり、気管支周辺に脂肪細胞があることで炎症が引き起こされたりします。さらに、運動不足であれば脂肪がたまりやすく、喘息の悪化につながるでしょう。
肥満や運動不足を解消するために、食事の内容を見直してバランスのよい食事を心がけたり、適度な運動をしたりすることが大切です。ただし、運動する際には乾燥した空気を吸い込むことで喘息の発作が起こる可能性があります。とくに空気が冷たく乾燥している冬は発作が起きやすいため、運動前には必ずウォーミングアップを行い、乾燥した場所での運動は避けましょう。

また、喫煙や飲酒は呼吸機能を低下させるため、アトピー型や非アトピー型に関わらず喘息を悪化させます。受動喫煙が喘息の発作を引き起こすこともあるため、喫煙所の近くを通るのは避ける、喫煙者の家族には近くで吸わないよう配慮を求める、といった対策をすることが理想です。
非アトピー型喘息は、かぜやインフルエンザなどから喘息を発症するケースが多いため、感染症対策も喘息の予防になるといえます。
喘息を予防・悪化させないためにはビタミンC食材が有効
せきが気になったときには、免疫力を維持する効果が期待できる「ビタミンC」を多く含む食材を食べることが、気管支の炎症の慢性化を防ぐことにつながります。
主に野菜や果物に多く含まれるビタミンCですが、とくにパプリカや黄色のキウイフルーツ、いちごなどが含有量が多い食材です。

ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱い性質があるため、生のまま食べるフルーツは効率よく摂取できるのでよいでしょう。
調理する場合は、加熱時間を短くしたり、蒸し器や電子レンジ調理を活用したりして、ビタミンCの損失を防ぐ、または汁物にしてビタミンCが溶けだした煮汁ごと食べるのもよいです。
喘息には漢方薬も役立つ
乾燥した空気やアレルゲンなどが肺に入り込むと、のどの痛みやせき、たんなど呼吸器のトラブルが起きやすくなります。そこで、「気管支を広げて呼吸をしやすくする」「酸素や栄養を肺に届け、呼吸器の機能を回復する」「気道の炎症を和らげる」といった作用がある漢方薬が、喘息の発作や症状の悪化を防ぐ医薬品として使われています。

おすすめの漢方薬
・麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
気管支喘息や気管支炎の治療に用いる漢方薬で、咽頭部の熱を冷まし、せきやたん、のどの渇きを抑え、呼吸をしやすくします。
・柴朴湯(さいぼくとう)
のど、肺、気管の炎症を和らげるとともにたんを取り去ります。気管支喘息や気管支炎のほか、せき、不安神経症に用いられる漢方薬です。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれた人:薬剤師・山形ゆかりさん

やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。