年をとると脂肪がつきやすく、なのになかなか落ちにくい…。若いときと同じような負担の大きいダイエットをして、体調を崩したりなんてことも。『医師のぼくが50年かけてたどりついた鎌田式長生き食事術』(アスコム)を上梓した医師の鎌田實さん(75歳)は、“頑張らない”ダイエットをすすめていて、そのカギを握るのはヨーグルトなのだと話します。ヨーグルトをどう活用するべきなのか、詳しく教えていただきました。
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「鎌田式ヨーグルトダイエット」で体が変わる
近年は少し脂肪がついている人のほうが、かえって長生きをするという“肥満パラドックス”が知られています。女性は閉経を迎えるとコレステロール値が上がることで、食事の際にコレステロールを気にする人が多いですが、実はコレステロール値が少し高めの人のほうが、少し肥満気味の人と同様に長生きしているというデータがあるそうです。
「年をとって脂肪がつきやすくなったからといって、おいしいものを食べることにあまり臆病になる必要はないと思うんです。ダイエットは基本的に我慢をするとイメージをしているかたも多いですが、おいしいものを食べないと心も元気がなくなりますよね。たまには焼肉やステーキ、とんかつなどを食べて食事を楽しむべきなんです。
おいしいものを食べながら、健康的な見た目を維持するうえで、ヨーグルトを取り入れるのがおすすめです。少し工夫して食べることで体が改善しますので、ぜひ試してみてください」(鎌田さん・以下同)
「鎌田式ヨーグルトダイエット」は夕食後がポイント
「ヨーグルトを食べると乳酸菌やビフィズス菌の力によって腸が整い、排便がスムーズになって、痩せ体質になりますし、肌や髪も健康的になります。私自身、このヨーグルトのパワーに注目して、日々取り入れています」
「鎌田式ヨーグルトダイエット」では、夕食後にヨーグルトを食べることをすすめています。鎌田さんによれば、腸が一番活発になるゴールデンタイムは、起床後15〜19時間後。たとえば、朝7時起床なら、腸は22時〜深夜2時にゴールデンタイムを迎えます。
夕食後にヨーグルトを食べることで、ゴールデンタイムにしっかりと善玉菌が働いて、腸を整え、ダイエット効果を発揮するのだそうです。胃酸の働きが強い空腹時は乳酸菌の効果が薄くなるので、できれば朝食にヨーグルトだけを食べるよりも、胃にものが入っている食後がよいのだと鎌田さんは言います。
1日のヨーグルトの量や選び方の目安は?
乳酸菌は体内に長くとどまることができないので、ヨーグルトは一度にたくさん食べるよりも、1食あたり100〜200gを目安に、毎日食べ続けることが大切だといいます。
「おすすめは無糖のものですが、飽きたときははちみつをかけたり、小さく切ったりんごをのせたり、ごまをかけたりと、飽きないように工夫するのが続けるコツです」
さらに、乳酸菌には種類があり、人によって合うものが異なるのだと鎌田さんは言います。合わない乳酸菌を摂り続けると、逆に肌荒れや便秘の原因になってしまうこともあるそうです。しばらく食べ続けてみて、お腹や肌の調子がよくないと感じたら、違うヨーグルトを試してみましょう。
鎌田先生おすすめのヨーグルトの選び方・食べ方
ヨーグルトを食べるときにさまざまな工夫をするとよいと話す鎌田さん。どんなことをするべきなのか、2つ挙げてくださいました。
いろんな種類のヨーグルトを食べるべき理由
プロテインが豊富なものや、機能性食品など、さまざまなヨーグルトが販売されています。どのようなものを食べるのがおすすめなのでしょうか?
「高プロテインヨーグルトは1個あたり10gほどたんぱく質が含まれていて、健康によいですし、しかも濃厚でおいしいのでおすすめ。普段の食事でたんぱく質をあまり摂れていない人は選んでみてください」
鎌田さんは、高プロテインヨーグルトだけでなく、さまざまなヨーグルトを食べてみることもよいのだと言います。
「オックスフォード大学の論文で、いろんな産地の発酵食品を食べると、腸の中で善玉菌が競い合い、腸内環境をよくすると発表されています。ヨーグルトはさまざまなメーカーから発売されていますが、たまにはお取り寄せをするのも楽しいですし、同じものを食べ続けるよりも飽きがこないでしょう。高プロテインヨーグルトに限らず、さまざまな種類を楽しんでみることをおすすめします」
ヨーグルト+乾物で栄養がさらにアップ
「乳酸菌やビフィズス菌など、腸内環境を整えてくれる生きた微生物=善玉菌を“プロバイオティクス”と言い、それらを食べることで腸内の善玉菌が増え、悪玉菌を減らしてくれます。
一方で、オリゴ糖や食物繊維など、腸の中でえさとなり、善玉菌を育ててくれる栄養を“プレバイオティクス”と言います。最近になって注目されているのが、この2つを同時に体に取り入れる“シンバイオティクス”なんです」
この“シンバイオティクス”はヨーグルトでも取り入れることができると、鎌田さんは話します。たとえば、切り干し大根をヨーグルトでもどし、和えて調理するのも“シンバイオティクス”。しかも、水で戻すと流れ出てしまうビタミンBなども残さず摂ることができますし、カルシウム量もアップします。
切り干し大根以外にも、ドライフルーツをヨーグルトの中に入れたり、干し野菜や干ししいたけをヨーグルトで戻したりして調理するのもOKです。
◆教えてくれたのは:医師・鎌田實さん
1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。1988年に長野・諏訪中央病院院長に就任し、脳卒中の死亡率が全国ワーストクラスだった長野県で減塩運動をスタートさせ、地域住民と公民館で食事をするなど「住民とともにつくる医療」を推進。地域包括ケアのさきがけとなり、長野県を屈指の健康長寿県に導いた。2005年より同院名誉院長に就任。『医師のぼくが50年かけてたどりついた鎌田式長生き食事術』(アスコム)のほか、実用書からエッセイまで著作多数。http://www.kamataminoru.com/
取材・文/イワイユウ 撮影/黒石あみ