健康・医療

腰や膝、肩が痛む原因「間違った体の使い方」を簡単に矯正 整形外科医考案の「長生きストレッチ」実践法

痛みの原因は「間違った体の使い方」の可能性も(Ph/photoAC)
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将来の寝たきりリスクが高まるとされるロコモ(ロコモティブシンドローム)。『長生き足腰のつくり方』(アスコム)の著者でスポーツ整形外科医の渡會公治さんは、その原因について、「加齢による衰え」と「間違った体の使い方を続けていること」の2点を挙げています。「中高年になって足腰の痛みに悩まされている人の多くは、悪い身体の使い方を長年続けてきたツケを払わされているということ。そうした悪いクセを矯正するために独自に考えたのが、『長生きストレッチ』です」(渡會さん・以下同)。渡會さん考案の「長生きストレッチ」を実践すると、体の構造に合った動きにより、長年染みついたクセが矯正できるといいます。

長生きストレッチは何歳からでも

「私の指導を受けた中高年以上の方々の多くが、新しい体の使い方を学んで痛みのない生活を始めています。体の構造に合った自然な動きなので、理解すると身に付いてしまうものなのです」

新しい体の使い方を覚えて痛みのない生活を(Ph/photoAC)
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長生きストレッチの目的

「長生きストレッチの目的は、『理にかなった上手な体の使い方を身に付ける』『加齢とともに衰えた運動器の能力を回復する』の2つです。

この目的を達成するのに必要なのは難しい運動ではありません。簡単な動作を、毎日少しずつ続けるものです。年齢性別にかかわらず誰でも取り組めるので、習慣にできるかどうかが最大のポイントです」

足腰を鍛える「長生きスクワット」

渡會さん考案の「長生きストレッチ」では3つの運動を毎日実践することを推奨しています。そのひとつ目が、足腰を鍛える「長生きスクワット」です。

壁のコーナーを使えば足腰を痛めない

「立った状態からしゃがんだり、立ったりを繰り返す運動です。『腰やひざが痛いのにスクワット?』と疑問に思われるかもしれませんが、スクワットで腰やひざを悪くするのはやり方を間違っているから。よい動作で行なえば、痛めることはありません」

では、どのようなやり方が「よい動作」なのでしょうか。

「壁のコーナーにお尻をつけ、左右の壁に足とひざが接した状態でスクワットを行えば、正しくできます。壁を背にしていれば、もし倒れたとしても壁が支えてくれるので安心です」

最初は違和感があるかもしれませんが、1週間ほどで慣れて、やりやすくなる人が大半だそうです。5回を1セットとし、1日10セットが目標です。

壁のコーナーを利用する「長生きスクワット」(渡會公治『長生き足腰のつくり方』より)
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背骨の運動「足ふりワイパー体操」

2つ目の運動が、背骨の運動である「足ふりワイパー体操」です。

「うつ伏せに寝て、ひざを曲げ、下肢を自動車のワイパーのように左右に倒すだけです。これなら腰の痛みを感じることなく、腰を動かして体全体の筋力アップを図ることができます」

5回で1セットとし、1日3セットを目標にしましょう。

うつ伏せでひざを曲げて行なう「足ふりワイパー体操」(渡會公治『長生き足腰のつくり方』より)
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体を柔らかくする「股関節ゆるストレッチ」

3つ目の運動は、「体を柔軟にする」ことが目的のストレッチです。

「体がかたいと筋肉や関節の動きがぎこちなくなって動きが鈍くなります。しかし、体は使えばやわらかくなるもの。そのために考案したのが4つのポーズからなる『股関節ゆるストレッチ』。それぞれ2回ずつを目標にしてください」

「股関節ゆるストレッチ」は4種類(渡會公治『長生き足腰のつくり方』より)
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いずれのポーズも、決して無理をせず、痛みやつらさを感じたらすぐにやめることが大事です。また、曲げる深さはできる範囲で構わないとのことです。

「ここまで紹介してきた3つの運動を実践すると、1〜2週間で効果が表れます。運動習慣のない人は、最初の3、4日は筋肉痛になりますが、これは自然な現象です。筋肉は正直で、90歳からでも鍛えると発達することがわかっています」

筋肉痛のあと、なんとなく体が軽く感じられるようになり、気付くと痛みが消えている、というケースも多いようです。

実践の大事なポイント

長生きストレッチを行ううえで大切なポイントについて渡會さんに聞きました。

3食と寝る前、トイレのたびに

「長生きストレッチの課題は継続です。少なくとも、効果を実感できるまでは続けてほしい。そこで私が提案しているのは、1日に何回かに分けて少しずつ行う『低回数高頻度』です」

継続するには一度に頑張って回数をこなすより、1日に何度も行って習慣にすることが大切。そこで渡會さんは、「3食と寝る前、トイレのたびに実践すること」を推奨しています。所要時間にすると、1回10秒、1日で100秒しかかかりません。

効果を高める5大ポイント

さらに、長生きストレッチの効果をアップさせる5つのポイントを聞きました。

「つらくなる前にやめること、深呼吸のペースでゆっくり行うこと、よいフォームを意識すること、まずは2週間続けてみること、体の感度を高めることを意識すること、の5つです。自覚症状がないままロコモが進行するのは、体が危険信号をキャッチできないほど鈍感になっているからです。一方、長生きストレッチの実践は体の感度を高める効果があります。

どの筋肉を使っているか、どれくらい続けると気持ちいいか、どれくらいで筋肉が張ってくるか、などを意識することで、体のわずかな変化を感じ取ることができるようになります」

毎日少しずつ続けることで、体のわずかな変化を感じ取ろう(Ph/photoAC)
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体の声が聞こえるようになると、その日の体調に合わせてマイペースで長生きストレッチを行えるようになるといいます。

長生きストレッチの習慣が身につけば、もうロコモから卒業目前です。体の運動機能に不安を感じている人は、この機会に挑戦してみてください。

◆教えてくれたのは:スポーツ整形外科医・渡會公治さん

スポーツ整形外科医の渡會公治さん
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帝京科学大学(スポーツ医学)特任教授、日本ロコモティブシンドローム研究会メンバー、一般社団法人美立健康協会代表理事。1947年、静岡市生まれ。東京大学医学部卒業。オリンピック代表やプロスポーツ選手の診察・治療を手がけた経験を生かし、同研究会が提唱する「ロコモ体操」を考案。整形外科医として各地で中高年向けのロコモ体操教室を開催している。2023年5月、『長生き足腰のつくり方』(アスコム)を出版。

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