目の健康を守るために大切なことの一つは、「目の老化をできるだけ遅らせる」ことです。目の老化を遅らせるためにできることとして、眼科専門医・森下清文さん監修の元で著書『歳をとっても目が悪くならない人がやっていること』(アスコム)を上梓した、わかさ生活代表取締役社長の角谷建耀知さんがすすめているのが「老眼鏡を使うこと」と「サングラスを使うこと」。詳しく教えてもらいました。
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目の老化とは目の機能低下のこと
目の老化と聞いたとき、何を思い浮かべるでしょうか。多くの人は「老眼」を想像すると思いますが、老眼が進行しているときに具体的に目で起きているのは、「水晶体」と「毛様体筋」という、ピントを調節するために働いている2つの機能の低下です。
水晶体とは、虫眼鏡のレンズのような形をした、水とたんぱく質で形成された組織のこと。角膜と共に光の屈折を調節しており、この水晶体の厚みを調整することで、目はピントを合わせています。
「水晶体は、若い頃は非常に弾力があり、簡単に厚さの調節をすることができます。しかし、年齢とともに硬くなり、弾力性が低下してきます。そうなるとレンズの厚さの調節が難しくなってしまいます」(角谷さん・以下同)
毛様体筋も加齢で衰え、老眼に
毛様体筋は、水晶体の厚さを調整する筋肉のこと。毛様体筋が強く収縮すると水晶体が薄くなり、ゆるむと水晶体は厚くなります。この毛様体筋も加齢とともに衰え、水晶体の厚さをスムーズに調整できなくなります。
「水晶体の柔軟性がなくなり、毛様体筋の筋力が衰えると、ピント調節がうまくいかなくなる。それが老眼の原因なのです」
ピント調節機能が衰えると動体視力も衰える
目が老化するとピント調節がうまくいかなくなりますが、「ピント調節機能が衰えると、『動体視力』も衰えてきます」と角谷さん。一般的な視力検査で計られるのは、静止しているものを見る「静止視力」で、動体視力とは動いているものを目で追いかけて識別する能力のこと。
「動体視力は眼球を動かす機能も関係しますが、どんなに眼球がよく動いてもピントが合わなければちゃんと見ることができません」
老眼になってからの対策が大切
老眼は目を労わるサインであり、老眼になってからの対応が重要だと角谷さんは言います。目を労わるべき老眼のサインとして、手元の小さな文字が見えづらくなることのほかに、次のようなものが挙げられます。
・夕方になると、ものが見えづらくなる
・暗い場所へ行くと、見えづらくなる
・夕方になると、すごく目が疲れる
・夕方になると、目がかすむ
「これらのサイン、つまり老化の症状を見逃さずに手を打つことが、いつまでも生活の質(Quality of Life)を落とさない人生につながるのです」
老眼鏡が目の老化のスピードを緩やかにする
老眼は誰でもなるものであり、治すこともできません。そのため、重要なのは目の老化のスピードをゆるやかにすること。そのための方法の一つが「老眼鏡を使うこと」です。老眼鏡をかけると、硬くなってきている水晶体や毛様体筋に負担をかけなくても、楽にものを見ることができます。
「『ちょっと近くが見づらくなってきたなあ』と感じたら、すぐに老眼鏡をかけ始めて、進行に合わせてレンズの度を調整していくのがおすすめです」
見た目が気になる人は累進多焦点レンズ
老眼鏡のレンズには、大きく分けて、「単焦点レンズ」と「多焦点レンズ」があります。単焦点レンズは1か所だけにピントが合うレンズで、老眼鏡として使われるのは、手元にピントが合うレンズです。遠くを見るときはピントがずれるため、老眼鏡を外すか、遠くを見る用の眼鏡にかけ替える必要があります。
一方、多焦点レンズは複数か所にピントが合うレンズです。いわゆる遠近両用眼鏡であり、眼鏡をかけたり外したりすることなく、近くも遠くもひとつの眼鏡で見ることができます。
「ひと昔前は、近くと遠くの2種類の度数しか設定されていない二焦点レンズが主流でしたが、最近は、近くから遠くまで段階的に度数を変えてある累進多焦点レンズ主流になってきています。累進多焦点レンズはレンズに境目がないため、老眼鏡と気づかれにくいことも人気の理由のようです」
コンタクトレンズ派はマルチフォーカルレンズを
それでも老眼鏡をかけたくない、という人には、遠近両用のコンタクトレンズがおすすめ。最近では遠近両用のコンタクトレンズも質の高いものが増えているそうです。
「遠近両用のマルチフォーカル(多焦点)コンタクトレンズは、とても快適な使用感だと評価されています」