不調改善

内臓脂肪が増えることの病気リスク 医師が教える対策のカギは「血糖値の安定」、食事の3つのコツとは?

白衣を着た女性
医師の齋藤真理子さんが内臓脂肪が体に与える悪影響について解説
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なかなかやせないという悩みを持っている人は、内臓脂肪を落とすことがダイエットのカギに。そこで、『「内臓脂肪がなかなか減らない!という人でも 勝手に内臓脂肪が落ちていく食事術』(アスコム)の著者で医師の齋藤真理子さんに、脂肪肝が体に及ぼす悪影響と簡単に始められる対策について教えてもらった。

内臓脂肪のつきすぎが体の不調につながる

そもそも内臓脂肪と肥満にはどんな関係があるのだろうか。

「内臓脂肪が多くなると、脂肪を蓄える機能をもつ脂肪細胞がパンパンに膨れます。この異常に膨れた状態になった脂肪細胞から、炎症性物質が放出されるようになるため、体の組織に炎症が起こります」(齋藤さん・以下同)

これが肝臓で起こると、脂肪肝と呼ばれる。そうして肝臓が常に炎症を起こしている状態だと、健康を保つための働きが十分に果たせなくなり、不調や病気へつながってしまうのだ。

ダイエットに成功した女性のビフォーアフター
左がダイエット前、右がダイエットに成功した齋藤さん(Ph/『「内臓脂肪がなかなか減らない!という人でも 勝手に内臓脂肪が落ちていく食事術』(アスコム)より)
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脂肪肝のリスク

肝臓に異常に脂肪が蓄えられ、炎症が起こってしまうと次の4つの働きに影響を及ぼす。

【1】代謝(食事で摂った栄養を、体内の各器官に必要な形に変える)
【2】エネルギーの貯蔵(体に必要なエネルギー源であるブドウ糖などを貯蔵する)
【3】解毒(アルコール、食品添加物、アンモニアなど有害物質を分解して無毒化する)
【4】胆汁の生成(脂質の消化吸収を助ける、肝臓で処理された不要物を排出する、血液のコレステロール濃度を調整する働きのある胆汁を作り出す)

肝機能の検査数値
脂肪肝が体に与える悪影響(Ph/photoAC)
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さらに肝臓の炎症が進行すると、脂肪性肝炎や肝硬変、肝臓がんなど、命に関わる病気になってしまう可能性もある。

「また、脂肪肝になることで、肝臓に蓄積された中性脂肪が全身をめぐる血管にも流れ出てしまい、血管を狭めて詰まらせやすくします。その結果、心筋梗塞や脳梗塞までも発症するリスクが高まってしまうのです」

このほかにも、脂肪肝が全身に及ぼす影響として、各臓器や器官の炎症をしずめ、修復する「ステロイド」という成分が肝臓の炎症を抑えるのに優先的に使われるため、他の場所で必要としていても十分に使うことができなくなる。

肝臓以外でも、内臓脂肪が多くなると炎症物質は発生する。内臓脂肪が多い人は、炎症が全身で慢性的に起こっていると考えられる。そうなると、体内は傷つけられ続けているのに、修復する道具が不足しているという状態になってしまうのだ。

脂肪肝は基礎代謝の低下も引き起こす

齋藤さんは、肝臓の正常な機能が低下すると、「やせるうえで重要な『基礎代謝』の低下が起きる」とも話す。

「基礎代謝とは、体温の維持や、内臓の稼働、神経の伝達など生命維持のために体が自発的に行うエネルギー消費のことで、その1日の消費エネルギー量は代謝全体の約60%といわれています」

そして、その基礎代謝のうち30%を肝臓が占めているという。つまり、肝臓の機能が低下して肝臓が使うエネルギーが減ると、エネルギーを消費しづらい、やせにくい体になってしまうのだ。やせにくく太りやすい肥満スパイラルにおちいって、一度太ってしまうと肥満が一気に加速するリスクもある。

お腹を押さえる人
脂肪肝になると太りやすい体に…(Ph/photoAC)
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内臓脂肪と血糖値の関係

内臓脂肪を増やさないためには、炭水化物の摂取量を調整したり、MCTオイルを取り入れたりして脂質代謝の体になること。そして、血糖値を安定させ、どか食いを予防することがポイントになるという。

インスリンは体に脂肪を蓄える

多くの糖質を摂取することで、一時的に急上昇する血糖値。それを安定させるために膵臓から分泌されるのが「インスリン」だ。インスリンには血中内の糖を脳や筋肉など必要な場所に運ぶ働きがあり、血糖値を一定に保とうとする。ただし、脳や筋肉が糖を貯蔵できる量には限界があるため、余った糖はインスリンのもう1つの働きで中性脂肪に合成され、体に蓄積される。

「インスリンによる脂肪の蓄積をそのままにして、特に内臓脂肪が増えてしまうとさらに困った事態が起こってしまいます。それが『インスリン抵抗性』です」

インスリン抵抗性とは、インスリンが糖を運ぶ働きが悪くなり、血糖値がどんどん上昇してしまうこと。すると、どんどん脂肪が合成され、さらに内臓脂肪が増えるという負のスパイラルが生まれてしまう。

お菓子と血糖値を測る器械
糖分とインスリン、血糖値の関係を解説(Ph/photoAC)
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また、食後に急上昇した血糖値を下げるために過剰にインスリンが分泌されると、血糖値の急降下が起こる。血糖値の急上昇のあとに急激に下がることを「血糖値スパイク」と呼ぶ。

「血糖値スパイクが起こり、急激に血糖値が下がってしまうと、脳は『血糖値が下がりすぎた=低血糖になってしまった』と勘違いし、必要以上に糖質を欲しがるようになるのです」

こうして、「甘いものがほしい」「お腹が空いた」という欲求が生まれることが、どか食いの原因に。また、血糖値スパイクは血管にダメージを与え、動脈硬化や心筋梗塞のリスクが上がるほか、がんや認知症の疾患につながるとも考えられている。

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