心臓に負荷をかけないためにはストレスをためないこと
心臓に負荷をかけないためには、食事や運動に気を使うことが大切ですが、ストレスをためないことも非常に重要です。
ストレスは心臓病の発症とも密接な関係があり、2011年に起きた東日本大震災直後は、心不全や虚血性心疾患の患者数が増加しました。ストレスが心臓病との関わりを示す理由のひとつとしては、副腎でつくられるホルモンの分泌を高める効果が挙げられます。
「そのなかでもカテコールアミンと称される副腎髄質ホルモンが過剰になると、心拍や血圧を上昇させ、心筋の収縮力が高まり、時として冠れん収性狭心症を生じさせることもあるのです」
ストレスをためないためには「楽しむこと」
ストレスがたまると生活リズムが乱れやすく、心臓病の危険因子となる喫煙や飲酒量の増加、過食、睡眠不足などを引き起こします。悪い生活リズムは新たなストレスを生み、そのストレスがまた危険因子を増幅させてしまいます。「解決の糸口はいたってシンプル。まずはなんでもいいので楽しめることを見つけてください」と上月さん。そして全力で楽しむことが大切だと言います。
「ストレスは『溜まる』と表現されるように、少しずつ解消させていかないと、ふとした拍子に取り返しのつかない状態となって崩れ落ちてしまいます」
無理せずマイペースでストレスを軽減させる
ストレスを完全になくすことはできませんが、無理せずマイペースに、規則正しい生活をすることで、ストレスは軽減させることができます。
「じゅうぶんな睡眠。栄養バランスのとれた三度の食事。適度な運動(ウォーキング)。何かと忙しい日常でこれを維持するのは難しいかもしれませんが、まずはこの基本中の基本を意識するようにしてください」
◆教えてくれたのは:医師・上月正博さん
こうづき・まさひろ。東北大学名誉教授、山形県立保健医療大学理事長・学長、医学博士、日本心臓リハビリテーション学会名誉会員、総合内科専門医、腎臓専門医、高血圧専門医、リハビリテーション科専門医。1981年東北大学医学部卒業。心臓や腎臓などの内部障害のリハビリテーションを専門とし、心臓や腎臓の分野に貢献した科学者に贈られる世界的に名誉ある賞「ハンス・セリエメダル」を2018年に、「日本腎臓財団功労賞」を2022年に受賞。著書に『医師がすすめる自力でできる弱った心臓を元気にする方法』(アスコム)など。