「バズーカップ」アナウンサーとして活躍した別府彩さん(48歳)は、芸能界を引退後「タレントキャリアアドバイザー」に転身。輝く表舞台から、裏方として芸能人を支える道を選んでいた。現在の活動や人生観について聞いた。
コロナ禍で顕著になった、芸能人のパラレルキャリアの重要性
キャリアコンサルタントは職業選択やキャリア開発を支援する専門家のことで、別府さんはそれの芸能人に特化したアドバイザーだ。
「芸能事務所と契約してタレントやアイドルとしてデビューしても、必ず成功するわけではありません。なかには契約を切られてしまうこともある。すると、次に何をしたらいいのか路頭に迷ってしまう人もいます。契約事務所が先の人生プランまでフォローできたら理想的なのですが、難しいのが現状です。
弊社の創業社長は芸能事務所でマネージャーを経験しているので、そのことを由々しく思っていて、芸能人のキャリア支援プロジェクトを2022年の夏頃にスタートさせました。私自身が10年の芸能活動を経て会社員に転職しているので、アドバイザーとして白羽の矢が立ったんです」
現役芸能人も相談に
芸能界を引退した人だけでなく、傍から見ると順調に仕事をこなしている芸能人も相談に来るという。
「芸能の仕事をしながら二足、三足の草鞋で並行して仕事をしている人は多いですよね。芸能人は収入が不安定ではありますが、会社員のように時間で拘束されているわけではないので、そういうパラレルキャリアを築くのに向いているんです。今は仕事が順調でも、いつなくなってもおかしくない業界なので、いざという時に備えることは生活や心の安定につながります。
それはコロナ禍で顕著になりました。たくさんの公演やイベントが中止になり、テレビの出演者もソーシャルディスタンスのため人数が制限されて、仕事がすごく減って大変だという悲鳴を多く聞きました。そんな事態に直面して、考え方が変わった方が増えたようです」
たくさんの寄り道の先に今がある
そんな芸能人たちの声を受けて始まったのが、芸能人のパラレルキャリア・セカンドキャリアを支援するサービスだった。
「相談に来られる方が口を揃えておっしゃるのが、“芸能の仕事しかしていないから、何もスキルがない”という言葉。私自身も転職する時はそう思っていたので、その気持ちはよくわかります。でも、実際はそんなことありません。
皆さんプロ意識が高くて、仕事をやり遂げる力が備わっているし、あきらめずに努力する胆力もお持ちです。根性論のようですが、“頑張る力”は誰でも持ち合わせているわけではないんです。
それに、コミュニケーション力は皆さん高いですね。芸能人はいろんな場所に行って、たくさんの人と話すので、自然とスキルが身につくのだと思います。こうして自分の武器に気づかずに、何も持っていないと悩んでいる人は多いです」
芸能人に向いている広報や営業職
会社勤務をしたことがない芸能人のセカンドキャリアとして向いているのは、広報や営業職だと別府さんは分析する。
「どちらもコミュニケーション力や情報を適切に伝える能力、ストレス耐性がある人に向いている仕事で、芸能界で磨かれているものです。新しいアイディアを生み出すクリエイティビティや、プレゼンテーション力を備えている人も多い。
私は芸能界と複数の企業を経験して、それを活かして才能のマッチングをする仕事に就くことができました。アナウンサーから始まっていろんな仕事をしてきたことは全て役に立っています。何度も新しい環境に身を置くことは大変でしたが、寄り道をしてきて良かったです」