漢方医学において、春は目の不調が起きやすくなる季節といわれています。それはなぜなのでしょうか?「目薬を使っていてもなかなか改善しない場合は、体の内側からのアプローチを」と話す漢方に詳しい薬剤師の山形ゆかりさんに、春に目の不調が起こりやすくなる原因と、対策のための食事や漢方薬について教えてもらいました。
* * *
漢方医学における春の目の不調
漢方医学では、春は「肝(かん)」の働きの低下や環境の変化により、目の不調が起こる季節だと考えられています。
「肝」は、漢方医学では肝臓や目、筋肉、自律神経、感情のコントロールなどの機能を指します。春は草木が芽吹くように人の体も活動的になる季節です。体が活動的になれば、あわせて「肝」も活発に働くため、「肝」への負担が増えます。負担が増えることで「肝」が弱り、目や目の周りの筋肉の働きが低下し、不調があらわれやすくなるのです。
また、春は環境や気候の変化による精神的・身体的なストレスを受けやすい時期でもあります。ストレスによる「気(き)」(エネルギー)や「血(けつ)」(血液や栄養)の巡りの停滞は、目の不調を引き起こす原因にもなります。
このように、春は「肝」に関係している目や目の周りの筋肉の機能低下と、「気」や「血」の巡りの停滞によって、かすみ目や眼精疲労などの目の不調が起こりやすくなるのです。
目の不調への対策方法
そこで、目の不調の原因である「肝」の機能低下や、「気」「血」の巡りの停滞にアプローチしてみましょう。
生活習慣の見直し
生活習慣を見直して規則正しい生活をすると、体内の「気」や「血」の巡りがよくなり、目の不調の改善への効果が期待できます。とくに大切なのは、早起きです。漢方医学の古典である「黄帝内経(こうていだいけい)」には、「春は朝早く起きて活動するように」と書かれています。
朝なかなか起きられないという人は、朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びる、ベッドでだらだらせずにすぐに動き始めるなど、目が覚めやすくなる行動を取り入れましょう。
また、運動して血行がよくなると、エネルギーや栄養が目に運ばれやすくなります。厚生労働省が作成する「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001171393.pdf)では、健康維持のために「息が弾み汗をかく程度」の運動を週合計で60分以上行うことを推奨しています。ウォーキングやジョギングで春の穏やかな気候を感じながら運動しましょう。
「肝」の働きをよくする食材を取り入れる
春に旬を迎える食材は、「肝」の働きを改善させるのに役立ちます。
たらの芽、ふきのとうなど、春の山菜の苦味は新陳代謝や解毒作用を高める効果がある植物性アルカノイドやポリフェノールに由来しており、消化を促進して「肝」の働きをサポートするといわれています。
そのほか春が旬の、たけのこや、菜の花、にら、ごぼう、アスパラガスなども同様の効果が期待できます。おこわやおひたし、てんぷらなどで春の味覚を味わいながら、目の不調への対策をしましょう。
また、酢やかんきつ類、梅干しなど酸味のある食材も、「肝」の働きを高めるのに有効です。ただし、酸味の摂りすぎは胃腸に負担となるため注意しましょう。