仁科亜季子(71才)に最初のがんが見つかったのは、芸能界から引退し、2人の子育てに邁進していた38才のときだった。
「家族旅行中に食中毒のような激しい腹痛を感じたことが、がん検診を受けたきっかけでした。出産してから一度も受けていなかったので知り合いの医師から“だったら、一度検診してみたら”とすすめられて、軽い気持ちで受診したら、悪性度が高い初期の子宮頸がんが見つかったんです。
当時は“がん=死”のイメージが強く、告知されて2時間ほど涙が止まりませんでした。仕事で海外にいた元夫(松方弘樹さん・享年74)は私のがんを知って絶句し、ベッドに崩れ落ちたそうです」
すぐに入院し、抗がん剤治療、手術による子宮・卵巣切除、放射線治療のフルコースを受けた。当時8才と6才だった子供のため、“死ぬわけにはいかない”と自分を奮い立たせた。
いまも仕事ができて家族と楽しく過ごせるのは、検診のおかげ
「子宮頸がんは自覚症状がないうえ、もともと生理が不順だったので不正出血があっても気に留めませんでした。そもそも、あの頃は子宮頸がんがどんな病気か知らなかったし、自治体から検診の通知があっても放置していたくらいがんに関して無知でした。
医師から“もしも検診せずに放置していたら余命は2年だった”と言われて初めて、検診の大切さを知りました」
4か月に及ぶ入院で治療を乗り切り、がんを克服したが、その後3度にわたって新たながんが判明することになる。46才のときには消化管の壁にできる希少がんであるGIST(消化管間質腫瘍)を患った。
「40代前半に良性の腫瘍が見つかった後、定期的な検査によって悪化したことがわかり、切除の手術の最中にかなり悪性の腫瘍になっていることが明らかになって、そのまま胃と脾臓を切除しました。私からすると手術で寝て起きてみたら、がんをきれいに取ってもらえた感じでした」
さらに55才で小腸・盲腸がん、62才で大腸がんを経験したが、いずれも検診のおかげで早期発見・早期治療できたと微笑む。
「4回もがんになるのは神様のいたずらかもしれません。でも私は子宮頸がん以降は血液検査やMRIなど定期的に検診を受ける習慣がついていたので、その後の3度のがんも早く見つけて治療できました。
いまも仕事ができて家族と楽しく過ごせるのは、検診のおかげ。特に子宮頸がんは若い女性が発症しやすいので、若いうちから検診を受けてほしいですね」
スター混声合唱団の活動で全国を飛び回る。
◆女優・仁科亜季子
女優/1953年東京都出身。高校卒業後、ドラマ『白鳥の歌なんか聞えない』(NHK)で女優デビュー。1991年に子宮頸がんが見つかった後、1999年には胃、2008年に小腸・盲腸、2014年に大腸と3度のがんが判明。講演や啓発活動にも取り組む。
※女性セブン2024年6月27日号