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猫のおしっこからわかる“隠れた病気”「回数は多いが量は少ない」「回数も量も多い」で疑われるのは?

猫
猫のおしっこからわかる“隠れた病気”とは?(Ph/イメージマート)
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猫は、腎臓など泌尿器系の疾患にかかりやすいとされている。泌尿器疾患を早期に発見するには、定期的な健康診断に加えて、排尿のチェックが欠かせない。飼い主さんは愛猫のトイレのどんなところを見るべきなのか、獣医師の内山莉音さんに解説してもらった。

飼っている猫の尿量や回数などを知っておく

猫は、10万年ほど前に中東の砂漠地帯で暮らしていたヤマネコにルーツを持つとされていて、そのせいか水分代謝に問題を抱えがち。泌尿器系の病気にかかりやすいことがよく知られている。内山さんは、泌尿器疾患を早期に見つけるためにも、猫を飼っている人は猫のトイレの様子をよく見てほしいと話す。

「猫は膀胱炎や尿路結石症にかかる子が多く、シニアでは慢性腎臓病や急性腎不全などのリスクも高まってくるので、飼い主さんが猫の排尿の様子や回数、おしっこの量や色を確認することは、とても大事です」(内山さん・以下同)

猫は一般に、1日3~4回に分けて排尿する。量は飲んだ水の半分ぐらい。体重3kgの猫で1日に水を約150ml飲んで、約75mlが尿となって出ていく 。色は薄い黄色だ。

「猫を飼ったら、健康に問題がないとき、その子の排尿のスタンダードを把握するように努めましょう。どれぐらいの水を飲んで、どれぐらいのおしっこをするのか、1日に何回ぐらいトイレに入るか、おしっこの色や臭いがどんな感じか、普段の様子を知っておけば、異常があったときに早く気づくことができます」

トイレによく行くけど量は少ない場合

具体的に、排尿がどうなると、どのような病気の疑いがあるか、見ていこう。まず、トイレに行く回数が増えたけど、1回のおしっこの量が増えていない場合。

膀胱炎や尿路結石症の疑いが…(Ph/イメージマート)
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「これは膀胱炎や尿路結石症の疑いがあります。膀胱炎の場合、残尿感があるので、トイレに何回も出入りします。でも、尿が出にくいので、量は少ない。ほかに膀胱炎の症状として、血尿が出たり、トイレ以外の場所で粗相をしてしまったり、排尿時に痛みで鳴いたりすることがあります。細菌性の場合に限ると、おしっこの臭い が強くなることもあるようです」

膀胱炎は、その名の通り膀胱に炎症が起こる病気で、上記のような症状のほか、元気がなくなったり、食欲が落ちたりすることも。炎症がひどくなって尿を出せなくなると、膀胱内の尿が腎臓に逆流し、腎不全や尿毒症といった病気に つながることもある。

犬では若い間は膀胱炎のリスクが低いが、猫は1歳でも12歳でも、1年間に膀胱炎で動物病院にかかる確率が5%程度ある。人間の場合は女性が膀胱炎にかかりやすいことが知られているが、猫の場合はオスのほうがやや多い という統計がある。

「細菌性の膀胱炎はシニアに多いのですが、原因のよく分からない突発性の膀胱炎は若い猫にも多く見られる病気です。猫を飼ったら、年齢、性別に関係なく膀胱炎のリスクを常に意識しておく必要があります」

やはり頻尿の場合に疑うべき尿路結石症は、血尿、排尿時の痛みなど、他の症状も膀胱炎と似ているが、尿に含まれるリン、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル成分が結晶化する病気 なので、結晶化した粒が尿に混じることがある。

「猫の場合は、リン酸アンモニウムマグネシウム結石(ストラバイト結石)というものができることが多くて、小さいものは尿と一緒に体外へ出ることがあるので、『おしっこシートがキラキラして見えた』と話す人もいますね」

おしっこの回数も量も多い場合

今度は、おしっこの回数が多く、1日当たりの総量も増えている場合。

「まず、慢性腎臓病を疑うべきかと思います。実は多飲多尿の症状が出る病気は結構あります。慢性腎臓病のほかに、糖尿病、甲状腺機能亢進症、クッシング症候群などです。ただ、糖尿病の場合は食欲があるのに体重が減るだとか、甲状腺機能亢進症では攻撃性が増す、クッシング症候群では多食が見られるなど、ほかの症状を伴っていることが多いです。慢性腎臓病の場合は、初期症状として一番ポピュラーなのが多飲多尿ですね」

腎臓は尿を作る臓器で、体内で不要になった老廃物や毒素を尿の中に排出したり、ホルモンを分泌したりしている。この腎臓に障害が起きて働きが悪くなるのが慢性腎臓病(腎不全)だ。年齢を重ねるにつれてリスクが高まる病気で、多くの場合、まず多飲多尿の傾向が見られ、体重減少や嘔吐、貧血などの症状が現れる。

おしっこの回数が多く、1日当たりの総量も増えている場合は要注意(Ph/イメージマート)
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「腎臓でおしっこを濃縮することができなくなるので、薄いおしっこを大量にするようになります」

多飲多尿の症状が出た時点で「ステージ2」であり、腎機能が4分の1まで低下しているともいわれる。さらに病気が進んで尿毒症になると元気がなくなり、嘔吐や下痢、痙攣などの神経症状を引き起こす。

トイレに入る回数が少ない場合

トイレに立つ回数が減って、そのかわりに1回の尿量が増えて、1日の合計尿量があまり変わらない場合も。

「これは病気というより、トイレが気に入らないのであまりトイレに出入りしたくない、ストレスを感じているという状態かもしれません」

猫はきれい好きの動物と言われていて、トイレが汚いと、トイレに入りたがらない。このため、多頭飼いをしている家庭では、飼っている猫の数に「1」を足した数だけ、トイレを用意すべきだとされている。

「突発性膀胱炎も、原因の一つにストレスがあるとも言われています。猫は環境へのこだわりが強く、猫砂が変わっただけでも不満を覚えたりするようです。愛猫が気に入るトイレ環境を作って維持することが大事ですね」

猫のおしっこの臭いは強いので、屋根付きのトイレや小さめサイズのトイレを設置するケースもあるようだが、獣医師からすると「できれば屋根はなし、サイズもその子がぐるっと回れる広さが理想」とのことだ。

「そして、新鮮な水をたくさん用意しましょう。本来あまり水を飲みたがらない猫に、十分に水を飲んで快適に排尿してもらう。それが、猫の泌尿器疾患を予防する上で、とても重要なことです」

◆教えてくれたのは:獣医師・内山莉音さん

獣医師・内山莉音さん
獣医師・内山莉音さん
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獣医師。日本獣医生命科学大学卒業(獣医内科学研究室)。動物病院を経て、アニコム損害保険(株)に勤務。現在もアニコムグループの動物病院で臨床に携わる。

取材・文/赤坂麻実

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