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《日本の伝統食に危機!?》「そば」に指摘される健康リスク 中国産そば粉の懸念点、“安いそば”はそば粉より小麦粉の割合が多いケースも 

そば
「そば」に指摘される健康リスクとは?(写真/PIXTA)
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「そば」が広まったのは江戸時代初期。おいしく手軽なだけでなく、小麦が取れない江戸周辺でもよく育ち、白米食中心だった人々を脚気から守った、ビタミン豊富な“健康食”だった。以来400年以上、私たち日本人の食を支え続けているはずのそばにいま、恐ろしい変化が起きている。

“健康食”として注目を浴びている「そば」

全国各地で35℃を超える猛暑日が増え、今年もいよいよ夏本番。食欲も失せるほど暑い夏には、つくるのも食べるのもサッと済ませられる冷たい「そば」を選ぶ人は多いだろう。夏に限らず「年越しそば」や「引っ越しそば」があるように、そばが古くから日本文化に根づいた伝統食であることは間違いない。しかも近年は“健康食”としても注目を浴びている。

都内在住のAさん(55才)が語る。

「そばは米やうどんよりもヘルシーだと聞いてから、積極的に食べるようにしています。乾麺をゆでてざるそばやかけそばを食べるのはもちろん、飲食店でもよく注文します。ついついカップ麺を食べる日も、そばにするだけで罪悪感が減るような気がするんです」

一見すると非の打ち所がない「最強食材」のように思えるが、実は危険がひそんでいることを、ご存じだろうか――。

日本のそば粉は8割が「輸入品」

そもそも、いま日本で消費されているそば粉は、ほとんどが輸入品。実は平成以降、そば粉の国内自給率はわずか2割程度という低い水準で推移している。

その原因の一端について、東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授の鈴木宣弘さんが指摘する。

「これまでは、水田で稲の転作としてそばを栽培すると交付金が支給されていました。それが2022年度からは、5年に一度は水田に水を張らないと、交付金が出ないことになったのです。植物としてのそばは水に弱く、年に一度でも水を張るとつくることができないため、この政策変更によってそばの作付けをあきらめる農家が増え、自給率向上の可能性はさらに遠のきました」

コロナ禍と長引くウクライナ戦争の影響で輸入そば粉の値段が高騰し、相対的に国産そば粉の割合が増えてきているという見方もあるが、そう楽観視はできないと語るのは、食の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行さんだ。

「今後は輸入も徐々に元に戻ると考えられるため、そば粉の自給率の低さは引き続き、予断を許さない状態だと言えます」

事実、主たるそばの産地である北海道や東北では昨年の猛暑の影響を受け不作が続く。昨年同様“災害級の暑さ”になるとみられる今年、収穫量がさらに減る可能性は少なくない。

輸入そば粉は「アメリカ産と中国産」が6割

2023年の玄そば輸入通関実績 出典/財務省関税局
2023年の玄そば輸入通関実績 出典/財務省関税局
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中国産のそば粉、さまざまな健康上の懸念点

そうなれば当然、いま以上に輸入に頼らざるを得なくなる。だが輸入品にはリスクが伴う。現在、主な相手国はアメリカ、中国、ロシアだが、とりわけ中国産のそば粉にはさまざまな健康上の懸念点が指摘される。最たる例が「カビ毒」だ。

「2017年、中国産のそば粉から、強い発がん性が指摘されるカビ毒の『アフラトキシン』が検出された事例があります。アフラトキシンは“自然界最強の発がん性物質”とも称されるほど毒性が強い。

カビの生息には熱帯地方が適しているとされますが、地球温暖化によって他国では汚染が広がり、それがそば粉に混入したと考えられます」(小倉さん)

アフラトキシンの毒性は加熱しても失われず、内閣府の食品安全委員会も「遺伝毒性が強い」として警告している。遺伝毒性とは、DNAに直接損傷を与えて細胞の異常増殖やがん化を引き起こすことを指す。

輸入そば粉に人体に有害な「鉛」が含まれている可能性を指摘するのは、消費者問題研究所代表の垣田達哉さんだ。

「実際、中国国内で生産・販売されているそば粉からは2017年に基準値を上回る量の鉛が検出され、食品当局が回収する騒動になりました。鉛は国際的なリスク評価機関では“ごく少量でも、摂取すれば子供の知能や成人の血圧に悪影響を与える”とされており、こうした危険なそば粉が日本に紛れ込むことも想定外ではありません」

さらに中国産のそば粉には「殺鼠剤」や「防虫剤」といった、人工的な有害物質が含まれている可能性も否定できない。

「そばはネズミの大好物。そばの保管場所にネズミが入り込めば売り物にならないので、中国では殺鼠剤で侵入を防いでいます。実際に中国産のそば粉から殺鼠剤や殺虫剤の成分が検出された例も報告されています」(小倉さん・以下同)

殺鼠剤の主な成分である「ワルファリン」は脳梗塞などを防ぐ医薬品の有効成分としても知られるが、肝機能や呼吸器、ホルモンなどへの副作用がある。そもそも、同じ哺乳類であるネズミを殺す薬剤を多量に摂取すれば人体にとっても有害なことは、容易に想像がつくだろう。

「殺鼠剤が問題視されるようになったのは、以前は殻つきの『玄そば』の状態で輸入していたのを、コスト削減のために中国国内で殻を除去した『抜き実』のそばの実を輸入するようになったから。

殻に殺鼠剤が付着していてもその後日本で製粉すれば有害物質は取り除くことができますが、抜き実の状態で薬剤がついていれば、そのまま製粉することになってしまいます」

安全性よりも合理性を優先した結果、有害物質ごと日本人の食卓にのぼる危機と隣り合わせになっているのが現状なのだ。

左から、殻つきの「玄そば」、製粉した「そば粉」、殻を取り除いた「抜き実」(写真/PIXTA)
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安いそばは実質「色つきうどん」

有害物質が含まれている可能性のあるそばを避けるには、国産を選ぶ以外に方法はない。しかし、そこには「食品表示」という新たなワナがひそんでいる。市販されている乾麺のパッケージを見ると「そば(国内製造)」と表記されているものが多いが、これは「日本で栽培されたそば」を指しているわけではない。市販のそばは多くが「そば粉と小麦粉をまぜたもの」であるため、中国産のそば粉を使っていても、小麦粉とまぜて製麺する工程が日本国内で行われていれば「国内製造」と書くことができるのだ。

さらに、食品表示からはほかにも驚くべきカラクリが見えてくる。

「『二八そば』が『小麦粉2割、そば粉8割』でつくられているように、そばは舌触りやのどごしをよくするためのつなぎとして小麦粉が使われている場合があります。

問題は、そば粉よりも小麦粉の割合の方が多いそばが売られていること。原材料表示は重量の大きい順に書かれるため、〈そば粉、小麦粉〉の順であればそば粉の方が多いか、5割ずつですが、〈小麦粉、そば粉〉なら小麦粉の方が多いということになります」(垣田さん・以下同)

そば粉の割合は「最低30%以上」と法律で定められているため、小麦粉の方が先に書かれていてかつ明確に割合が表記されていなければ、そば粉3割、小麦粉7割と、そばというよりうどんやそうめんに近い代物である可能性が高いのだ。

「この“30%ルール”では、そば粉が30%未満の場合、容器包装に配合割合を表示しなければなりません。しかし、飲食店で提供されるそばは、消費者が表示を確認することができません。安価な飲食店や立ち食いそば店では、小麦粉が9割を占める“にせそば”かもしれないのです」

飲食店はおろかカップ麺に至っては、割合どころか小麦粉やそば粉の生産地すら表示されていないケースがほとんど。ワンコインの立ち食いそばやカップそばなどが100%外国産のものであっても、消費者は見極めることはできないのだ。

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