健康・医療

人生100年時代に「ぴんぴんころり」は難しい?在宅ホスピス医が語る「幸せな最期」につながる「我慢しない」生き方

袈裟を着た男性
在宅ホスピス医で僧侶の小笠原文雄さんが「我慢しない」生き方について指南
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ぴんぴんと生き、病気になることなくころりと亡くなる「ぴんぴんころり」を理想の生き方と考えている人は多くいるだろう。しかし、人生100年時代とも言われる今、病気にならずにころりと亡くなるのは難しくなっている。今の時代の「ぴんぴんころり」とはどういう生き方なのか。『大往生のコツ ほどよくわがままに生きる』(アスコム)を上梓した在宅ホスピス医で僧侶の小笠原文雄さんに、人生100年時代の幸せな「ぴんぴんころり」について教えてもらった。

かつてのイメージの「ぴんぴんころり」は難しい

「ぴんぴんころり」と聞くと、健康でぴんぴんと生活し、薬を飲んだり、病気になったりすることなく、ころりと死ぬことをイメージする人は多いのではないだろうか。しかし、こうした「ぴんぴんころり」は、今ほど医療技術が発達しておらず、突然死が少なくなかったころのものだ。

「突然死が減り、日本人の平均寿命が延びたことで、多くの人がゆっくりと頭も体も弱っていきます。そして、最終的には誰かの手を借りて生活しながら、死を迎えます。衰えることも病気になることも自然の摂理で、人生の一部です」(小笠原さん・以下同)

人生100年時代の「ぴんぴんころり」は「幸せな最期」

人生100年ともいわれる今の時代の「ぴんぴんころり」は、病気にならずに亡くなることではない。病気があっても、亡くなる直前までぴんぴんと元気に自分らしく暮らし、苦しむことなくころりと亡くなることが「幸せな最期」と呼ぶことができるだろう。

運動をする夫婦
亡くなる直前まで自分らしく生きるのが現代の「ぴんぴんころり」(Ph/photoAC)
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「90歳、100歳まで生きることが珍しくない現代では、人間は病気をするのが当たり前。病気を退けようとして、『~してはならない』『~すべきだ』と自分を縛りつけると、ストレスがたまります」

病気になっても自分らしい生き方はできる

病気になってしまったら、自分らしくぴんぴんと暮らすことも、苦しむことなくころりと亡くなることもできないのではと思うかもしれないが、「寝たきりになったら、人生はおしまい」というわけではないと小笠原さんは言う。緩和ケアの技術が進んでいるため、がんの末期でも痛みに苦しまず、家族にも迷惑をかけずに、住み慣れた家で最期を迎えられるようになっている。

「健康でも病気でも希望を持って、笑って生きて笑って死ねる。今は、そんな時代なのです」

自分らしく生きるためには「我慢をしない」

自分らしくぴんぴんと生きるために大切なのは、我慢をしないことだと小笠原さんは話す。年を取ると、健康のために好きな食べ物やお酒を控える人も増えるが、こうした我慢は行き過ぎると逆効果になってしまうためだ。

「日常生活で我慢することが増えると、かえってストレスがたまり健康を害してしまいます」

ストレスがたまると不調が出やすくなる

ストレスがたまると交感神経が優位になり、血管は収縮して血液の通り道が狭くなる。その結果、全身の血流が悪くなり、体のあちこちに不調が出やすくなってしまう。さらに、ストレスによって交感神経が興奮すると血液も固まりやすくなるため、特に心筋梗塞や脳梗塞など血管の中で血が固まる病気の人は注意が必要だ。

「私は、ご高齢の方は、我慢をしないほうが笑顔で長生きできると思うようになりました。これまで診察してきた患者さんでも、我慢をしないことで元気を取り戻した方がたくさんいます」

無理な食事制限や運動は不要

小笠原さん自身も、正しい栄養バランスを守った食事をしているわけではなく、食べ過ぎたら翌日は控えるようにする程度だと言う。

栄養バランスを意識しすぎると、食べたいものや好きな物を我慢しなければならず、ストレスの原因となるためだ。運動に関しても、ウォーキングや筋力トレーニングなどはしていないそうだ。

和食
無理な食事制限や運動は逆効果に(Ph/photoAC)
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「運動も、本人が好きなら続ければ効果がありますが、あまり体を動かすのが好きではないのに、無理に運動をするとかえってストレスを増やします」

一番若い「今」を楽しむのが大切

我慢をしないために意識しておくべきことは、これからの人生で「今」が一番若いということだ。一番若い「今」、好きなものを食べて、やりたいことを思う存分やり、毎日笑って過ごすことで、免疫細胞が活性化し、免疫力が上がっていくという。

「世間体や家族の都合よりも自分の本心を優先させるほうが、心も体も元気になり、結果としてみんなが『よかった』と思うことが多いのです」

自宅にいたいなら我慢せず在宅医療を選んでいい

病気になった場合も、自宅で過ごしたいと思うならば、我慢せずに在宅医療を選ぶことを小笠原さんはすすめている。病院は病気と闘う場所であり、医師や看護師には緊張感があるため、患者にとってストレスがたまりやすい場所でもある。

在宅医療のイメージ写真
家で過ごしたい場合は我慢せず在宅医療の選択を(Ph/photoAC)
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「このような空間にいることに疲れたのならば、病院から離れて、自分の家で過ごしましょう」

介護のために家族が我慢する必要もない

在宅医療を選ぶと家族に迷惑がかかる、と気にする人もいるが、一人暮らしの場合でも、同居の場合でも、家族に迷惑をかけずに自宅で過ごすことは可能だ。日本には介護保険制度があり、介護ヘルパーや訪問入浴、デイサービスなど、介護のプロに少ない負担で身体的なケアを頼むことができるためだ。

介護士と高齢者
介護はプロに任せていい(Ph/photoAC)
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「たとえ寝たきりになっても介護のプロに任せれば、身体的なケアはほとんど行ってくれます。ですから、笑顔で、安心して家で過ごしてください」

自分の家族や親が在宅医療を選んだ場合も同様で、介護のために無理して仕事を辞めたり、何かを我慢したりする必要はない。介護保険なども活用し、それぞれが我慢することなく自分らしく生きることが、人生100年時代の「ぴんぴんころり」のために大切なのだ。

◆教えてくれたのは:在宅ホスピス医、僧侶・小笠原文雄さん

おがさわら・ぶんゆう。医学博士。浄土真宗大谷派聖徳山伝法寺住職。日本在宅ホスピス協会会長。医療法人聖徳会 小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック院長。名古屋大学医学部卒業後、同医学部附属病院第二内科を経て小笠原内科を開院。医師として約2500人、僧侶として約500人の死を見つめる。著書に『大往生のコツ ほどよくわがままに生きる』(アスコム)など。https://ogasawaraclinic.or.jp/staff

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