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【大塚寧々 ネネノクラシ#77】映画撮影で考えた相続問題「誰もが揉めたくないのに、なぜか揉める事になってしまう悲しさ」

寧々さんが考える「これから」(Ph/中野修也(TRON))
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女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第77回は、寧々さんが考える「これから」について。

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最近、学生時代の友達と会っていても、昔は話さなかったような自分の定年、老後や、親の介護の事、相続の話題が持ち上がる事が増えてきた。

話を聞いていると、色々大変そうだ。飲みながら「ええ~!」「嘘~!」「それは大変だわ…」などと大騒ぎだ。話は尽きずに私たちは延々喋っている! 時に大笑いしながら。時に愚痴りながら。

そしてビール片手に50代半ばの私達はため息をついたり。最後は「まあしょうがないよねえ~」とか「まあいいかあ~」となる。この「まあいいかあ~」というゆるい感じが、私は実はとっても大切だと思っている。そして気兼ねなく話せる友達は本当にありがたい。

相続は争続!

そういえば、『ソーゾク』という映画を先日まで撮影していた。藤村磨実也監督が脚本も書いていらっしゃるのだが、この本がとても面白かった。相続というと何だか重くて大変そうなイメージだが、この映画はごくごく普通の家庭の相続だ。両親も兄も亡くなり、残された三人姉弟が繰り広げるドタバタ劇。そこに亡くなった兄の嫁も、弟の嫁も加わり事態はどんどんややこしくなっていく。時には女同士が結託して味方になったり、敵になったり、大変だ! 悲喜交々だ。

相続を巡って騒動が…(Ph/大塚寧々)
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カットがかかる度に役者陣は皆「こわ~い!」と言って笑い合う。男性陣は苦笑いしている。同世代の役者さん達とお芝居出来る事も楽しく皆ずっと喋っていた。このドタバタ感が、面白く描かれていてぐんぐん世界に引き込まれる。監督はいつも穏やかに、海のように広い心でずっと見守ってくださっていた。セリフにもあるのだが、お金持ちはしっかり対策しているので普通の家庭が揉めるらしい。相続は争族!

誰もが揉めたくないのに、なぜか揉める事になってしまう悲しさ。単純に平等に分ければ揉めないのではないかと思うが、なかなかそうはいかない切なさ。皆ごくごく普通の人で、良心もあれば優しさもある。それでも相続という事態にあれこれ振り回される。ちょっとした欲や価値観の違いが、溝を深めていく。

姉弟皆が仲良くしたいと思っているのに、なぜかそうなってくれない状況。旅立った人も残された人も胸中様々な思いがあるだろう。

人生百年時代と言われているようだが、そう考えると私もまだ50代半ば過ぎ。時々先の事を考える。義父や母を見ていても、体力的にはもちろんきつそうな時もあるが、好奇心を忘れず楽しんでいるように見える。とにかく健康で、たくさん笑い、周りの人も笑顔で溢れているのがいいなあ~。穏やかに穏やかにと思う今日この頃です。

◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)

1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。

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