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《知らないと受け取れない社会保険&公的扶助》「雇用保険」「生活保護」など生活が苦しいときのための3制度

「雇用保険」
「雇用保険」「生活保護」など生活が苦しいときのための3制度を紹介(Ph/イメージマート)
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物価の上昇が止まらない昨今、定年退職などの“老後”が視野に入ってくる50代以降は特に不安が尽きないだろう。そこで頼りたいのが“社会保障”。ほとんどが申告制なので、申告機会を逸して損しないよう仕組みや申告方法を知り、利用できる制度はもれなく活用したい。今回は、生活が苦しいときのための「社会保険&公的扶助」の3制度を紹介する。

【社会保険・公的扶助】生活が苦しいときのための3制度

失業しても社会保障を活用すれば、再就職までの生活を支援してもらえる。ただし、手続きのタイミングが重要だ。

【1】再就職後の手当も出る「雇用保険」

一定期間雇用保険に加入していて、積極的に求職活動を行うなどの条件を満たしていれば、離職後の生活の保障や再就職支援として次の手当が活用できる。

・基本手当(失業手当)

「雇用保険への加入期間に応じて90~360日分もらえます。日額は離職時の年齢や雇用保険の加入期間などによって異なります」(社会保険労務士の井戸美枝さん・以下同)。

退職理由が、自分の都合なのか会社の都合かによっても支給開始日が異なる。

・再就職手当

離職後すぐ就職すると基本手当は受け取れないが、再就職手当が受給できる。

「正社員や契約社員などとして再就職した場合に支給されます。基本手当の残りの給付日数に応じて、その60~70%が支給されます」

ハローワーク
ハローワークで申請を(Ph/イメージマート)
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・就業手当

再就職を決めた企業に常用雇用以外の形(1年を超えない臨時契約やアルバイト、パート、業務委託など)で雇われた場合に支払われる。
この場合、基本手当の残りの給付日数の30%の金額が支給される(失業給付の残りが3分の1以上などの条件あり)。

・離職後、すぐにやらないと大変なことに!

【1】失業したら基本手当を受給するための手続きをする(居住地管轄のハローワークへ)

【2】公的医療保険の手続きをする(健康保険の任意手続きは離職前の会社へ。国民健康保険の加入は居住地の市区町村の国民健康保険課へ。配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の会社に問い合わせる)

【3】年金の手続きをする (種別変更は居住地の市区町村の国民年金課、年金事務所などへ。配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の会社に問い合わせる)

雇用保険の手続きはできるだけ早く行うこと。国民健康保険や国民年金の切り替えは、退職日の翌日から14日以内に、健康保険の任意手続きをする場合は、退職日の翌日から20日以内に。

離職後、すぐにやらないと大変なことに!
離職後、すぐにやらないと大変なことに!
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【2】最低限の生活を支援「生活保護」

世帯の収入が最低生活費(13万円)より少ない世帯の場合、申請して認められると左表の扶助などが受けられる。受給者は収入状況を毎月申告。就労が見込める人にはケースワーカーからの指導も行われる。

生活保護の支給内容

生活保護の支給内容
生活保護の支給内容
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【3】滞納を避けるための制度「減免・免除・納付猶予」

退職や営業不振、倒産、災害などによって、国民年金保険料の納付が困難な場合、申請すれば、納付額の一部や全部が免除される。納付額の4分の1~全額を免除したり、猶予期間を設けたりする仕組み。国民健康保険料も窓口で相談してみよう。

「失業後、国民健康保険や国民年金に切り替えずに放置したり、滞納したりしていると、いざというとき、希望する社会保障が受けられなくなります。たとえ短期でも、国民健康保険に未加入でいる、なんてことのないようにしましょう。その間に大きなけがや障害を負ってしまったら、保障を受けられなくなってしまいます。また、将来の年金受給額が減らないよう、免除や減免期間をなるべく短くすることも大切です」

キャリア支援を活用しよう!

行政は失業者や在職者などに対し、さまざまな知識や技術を身につけられるようキャリア支援も行う。自営業者が利用できる支援もあるので確認してみよう。

・公共職業訓練

求職者が基本手当をもらいながら、再就職に必要な職業訓練を無料で受けられる。

職業訓練
公共職業訓練(Ph/イメージマート)
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・求職者支援制度

雇用保険に加入していない自営業者でも受けられる。無料で職業支援や求職サポートなどが受けられるほか、ハローワークで職業訓練のサポートが必要と認められるなどの条件を満たせば、月10万円の生活支援も受けられる。

・教育訓練給付金

働く人たちの能力開発やキャリア形成を支援して、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的とした制度。

「厚生労働大臣が指定する学校や講座に通って修了すると、受講料の2~7割を負担してもらえます」

◆教えてくれたのは:社会保険労務士・井戸美枝さん

ファイナンシャルプランナー、国民年金基金連合会理事。テレビ、ラジオ、講演会などを通じて経済問題や年金・社会保障問題について解説。近著に『社会保障で得するお金は7日間でわかります。』(Gakken)など。

取材・文/上村久留美

※女性セブン2024年8月22・29日号

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