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【散歩中に注意】犬や猫の飼い主が知っておきたい”食べてはいけない草“を獣医師が解説

猫、犬
犬や猫の飼い主が知っておきたい”食べてはいけない草“とは?(写真/イメージマート)
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犬や猫にとって、“草”は食べたほうがいいものなのか。愛犬が散歩中に道端の草をムシャムシャ食べ始めたり、SNSを見ていると「猫草」栽培キットの広告が流れてきたり、ちょっとしたきっかけで気になっている人がいるかもしれない。犬や猫が草を欲する理由って? そもそも草を食べて健康に害はない? 気になる疑問を獣医師の鳥海早紀さんにぶつけてみた。

現時点で草は「食べてもいい」の域にとどまる

犬や猫はなぜ草を食べるのか。実はこの疑問に対して、“正解”はまだないようだ。仮説ならたくさんあって、例えば草をバリバリムシャムシャと咀嚼することでストレスを解消している、あるいは食物繊維を取り入れると便通がよくなることを本能的に悟っている、はたまた犬の散歩中の場合は文字通りに“道草”を食ってまだ帰りたくないアピールをしている、といったものがある。

犬や猫によっては、明らかに好きこのんでよく食べる草の種類が決まっている子もいるので、“マメ科やイネ科の植物を美味しく食べている説”などはかなり広まっている。

しかし、どの説も研究途上で、科学的に証明されたものはない。鳥海さんは「どれも現時点では推論なので、このテーマについて動物医療的に話せることは少ないですね。犬や猫の食性から考えると、草をしいて与える必要はありません。けれど、逆に食べてお腹を壊したりしないなら、少量与えて悪いものでもないでしょう。愛犬、愛猫が喜ぶなら、市販の栽培キットなどを用いて草を供給してあげる分には、犬や猫の健康上、問題はないはずです」と話す。

犬や猫が草を食べるポジティブな理由が立証されない一方、ストレスを抱えているためといったネガティブな説も立証されていないので、そういう意味で飼い主さんがあまり気をもむ必要もなさそうだ。

ただし、鳥海さんは「食べてはいけない草が厳然とありますから、その点は気を付けていただきたいです」と注意を促す。

実は多い、犬や猫が食べてはいけない植物

「食べてはいけない草」とは、食べると中毒を引き起こすなど健康被害が出る植物のことだ。

「観葉植物の球根を食べて中毒を起こして動物病院に運び込まれてくる犬や猫は結構いるので、私たちも引き続き注意喚起していかなければと思っているところです」(鳥海さん・以下同)

猫
(写真/イメージマート)
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犬や猫にとって危険な植物の代表格といえば、タマネギ中毒でおなじみ、ネギ科の植物。にんにくやニラなども含めて、ネギ科の植物は犬や猫が食べると、有機チオ硫酸化合物が赤血球を傷つけ、破壊する。赤血球の破壊(溶血)が大量に起こると貧血になって、さまざまな症状を引き起こす。

「身近な植物にも危険なものは多々あります。梅雨どきや夏場には、ペットをアジサイやアサガオと一緒に収めた写真がSNSに投稿されていたりしますが、ちょっとヒヤヒヤしますね。犬や猫がアジサイのつぼみにあたると痙攣(けいれん)、昏睡といった重い症状が出ることもあります。また、アサガオの種は嘔吐や下痢のほか、幻覚、血圧低下、瞳孔散大などの症状を引き起こす可能性があります」

犬とあじさい
アジサイやアサガオも危険(写真/イメージマート)
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他にも、例えばポインセチアやパンジー、チューリップ、シクラメンなど、観賞用として人気の植物も、犬や猫が誤食したときの健康被害は深刻だ。

「毒性を持った植物って、調べてみると実は驚くほど多いんです。有毒植物リストを全て頭に入れるのはなかなか大変なので、観葉植物や家庭菜園など、自宅に植物を持ち込もうと思ったときに調べてみるのが現実的かもしれません。その植物を愛犬や愛猫が誤食した場合のリスクを調べて、リスクが高ければ持ち込まない、持ち込むならその植物とペットは物理的に隔てるなどの対策をしましょう」

散歩コースに関しても同様に、犬が触れられる範囲にある植物を把握しておいて、危険なものがあれば、リードを短く持って注意を払う、あるいはその場所を避けるコースに変更するといった工夫で、誤食の可能性を下げられそう。ちなみに、「Googleレンズ」や「PictureThis」など、撮った写真から植物の種類を推定する無料アプリもある。

除草剤も怖い、誤食・誤飲はすぐ病院へ

植物そのものが持つ毒性のほかに、植物に与えられている肥料や、いわゆる雑草などに散布されている除草剤も、犬や猫が口にすると、中毒症状を引き起こすので、誤食・誤飲をしないように気を付けたいところだ。

犬
除草剤も怖い、誤食・誤飲はすぐ病院へ(写真/イメージマート)
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「概して、肥料は毒性が強くないので、大量に摂取しなければ深刻な事態にはならないと思います。一方で、除草剤のかかった草を食べたりすると、下痢や嘔吐、血便、痙攣など、成分に応じてさまざまな症状を呈します。直接、草を食べなくても、草の上を歩いた後にその足を舐めたりして中毒になることもあります」

毒性のある植物や除草剤などを誤って口にした場合、なるべく早く動物病院で診てもらうことが大切だ。時間が経つと、中毒成分が体内に吸収されて、重症化する可能性がある。

「病院では胃洗浄や解毒剤の投与、点滴などの中から有効な治療を行います。何を食べた・飲んだせいで中毒を起こしたのか、飼い主さんが見ていて分かっているときは、できればその現物を病院へ持って行って、どれぐらい前に、どれぐらいの量を口にしたのかなど説明できると、診断にかかる時間が短くなって早く治療が始められる可能性が高まります」

草は、食べて害がないと言い切れるもののほうが少ないという。愛犬や愛猫が草を食べたがるなら飼い主さんが安心・安全なものを選んで与え、ほかの草を勝手に食べたりしないように目を配ってあげたい。

◆教えてくれたのは:獣医師・鳥海早紀さん

鳥海早紀さん
鳥海早紀さん
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獣医師。山口大学卒業(獣医解剖学研究室)。一般診療で経験を積み、院長も経験。現在は獣医麻酔科担当としてアニコムグループの動物病院で手術麻酔を担当している。

取材・文/赤坂麻実

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