健康・医療

「貧乏ゆすり」「オナラ頻発」「爪がデコボコ」…気になる“謎の症状”の解決法を人気鍼灸師・若林理砂さんが東洋医学を基に伝授

座ってる女性
「貧乏ゆすり」「オナラ頻発」「爪がデコボコ」…気になる“謎の症状”の解決法とは?(写真/イメージマート)
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ようやく秋めいてきたと思いきや、突如暑くなったりと相変わらずの気候不順。体の不調を訴える人が増えている。病院に行くほどの症状ではないものの、何とかしたい体にまつわる悩み、東洋医学なら解決できるかも――。ということで、『謎の症状』の著書もある予約のとれない人気鍼灸師・若林理砂さんに、中国4000年の歴史による医学古典を基に解説してもらうことに。いまの時期に多い悩みからよくある悩みまで解決法を紹介する。

謎の動きも美容の悩みも「巡り」で改善する

「東洋医学では、気・血・水という観念があり、いずれかに過不足が生じて調和が崩れたり、巡りが滞ると心身のバランスが崩れて不調や病気になると考えられています」と説明する鍼灸師の若林さん。謎の動きも美容の悩みも「巡り」で改善するという。

単なる癖か、やっかいな体質かと諦めていた不思議な謎の症状の大本に隠れている気血の滞りを解消すれば、気にならなくなる。

次からは、よくある悩みを解決法とともに紹介する。

【悩み1】貧乏ゆすりが止まりません

「何度注意しても夫(68才)の貧乏ゆすりが治らず、イライラ、ムカムカします。貧乏ゆすりはエコノミークラス症候群の予防にいいと聞きましたが、止めない方がいいのでしょうか?」(主婦・60才)

【回答1】「身柱」を刺激して抑肝散で整えましょう

「貧乏ゆすりの小刻みな動きには、血流改善効果や変形性股関節症の痛みの軽減、軟骨の再生などの効果が報告されており、運動療法のひとつになっています。とはいえ、本人にはよくても、近くにいる人をイラつかせてしまうことはありますね。

貧乏ゆすりが出る理由はよくわかっていませんが、ストレスがかかっているときに出やすいため、メンタルストレスを貧乏ゆすりという身体動作に変換することで、解消していると考えられています。

東洋医学的には、漢方薬の抑肝散が処方されることが多いです。この薬は小児のひきつけや疳の虫(乳児の夜泣き、かんしゃく)に使われるもの。大人の不眠や神経症にも効果が期待できます。

「身柱」を刺激して抑肝散で整える
「身柱」を刺激して抑肝散で整える(イラスト/いしやま暁子)
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鍼灸で同様の効果を得たいなら、第3・4胸椎棘突起間にある『身柱』という経穴(ツボ)が有効です。ここを硬めのヘアブラシで叩いたり、爪楊枝鍼(20本ほどの爪楊枝を輪ゴムで束ねたもの)で小刻みに5回ほど刺激するといいでしょう」(若林さん・以下同)

【悩み2】オナラが頻発して恥ずかしい

「1日に何度もオナラが出ます。においはさほどありませんが(自分調べ)、会議中にも出るので困っています。減らす方法はありますか?」(公務員・58才)

【回答2】くさくないオナラの原因は3つ

「オナラがくさい場合は、たんぱく質や脂質の摂りすぎで腸内環境が悪化している状態。発酵食品などにより腸内環境を改善すればおさまります。

くさくないオナラは、次の3つを控えましょう。

1つ目は、いも類やごぼうなど繊維質の多いもの。腸内で分解される際にガスが発生しているもので、健康上の問題はありません。

2つ目は、知らない間に吸い込んでいる空気。ストレスがかかると空気をたくさん吸い込みがちなので、ストレスがかからないようにしましょう。

3つ目は、炭酸飲料や炭酸水。これをよく飲む習慣により、炭酸ガスが腸にたまります。私は炭酸水が原因でオナラがよく出ていましたが、飲む量を減らしたところ、本当に減りました。

東洋医学では便通とガス腹はメンタルに関連すると考えられており、中国の医学古典『傷寒論』には、メンタルに異常をきたした人に『小承気湯』という下剤をのませて便やガスを出させるという記述があります」

【悩み3】体がビクッとなって目が覚めます

「ウトウトし始めると、体がビクッと動いて目が覚めることがあります。観劇中や電車で寝てしまったときなど、周囲の人がびっくりするくらい動いてしまいます。どうしたらビクッとしなくなりますか?」(会社員・50才)

【回答3】胃腸の疲れを改善すると予防につながる

「これは、眠りに落ちる寸前のところで意識が上がってきたときに発する動きなので、そのままスヤッと眠りに入れば問題ありません。

寝てはいけない場所で寝てしまいそうになってビクッと起きてしまう場合は、東洋医学的には、食後にすごく眠くなる『脾虚』体質かもしれません。漢方薬なら『六君子湯』などで根本から改善をかけていくといいでしょう」

【悩み4】相当踏ん張らないと便が出ません

「毎朝ヨーグルトとバナナを食べ、食物繊維が豊富な食事を心がけていますが、便秘が改善せず、かなり踏ん張ってもカチコチなコロコロうんちしか出てきません」(パート・49才)

【回答4】お腹を温め、胃腸の動きを活発にする

「東洋医学的に、便秘には2種類あると考えられています。腸に熱がたまって起こる『熱の便秘』は、食物繊維が豊富な野菜や、お腹が冷えるバナナなどを食べると改善します。

一方、お腹が冷えて起こる『冷えの便秘』は、西洋医学でいう『弛緩性便秘』のことですが、腸の蠕動運動の低下により便が硬くなり、詰まったようになる状態です。

このタイプは便秘によいといわれるものを食べてもあまり効果がなく、かえってお腹が張ったり、ガスが多くなることもあります。

ペットボトル温灸
ペットボトル温灸(イラスト/いしやま暁子)
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改善するには、朝食に温かいものを食べ、胃腸の働きを活発にすること。ペットボトルにお湯を入れてツボを刺激する『ペットボトル温灸』もおすすめです。熱いお湯と水を入れたペットボトル(別掲イラスト参照)をみぞおちとおへその中間あたりにある『中脘』、おへそを中心に指3本分の両側にある『天枢』、ひざ下ですねの外側にある『足三里』という3つのツボにあて、熱いと感じたら離す。これを3~5回繰り返してみましょう」

【悩み5】加齢のせいか、爪表面がデコボコに

「爪が波打ったようにへこんでいます。貧血が原因だと聞いたことがありますが、鉄剤をのんでもあまり改善しません」(パート・59才)

【回答5】運動&糖質オフで改善します

運動&糖質オフで改善
運動&糖質オフで改善(イラスト/いしやま暁子)
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「鉄欠乏性貧血によって起きる症状です。鉄剤の処方に効果が感じられない場合、臨床経験上、甘いもの好きで糖質過多の食事を摂っている傾向にあります。

運動をして、甘いものを控え、バランスのよい食事を心掛けると、鉄剤の効きがよくなり、貧血も爪も回善していきます」

【悩み6】足の指やかかとがガサガサです

「今夏は靴下を履かずに素足でサンダルを履く機会が多かったからなのか、足の指が白い粉吹き状態に。かかともガサガサしています。これも漢方薬で治りますか?」(パート・56才)

【回答6】“甘いもの断ち”を1か月続けましょう

「素足やサンダルと、この足の症状はまったく関係ありません。かかとがひび割れるほどガサガサしている場合は、生活の乱れが考えられます。かかとのひび割れが見られる患者さんに食生活を問うと、甘いものを食べる機会が増えたと答えるかたが多いんです。

糖質の摂りすぎで『脾虚』という消化器系の調子が悪く、食物をエネルギーにうまく変えづらい状態になっているのです。

そこで、1か月、甘いものを控えると潤いが戻り、改善していきます。これに運動が加われば回復スピードが早まります。

季節を問わず、足の裏がいつもささくれ立ち、ストッキングが伝線しやすい人も、この方法が有効です」

【悩み7】足裏がほてって眠れません

「体温が高い方だからか、布団に入ると足裏が急に熱くなります。足先を布団から出して冷たいところに押しあてたり、保冷剤で冷やさないと眠れないことがあります」(主婦・48才)

【回答7】体がかなり疲労しているサイン。気を補って!

「これは『五心煩熱』といって、体内の気血が不足している状態で発生する症状です。自分はかなり弱っていると気づかなくてはいけません。

『気虚』がかなり進んでいるので、食生活を整えて睡眠によって養生を重ねると解消します。

女性は更年期の月経が止まる時期に陰陽のバランスが崩れて熱暴走が起きやすくなります。寝ている間に足がほてったり、急にのぼせて顔に汗をかくなど、ホットフラッシュの1つの形として発生することがあるのです。

しかし、閉経後も症状が続くようでしたら、自律神経失調症に近い状態になっていると考えられます。

この症状の改善は東洋医学の得意分野なので、未病のうちに東洋医学外来や漢方薬局の薬剤師などに相談してみてください」

【悩み8】ほくろが多く、ビヨーンと伸びたイボも気になります

「首のあたりに小さな、指でつまむと取れそうな細長いボツボツができました。取る方法はありますか?」(無職・67才)

【回答8】漢方薬のヨクイニンに効果があります

漢方薬のヨクイニンに効果
漢方薬のヨクイニンに効果(イラスト/いしやま暁子)
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「これは老人性疣贅といって、若い人にもできるイボの一種です。東洋医学として最初に選択するのは、漢方薬のヨクイニンで、ハトムギの種子が原料です。一般皮膚科でも処方してくれるところが多いので、相談してみてください。

引っ張ると取れそうでも、中に毛細血管が入り込んでいるため血が出ます。昔はお灸で焼き切ることもあったようですが、ものすごく熱くて痛いのでおすすめできません」

◆教えてくれたのは:鍼灸師・若林理砂さん

鍼灸師・若林理砂さん
鍼灸師・若林理砂さん
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1976年生まれ。2004年にアシル治療室を開院。予約のとれない人気治療室となる。古武術を学び、現在の趣味はカポエイラとブラジリアン柔術。

出典:若林理砂『謎の症状 心身の不思議を東洋医学からみると?』ミシマ社,2024

取材・文/山下和恵

※女性セブン2024年10月17日号

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