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《知って備える「病気とお金」》がんになったらどれくらいお金がかかるのか? 自由診療や先進医療は100%自己負担

点滴を見上げている
「もしものとき」が来る前に対策を(Ph/photoAC)
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人生100年時代、長生きは「病気のリスク」と背中合わせだ。いまや2人に1人ががんに罹患するほか、骨粗しょう症や甲状腺障害、子宮筋腫など女性特有の病気にかかるリスクも増している。「もしものとき」がきてからではもう遅い。いったいどれだけのお金が必要になるのか、知っておこう。

乳がんは40代、子宮頸がんは20代からリスク大!

ホルモンの影響を大きく受ける女性は、加齢はもちろん、妊娠、出産、更年期、閉経など年代ごとに体の調子が変わり、かかりやすい病気も異なる。50才以降に多い骨粗しょう症は推計1280万人いる患者のうち、980万人が女性とされ、甲状腺疾患のバセドウ病は女性の方が男性より3〜5倍の発症率と、女性特有の病にかかるリスクは特に大きい。

病気の不安を描いた漫画
女性特有の病気になるリスクも大きい(イラスト/アライヨウコ)
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がん、心臓病、脳卒中といった「日本人の3大死因」の中でも、女性は特に「がん」の罹患リスクが高く、国立がん研究センターのデータによれば、20~30代のがん患者の8割は女性だ。中でも「女性特有のがん」すなわち乳がん、子宮がん、卵巣がんなどが、女性のがん患者の46%を占めている。

現在、年間約16万人もの女性が新たに乳がんや子宮がんの診断を受けており、その数は年々増えている。

年代別の「女性のがん」リスクをまとめた折れ線グラフ
「女性のがん」リスク
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もっとも患者数の多い乳がんは40代から急激にリスクが上がり、50代でピークに達する。一方で、子宮頸がんの発症リスクが高まるのは20代からだ。

がんは「治せる病気」といわれるようにはなっているものの、再発や転移のリスクは少なくなく、治療には相応の時間とお金がかかる。

「ステージⅠ」でも300万円必要

日常で不調を感じたり、健康診断で異常が見つかるなど、病気発覚のパターンは人それぞれでも、多くの人が「どうして自分が…」という絶望と不安にかられる。治療における苦痛との闘いの前に大きく立ちはだかるのが「お金の壁」だ。

生活費や子供の学費、老後資金と違って病気にかかる費用は「想定外の出費」であり、備えがないという人は少なくない。そもそも病気になった場合にどのくらいのお金がかかるか把握していない人も多いだろう。

厚生労働省の医療給付実態調査によれば、治療費は乳がんで約6万円、子宮がんは約6万4000円で、治療費と入院費を合わせると、乳がんでは60万2845円、子宮がんは64万6188円。そして、「治療・入院以外の費用」が、乳がんは5万8864円、子宮がんは3万3335円だ。自己負担額はこれらの3割になるとはいえ、実態は複雑だ。ファイナンシャルプランナーの大竹のり子さんが説明する。

「この金額はあくまでも平均値です。早期発見できてお金があまりかからない人もいれば、数百万円かかる人もいます」

札束と印鑑
病気にかかる費用は想定外の出費(Ph/photoAC)
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病気になれば負担になるのは治療や入院費用だけではない。

「入院中の食事代は1食490円で、これには公的健康保険は適用されません。差額ベッド代や入院中に着るもののレンタル代または購入費がかかります。このほか洗面具やお見舞いのお礼、家族が見舞いにくる際の交通費や病院の駐車場代も必要です。

女性が入院すると家族の外食が増えることも多くなってしまいますし、子供が小さければシッター代などがかかる場合もあります。入院する人が働いていればその分の収入減もあり、家計へのダメージは大きいでしょう」(大竹さん)

2022年の生命保険文化センターの調査では、入院1回分の治療費、食事代、差額ベッド代などを合算した自己負担総額の平均は約20万円で、1日あたり約2万1000円だ。

がんの場合では、ステージⅠ・Ⅱの場合は平均総額353万円、ステージⅢ・Ⅳだと467万円にものぼる。これだけのまとまった額を用意しておくことは決して簡単なことではなく、病気になってしまえば治療や入院で一気に出費はかさみ、たとえ数百万円の備えがあったとしても一瞬でなくなってしまう可能性も高い。

入院にかかるお金のリスト
治療や入院費用以外にもたくさんのお金が必要に
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新薬や自由診療は100%自己負担

無事退院したとしても、さらなる出費が待ち構えている可能性もある。ファイナンシャルプランナーの牧野寿和さんが指摘する。

「例えば、抗がん剤治療に伴って医療用ウィッグが必要になったり、乳がんの治療後の乳房再建や専用の下着など、別途高額な費用がかかる場合があります」

それだけのお金をかけて治療しても、再発、転移、さらなる高額医療の可能性はゼロではない。国民皆保険の日本では、医療費は基本的に3割負担で、出費が高額に及んだ場合は高額療養費制度など公的制度の活用も可能だ。

入院時にかかった自己負担額ごとの割合
入院時の自己負担額イメージ
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しかし、病気によっては制度から“漏れてしまう”ケースも少なくない。特にがんの場合は、さまざまな先進医療も次々登場しており、保険適用外のものもあるからだ。ファイナンシャルプランナーの松浦建二さんが言う。

「例えば、子宮がんへの効果が期待される医薬品の『ドスタルリマブ』を投与すると、費用は1か月で約178万円、3か月では約526万円に跳ね上がります。公的保険適用外で自己負担100%の薬の中には、ものによっては1000万~5000万円を超えるものもあるほどです」

女性がかかりやすい病気はがんだけではない。甲状腺障害や卵巣機能障害、子宮筋腫のほか、骨粗しょう症、リウマチなど、男性よりもはるかに罹患リスクの高い病気がいくつもあり、その多くが年齢を重ねるほど発症リスクも高くなる。

「自由診療も先進医療(技術料部分)も公的保険が適用されないので、100%自己負担。その金額は数十万~数千万円に及びます」(松浦さん)

一度でも病気になったら、どれだけのお金がかかるか、誰にも予測がつかないのだ。

取材/小山内麗香

※女性セブン2024年8月22・29日号