健康・医療

《薬の副作用》医師・薬剤師・看護師が本音座談会で明かす重篤な事例「鎮痛剤で転倒骨折」「抗生物質で呼吸困難」「市販の解熱鎮痛薬で腎不全」 

薬によっては副作用で体を壊す可能性がある(写真/PIXTA)
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薬がつらい症状を緩和し、病気を治してくれる頼れる存在である一方、副作用で体がボロボロになった人が少なからずいることは紛れもない事実だ。薬のエキスパートたち4人が、知っておきたい注意すべき副作用について語った。

【目次】

【座談会に参加した薬のエキスパート/A子さん(35才)・大手薬局チェーン店の薬剤師、B美さん(42才)・個人で経営しているクリニックの内科・婦人科医、C夫さん(48才)・大学病院勤務の内科医、D代さん(45才)・大学病院勤務の看護師】

ジェネリック薬品で予想していなかった副作用

患者のために薬を選び、処方し、服用の手助けをする立場は違えど薬のエキスパートである4人がまず打ち明けたのは「ジェネリック薬」に対する本音の話だ。

A子:この10月から医薬品の料金制度が変わって、患者が先発医薬品を希望する場合、ジェネリック医薬品との薬価の差額4分の1を負担する仕組みになりましたね。これによってジェネリックの処方量はどっと増えましたが正直、患者さんにとっていいことなのかわからなくて……。

B美:ジェネリックは先発薬と比較して添加物が多かったり、製造過程が簡略化されている場合があるから、アレルギー反応など、予想していなかった副作用が出るケースが少なくないですよね。

C夫:効き目も弱いことが多い。私の患者さんでもジェネリックの降圧薬がいっこうに効かなくて、体を壊す一歩手前までいった人がいました。これは薬だけでなく、処方する側の医師が、効いているかどうかしっかり見極める必要があったとも思いますが……。

整形外科で出される薬には脳や神経に作用するものが多い

A子:ジェネリックに限らず、患者さんにとって悪い影響がある可能性のある薬も手軽に出されがちです。処方箋を見てびっくりすることも多いです。

例えば「オピオイド鎮痛薬」は麻薬性の鎮痛剤だから取り扱いに注意が必要なのに、ほかの薬で代用できるような症状でも処方されているケースがある。しかしアメリカでは依存や過剰摂取による死者が多く、社会問題になっています。

副作用で認知機能に影響が出て、暴力や暴言につながることも(写真/PIXTA)
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D代:「劇薬」ともいわれていますよね。昨年、私の病院でもオピオイド鎮痛薬の副作用でよろけて転倒し、救急車で運ばれてきた70代の女性がいましたよ。大腿骨骨折の重傷でした。変形性膝関節症で処方されていたものの、以前から悪心や嘔吐、ふらつきなどの副作用があったそうです。

その患者さんは術後、リハビリ病院に転院しましたが、「歩くのが怖い」とトラウマになっていました。最近まで登山をするほど活動的で、骨折する前はよく友達と出かけていたそうですが、最終的にどうなったのか……。

A子:毎日いろんな処方箋を目にする薬剤師の立場から言わせてもらうなら、整形外科で出される薬には脳や神経に作用するものが多いので注意すべきです。例えば慢性腰痛症や変形性関節症などの疼痛(とうつう)に処方される鎮痛剤「デュロキセチン」は抗うつ剤でもあるので、精神面にも影響を及ぼす。

実際、認知機能が落ちて攻撃的になっている高齢のかたと話すと、痛み止めとして処方されたデュロキセチンが原因だと思うことがよくある。整形外科医はよかれと思って処方するんでしょうけど、薬剤師の間では“ヤバい薬”で有名です。

B美:確かに、デュロキセチンは気軽にのむべきではない薬。にもかかわらずここまで処方量が多いのは、深く考えずに出している医師がいるから。やっぱり、体を壊すような副作用の陰には医師の責任もあると言わざるを得ない。

抗生物質で「椅子を引け」という幻聴

A子:処方量が多いことで言うと、高コレステロール血症や脂質異常症(高脂血症)の治療に使う「スタチン」系の薬は、出さない日がないくらい。だけど実は怖い薬だと思っています。

D代:私も最近、健康診断でコレステロール値が高めだと指摘されたけれど、スタチン系は絶対にのみたくない。効果はあるけど、運動筋肉が破壊されて痛みが出る「横紋筋融解症」の副作用が報告されていますよね。

C夫:私の経験では横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)になるのはまれですが、足の痛みを訴える人が意外に多い。コレステロール値はある程度までなら高いほど死亡率が低いというデータもあるので、持病がない場合、無理して下げる必要はないと思っています。

B美:私の場合、身近な“怖い薬”でいちばんに思いつくのは抗生物質ですね。この前、30代の男性会社員が、顔をパンパンに腫らして、まぶたも開かないような状態で来院しました。話を聞くと、かぜ気味だったので、数か月前に奥さんがかぜで病院にかかったときに処方された抗生物質「アモキシシリン」が残っていたからそれをのんだとのこと。

明らかな薬物アレルギーです。ステロイドの点滴で症状は治まったものの、完全に腫れが引くまで3日もかかりました。

めまいを起こして倒れ、頭蓋骨を骨折する危険性も(写真/PIXTA)
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A子:そもそも薬には使用期限があるので、家に余っていた薬をのむのはよくないという話は置いても、確かに抗生物質は怖い副作用が多い。知り合いの50代の女性が抗生物質「レボフロキサシン」をのんで、呼吸困難に陥ったことがありました。発熱でクリニックを受診したら、「リンパ節炎かもしれない」と処方されて服用。すると、呼吸困難の症状が出て、それが何日も続いた。あまりにもつらかったのでクリニックを再び受診して、医師と相談して内服を中止したそうです。薬をやめてからも1週間ほどその状態が続いたので、本当に地獄だったと言っていましたね。

C夫:薬の副作用はさまざまで、医療従事者でもすべては把握できない。知人の娘は抗生物質「クラリスロマイシン」で、幻聴があったそうです。学校で「前の子の椅子を引け」という“声”が聞こえたそうで、友達が座ろうとした椅子を後ろに引いて、けがをさせてしまったらしい。

学校から呼び出しがあったそうですが、普段はどちらかと言えばおとなしくて引っこみ思案な子供がなぜそんなことを……と気が動転して知人がいろいろ調べたところ、添付文書に副作用として「妄想」「幻覚」と書かれていたのを発見したそうです。

A子:抗生物質やかぜ薬の影響でおそろしいのは、起きるリスクは低いものの、指定難病の「スティーヴンス・ジョンソン症候群」だと思います。全身に発疹やただれができて、発熱し、ひどければ命を失うこともある。

D代:私は1度だけスティーヴンス・ジョンソン症候群の患者を診たことがあります。マイコプラズマ肺炎でクラリスロマイシンをのんでいた20代の女性で、すぐに別の病院に転院しましたが、後遺症が残ったと聞きました。

B美:抗生物質に限らず、どんな薬でも薬剤アレルギーは起こりうるので、服用後の不調を甘く見ない方がいい。アナフィラキシーショックといって、全身にアレルギー反応が起きると急激な血圧低下から呼吸困難に陥って意識を失うこともありますから。

病院を受診した際に説明できるように、お薬手帳の管理はもちろんのこと、市販薬を服用したときも薬を記録しておくべきです。

解熱鎮痛薬で腎不全から透析

A子:スタチン系の薬や抗生物質と同じく、よく処方される「ロキソプロフェン」や「イブプロフェン」に代表される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs=エヌセイズ)も、血圧を上昇させる効果があるので注意が必要です。

市販薬としても販売されていますが、常用すべきではない。今後、NSAIDsの影響で高血圧の人がさらに増えるのではないかと危惧しています。

市販薬や処方薬の「ロキソプロフェン」や「イブプロフェン」は高血圧を引き起こす可能性がある(写真/イメージマート)
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C夫:しかもNSAIDsを常用すると、腎臓の血流量が減って、腎機能も低下しますよね。市販の解熱鎮痛剤を漫然と1年半のみ続けた結果、腎不全から透析が必要になったケースも知っています。

B美:ロキソプロフェンに比べて効果がマイルドな解熱鎮痛剤「アセトアミノフェン」も気をつけた方がいい。痛み止めとしてはメジャーで市販薬にも含まれる成分ですし、子供や妊婦でも使える安心感があって私もよく処方しますが、体がかゆくなってじんましんが出たことがある。

C夫:抗ヒスタミン薬の「フェキソフェナジン」も実は重篤な状態になるリスクがある。実際に私は高血圧になった患者さんを診察したことがあります。花粉症対策として市販薬をのんでいたそうですが、動悸やめまい、頭痛がひどくなって受診にいらした。そこで血圧を測ったところ、上の血圧が220mmHgもあった。命の危険があり、すぐに治療が必要なレベルです。

B美:怖いですね。ドラッグストアで重篤な副作用がありえる市販薬を気軽に買えるのも問題だと思いませんか? 若者が不安やストレスから解放されるために、かぜ薬などを大量に服薬する「オーバードーズ」が社会問題になっています。かぜ薬には覚醒剤の原料でもある「エフェドリン」など、リスクの高い成分が含まれているし、成分的に処方薬と変わらないものもある。

漢方の副作用で「間質性肺炎」が起きることも

C夫:漢方薬だって、体に優しいと思われがちだけど、絶対に安全とはいえない。かぜの症状緩和に使われる「小柴胡湯(しょうさいことう)」や「柴朴湯(さいぼくとう)」などには、肺の壁が硬化する「間質性肺炎」という副作用が起きることもある。主な症状は呼吸困難で、かぜにも似ているため、気がつかないままのみ続けて悪化させることもあります。

「漢方薬だから副作用がなくて安心」という先入観は危険(写真/PIXTA)
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B美:漢方薬でいえば、「甘草(かんぞう)」にも注意してほしい。摂取量が1日7.5~8gを超えると、むくみや脱力、しびれなどを起こす「偽アルドステロン症」になることがある。漢方薬は自己判断で2剤以上使用しないこと。複数の病院でそれぞれ処方されていて、のみすぎていることもある。

D代:ダイエットのために不必要な漢方薬をのむ人も多い。ただ、そういう人に限ってこちらの処方した薬はきちんとのんでいない。理由を聞くと「副作用が怖い」と言うんです。

C夫:気をつけるのはいいけれど過度に副作用をおそれ、必要な薬をのまないのは別の話ですよね。

A子:副作用の頻度や重症度は人それぞれだし、まれに添付文書に書かれていない副作用が起こることもある。異常があれば服用をやめて、薬剤師に相談したり、医療機関を受診してほしい。

〈エキスパートたちの経験談を参考に“正しくおそれる”ことが自分の健康を守る第一歩になる〉

独立行政法人医薬品医療機器総合機構「患者副作用報告の状況」(2023年4月1日〜2024年3月31日)をもとに本誌作成
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独立行政法人医薬品医療機器総合機構「患者副作用報告の状況」(2023年4月1日〜2024年3月31日)をもとに本誌作成
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「薬の実名」と「副作用」最新報告リスト
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※女性セブン2024年10月24・31日号

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