日常的に使っている人も多く身近なものなのに、意外と知らないコンタクトレンズのこと。ユーザーに知識を深めてもらい、よりよいコンタクトライフを送ってもらいたいと『いつも使っているコンタクトレンズのことを、あなたはほとんど知らないかもしれない』(アスコム)を上梓したのは、コンタクトレンズ会社社長の吉田忠史さん。コンタクトレンズに関してよく言われる情報の真偽について教えてもらった。
Q.コンタクトレンズで視力が低下するのはホント?
「コンタクトをつけていると視力が低下する。そういってコンタクトを避けているという人にも少なからず出会います」と話す吉田さんは、「眼科医の河内敏先生によると、どうやらホントのようです」と続ける。
一方で、正しい方法を守って使う分にはそこまでセンシティブになる必要はないという。それは、裸眼でもメガネでもコンタクトでも視力低下は起こりうるからだ。
ドライアイや眼精疲労による視力低下の可能性も
コンタクトレンズで視力が極端に落ちることはないが、装着時間が長いとドライアイや目の疲れによって通常の視力が出にくい状態になることに注意が必要だ。
「黒目の表面の涙の保護層がきれいな層になっていると、クリアに見えて視力が出やすいのだそうです。しかし、ドライアイの状態で乾燥し、保護層が波打った形になると、見えにくくなります。コンタクトの人が夕方見えにくいのは、ドライアイになっていることが多いので、もし夕方以降に目薬をつけて、目にうるおいを与えて見えるようになるならば、その視力低下はドライアイが原因です」
また、眼精疲労によって一時的に視力が低下することもある。その場合は、疲労が取れることで戻ることが多いため、めがねを併用したり、遠くを見るように意識したり、意識的に目のケアを行うことが望ましい。
視力の低下の原因は筋肉の変化
そもそも、視力の低下には大きく分けて2つの原因がある。
「1つは、成長によるもの。成長すると眼球が大きくなり、眼軸長(がんじくちょう)という眼の奥行きの長さが延び、焦点距離(焦点が合う距離)も延びるため、手前で像が結ぶようになるのだそうです。それにより近視化が進みます。もう1つは適応力。たとえば、遠くをよく見るためにメガネやコンタクトを利用している人が、近くを見続けると脳が『近くを見ることが大事なんだ』と認識して、近くに焦点を合わせるようになるのだそうです」
近くにピントを合わせるために、さらに近視が進んでしまうのだという。つまり、ピントを合わせる筋肉の変化に原因があるため、装着時間を無視してつけたり、清潔でないものをつけたり、つけたまま寝てしまうなど、目に負担をかける使い方をしない限りはコンタクトレンズの使用を極端に避ける必要はないという。
カラコンをつけていると黒目に色が移る?
見た目を好印象に変えるアイテムとして人気のカラーコンタクトレンズ。その色が黒目に移ってしまうのでは、という不安をもつ人もいるだろう。
「ズバリ、カラコンの色素が黒目につくということは、可能性としてあります」と吉田さんは話すが、安全性の高いカラコンを選べば、着色を防ぐことができるという。
「色素の付着を防ぐために意識すべきは、カラコンの着色方法です。カラコンの着色方法にはいくつか種類がありますが、最も安全性が高いとされているのが『サンドイッチ製法』と呼ばれる方式です。名前の通り、透明なレンズ2枚の間に色素面が挟み込まれており、着色料が目に触れない構造になっています」
現在、日本で販売されているカラコンの多くはサンドイッチ製法で作られているため、信頼できる販売店でサンドイッチ製法のコンタクトを選ぶのがよい。しかし、雑貨店などで売っている安価なカラコンや海外製のカラコンには注意が必要だ。
「レンズ自体に色素を直接プリントしたものもあり、こうしたコンタクトは色素面がそのまま露出しているため、綿棒でこすると色が剥げてしまいます。私も実際に綿棒でこすってみたことがありますが、色がはげました。つまり、着色料が目の中で溶け出してしまう危険があるということですから、おすすめはできません」
また、ソフトコンタクトレンズの使用は1日最大12時間までと決められているが、サンドイッチ製法のコンタクトは構造的にやや厚みがあり、酸素を通しにくい。そのため、通常のコンタクトレンズよりも短めの使用を意識してほしいという。
「カラコンでおしゃれを長く楽しむためにも、色やデザインだけでなく、 安全性にもこだわって、健康な目をキープしましょう」
◆教えてくれたのは:株式会社パレンテ代表取締役・吉田忠史
よしだ・ただし。2011年に株式会社パレンテ代表取締役就任。コンタクトレンズECサイト「レンズアップル」を運営するほか、 自社ブランド「WAVE」では「“見える”をもっと楽しく。 “見える” をもっと手軽に。」 をコンセプトに、コンタクトの枠を越えた商品・サービスを展開し、 視覚を通じて人生を豊かにすることに貢献。 日本一コンタクトを愛し日本一コンタクトを売りたい男として、YouTube「コンタクト社長よしだちゃんねる」 を配信している。https://www.youtube.com/channel/UC42lUmww3cdxr0nUKiS647g
◆監修:眼科医・河内敏
かわち・さとし。コンタクトレンズの正しく安全な使用法を啓もうすべく、 株式会社パレンテと組んでさまざまなプロジェクトを企画したり、ラジオパーソナリティやイベントでの講演も行なったりしている。