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元本が保証されているわけではない「元本確保型」などシニア世代には要注意な金融商品をシニア投資コンサルタントが指南

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シニア世代が特に注意したい金融商品をプロが解説(写真/photo AC)
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比較的安定した運用に向いているとされる投資信託。しかし、投資信託系の商品でも、ものによってシニア世代は買わないほうがいい場合もある。そこで、『やってはいけない資産運用 金融機関のカモにならない60歳からの資産防衛術』(アスコム)を上梓した、シニア投資コンサルタントで独立系フィナンシャルアドバイザーの西崎努さんに、シニア世代にはおすすめできないという投資信託などの金融商品について詳しく教えてもらった。

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金融庁も「内容を吟味することが必要」と提言する「ファンドラップ」

西崎さんが、シニア世代は注意が必要と指摘する金融商品の1つが、投資信託の詰め合わせ商品である「ファンドラップ」。

ファンドラップは、顧客の資産運用の希望や考え方をもとに、複数のファンド(投資信託)を組み合わせて資産を配分し運用・管理を行う金融サービスだ。一見すると、よいサービスのようにも思えるが、資産がじわじわと削り取られていってしまうのだそうだ。

「ファンドラップの仕組みやその投資方法などは理想的な運用モデルの1つといってもいいのですが、残念ながら金融機関が提供するファンドラップは、数年前から金融庁も『内容を吟味することが必要』と提言しています」(西崎さん・以下同)

コストが二重にかかるファンドラップ

厳密には、ファンドラップは、個別の株式や債券、投資信託のような「金融商品」ではなく、金融機関が顧客の代わりに複数の投資信託で運用してくれる「資産運用サービス」だ。

そのため、投資信託の保有で発生する運用手数料(信託報酬)に加え、「投資一任報酬」や「ファンドラップ報酬」といったファンドラップという資産運用サービスにかかる手数料も発生する。

「要するに同じようなことを二重に行い、コストが二重にかかっているのです。担当者がついているなら投資信託をすすめてもらうことも可能ですが、普段はその提案には費用はかかりません。ファンドラップ『サービス』を利用することで新たな費用が発生することになります」

ファンドラップは2~3年で解約する人が増えている

西崎さんによると、「ファンドラップ」に資金を預けた人のなかでは、2~3年で解約する人が増えているそうだ。日本のファンドラップの運用コストは年率2~3%のものが多く、運用リターンがコストを下回り、資産が目減りしていたり、届いたファンドラップの明細を見て「運用資産から引かれる金額」を目の当たりにし、負担額の大きさに気づいたりする人が多いためだ。

頭を抱える女性
明細を見て、ファンドラップのコストの高さにあとから気づくことも(写真/photo AC)
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「長期分散投資の基本は『平均的なリスクで平均的なリターン』を狙うものなのに、運用コストが高いと『平均的なリスクだけど低水準なリターン』になります。それならばまだいいほうで、運用ですからリターンがマイナスのときもあり、コストは当然ながら同じようにかかります」

「バランス型投資信託」や「ロボアドバイザー」で十分

長期分散投資で投資信託を利用するのであれば、「バランス型投資信託」や「ロボアドバイザー」で十分だと西崎さんは話す。「バランス型投資信託」は、一つの投資信託で国内株、海外株、国内債券、海外債券を組み合わせた国際分散投資を行うことができる金融商品で、仕組みはファンドラップに似ているものの、運用コストは低く抑えられている。

「ロボアドバイザー」はAIがおすすめの運用スタイルを提案してくれて、資産配分やリバランスも自動的に行ってくれるもの。こちらも仕組みはファンドラップとほぼ同じだが、販売がネット経由で営業担当者がいない分、運用コストは1%以下とバランス型投資信託以上に低い水準となっている。

「同じような仕組み、投資方法であればコストが低いほうを選ぶのは当然です。わずかな違いならともかく、年間1%以上の差はかなり大きいのではないでしょうか」

シニア世代が注意すべき「複雑な仕組みの投資信託」

シニア世代が注意すべき投資信託としては、「複雑な仕組みの投資信託」も挙げられる。ここで言う「複雑な仕組みの投資信託」は、「元本確保型」「リスクコントロール型」「プライベートエクイティファンド(PE)」「ヘッジファンド」など、相場に影響されないような運用や、相場に柔軟に対応していくことを目的とした商品だ。

「こうした投資戦略はプロが実際に行い実績を出しているケースもありますが、投資信託としてはおすすめできないものばかりです」

元本が保証されているわけではない「元本確保型」

「元本確保型」と聞くと安定運用に適していそうにも思えるが、注意しておきたいのは元本の「確保」を目指す商品であって、元本を「保証」しているわけではない点だ。途中で売却した場合は時価での売買となるため、元本割れの可能性があるうえ、投資信託のため運用中の費用もかかる。

「単に満期まで保有して投資元金が戻ってくることを望むのであれば、日本円建て債券で投資すればいいのではないでしょうか」

上昇にはうまく乗れない?「リスクコントロール型」

「リスクコントロール型投資信託」とは、当初設定した資産配分のルールに沿った運用を原則としつつ、市場の急変動時の過度なリスク回避のため、状況に応じて機動的に投資資産の配分を変更するもの。

よくあるのは、価格変化率のぶれの大きさ(ボラティリティ)によって配分を見直す「高ボラティリティ回避型」のリスクコントロール戦略だ。

しかし、実際、ボラティリティが急激に大きくなるタイミングというのは株式相場がある日突然急落するようなときで、最初の大きな下落のタイミングでは株式の比率は高いままだ。相場から遅れて株式の比率を下げ、また株価の上昇に対して遅れて配分を高めていくことになる。

株価の下落
「リスクコントロール型投資信託」は安定的に見えるが、株価下落時はしっかり下がってしまう(写真/photo AC)
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「結果的に、下落の局面ではしっかり下がるが、上昇にはうまく乗れないということになっているケースがあるようです」

個人投資家が気軽に手を出さないほうがいい「プライベートエクイティファンド(PE)」

プライベートエクイティファンド(PE)とは、未公開株式を取得して、株式公開や第三者への売却で値上がり益を狙う投資だ。成功すれば大きな利益を上げることができるものの、未公開株式のため投資先を見つけるところから始まり、投資した後も必ずしも売却できるとは限らない。個人投資家も、ETFや投資信託を通じてPEへ投資することができるようになってきているが、個人では理解しづらい運用戦略や換金性の低さがネックであり、個人投資家が気軽に手を出していい投資ではないという。

「相場とは違う値動きをする投資となりますが、どこにどのように投資しているのかははっきりわからず、運用の結果はまさにふたを開けるまでわからないです」

一般的な個人投資家が手を出せる「ヘッジファンド」は要注意

「ヘッジファンド」は、一般的には、機関投資家や富裕層から限定公開で資金を集めて運用するファンドだ。投資信託を通じて運用を任せられるヘッジファンドの仕組みが個人投資家にも提供されているが、西崎さんは一般的な投資家でも手が届くようなヘッジファンドはおすすめしないという。

本来、よいヘッジファンドにはお金が集まるが、集まりすぎると運用が難しくなることから新規の申し込みをクローズするため、個人投資家でも投資ができるヘッジファンドは「集金力がないヘッジファンド」ということになる。

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個人が投資可能なヘッジファンドは集金力が低いファンドなため、投資する価値があるかはよく見極めを(写真/photo AC)
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「集金力のないヘッジファンドに魅力があるわけがありません。ヘッジファンドのようなものに投資をして解約する時にトラブルになるケースも散見されています。そんなうまい話は簡単にはきません」

◆教えてくれたのは:シニア投資コンサルタント・西崎努さん

スーツを着た男性
シニア投資コンサルタントで独立系フィナンシャルアドバイザーの西崎努さん
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にしざき・つとむ。大手証券会社の全国トップセールスとして活躍後、新規・既存の上場会社や不動産投資法人(REIT)の新規公開・公募増資等の株式引受業務に従事。2017年に独立し、リーファス株式会社を設立後、リタイア期前後や高齢期の投資家を中心に、金融商品の仕組み、運用実務、大手銀行や証券会社の販売手法を熟知した投資のアドバイスを行う。著書に『老後資産の一番安全な運用方法 シニア投資入門』(アスコム)や『やってはいけない資産運用 金融機関のカモにならない60歳からの資産防衛術』(アスコム)など。https://refas.co.jp/

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