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《女性の植毛 最新事情》頭皮を切らない&そらない植毛「FUE法」、薄毛の原因、自毛植毛の値段などについて医師が解説

鏡を見る女性
薄毛に悩む女性は10人に1人もいる(写真/PIXTA)
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「分け目が目立ってきた」「ボリュームが出ない」「おでこが広くなってきた」「毛が細くなってきた」など──毛量や抜け毛に悩む女性は増えているという。そのため、女性の薄毛対策も選択肢が広がってきている。そんな中、“植毛“がいま改めて注目されているという。どうやって植えるの? お値段は? どれくらい保つの? 失敗したらどうなるの?──これまでは男性のための施術と思われがちだった植毛事情について、女性の視点で解説する。

女性の10人に1人が薄毛に悩んでいる

「植毛は正確には“自毛植毛”といい、自分の髪の毛を気になる部位に移植する治療のことで、再び毛が生えてくるのが特徴です」と話すのは、湘南AGAクリニック新宿本院の院長・齋藤浩一さんだ。

「近年は女性の約10人に1人が薄毛に悩んでいるといわれています。女性の薄毛治療法も進化する中で、特に最近需要が高まっているのが植毛です。当クリニックの女性の植毛症例数も、10年で3倍に増えました」(齋藤さん・以下同)

生え際植毛のビフォーアフター
額の生え際に植毛を施した一例だ。M字形に薄くなった生え際が、植毛により女性らしい丸い生え際となっている(写真/湘南AGAクリニック)
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植毛のメリットは、何といっても自然な仕上がりだ。

「自分の髪の毛を本来の毛の流れに沿って植えるので、髪の質感や色が自然で、違和感がありません」

ウイッグのようなメンテナンスが不要で、生着すれば半永久的に生え変わり続け、カラーリングやパーマを楽しめるのも魅力!

頭皮を切らない&そらない植毛が主流

植毛では、後頭部や側頭部の丈夫な毛を使用するのだが、その採取方法は主に2種類ある。

「ひとつめは、後頭部の頭皮を約10~20cmの帯状に切り取って植えるFUT法(※)。痛みを伴いますが、短時間で広範囲への移植が可能。もうひとつは、採取する部分の毛をそり、専用の器具で1株ずつ毛根を採取して植えるFUE法。痛みが少なく、採取後の傷痕が目立ちにくいのが特徴です」(齋藤さん・以下同)

かつては、FUT法が主流だったが、近年はFUE法が好まれる傾向にある。

「FUE法の中でも、最近は毛をそらない方法が人気。手術前後で髪形が変わらず、植毛手術をしたことが目立ちにくいからです」

技術は日々進化しており、医師の腕が仕上がりを左右する。そのため、クリニック選びも重要になる。

(※)FUTとは「Follicular Unit Transplantation」の略で、FUEとは「Follicular Unit Excision」の略。

意外と知らない女性のための薄毛講座Q&A

最新の植毛事情を知る前に知っておきたい基礎知識。男性と女性では、薄毛の原因や髪の抜け方に違いがある。そこで、女性の薄毛事情から自毛植毛の方法までを解説!

喜ぶ二人の女性
(イラスト/サヲリブラウン)
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Q.女性の薄毛の原因は?

A.女性ホルモンの分泌量が減少してしまうため

女性ホルモンのひとつ、エストロゲンは、40代半ばから分泌量が減少し、閉経するとほぼゼロになる。

「エストロゲンは毛髪の成長や健康に不可欠なホルモン。これが減少すると、毛髪の成長サイクルが短くなって育たず、抜けやすくなったり生えなくなったりして、薄毛となっていきます」(齋藤さん・以下同)。

こんなお悩みがある場合は薄毛に要注意!

□抜け毛が気になる
□毛髪のボリュームが減った
□ハリ・ツヤ・コシがなくなった
□分け目が広がってきた
□おでこの形が気になる・おでこが広い
□頭皮のにおいとオイリーさが気になる
□眉毛が薄い・眉毛がない

※「湘南AGAクリニック」ホームページを参考に編集部で作成。

女性の薄毛治療にはどんな方法があるの?

A.投薬治療が主流だが、選択肢が広がっている

「投薬治療が主流ですが、ほかにも、ウイッグ、増毛施術、植毛手術、幹細胞を注入する再生医療などの方法があります。男性はおでこや頭頂部の毛髪が抜けやすく、女性はまんべんなく薄毛になる“びまん性脱毛症“が多いのですが、これによく効く内服薬もあります。まずは投薬治療を行い、その上で複合的な治療の検討を」

Q.育毛、発毛、増毛、植毛の違いは?

A.毛髪へのアプローチの仕方が違う!

「育毛は、いまある毛を太く長く育てること。発毛は、髪が抜けおちたところから再度生えてくるように働きかけること。増毛は、いまある髪の毛に人毛や人工毛を取りつけて増やすこと。植毛は、自分の毛を頭皮に植えること。植毛のみが外科手術を行う医療行為です。薄毛対策という目的は同じですが、髪へのアプローチの仕方が異なります」

Q.人工毛植毛と自毛植毛の違いは?

A.人工毛はかつての方法で、いまは世界的に禁止の傾向に

「人工毛植毛とは、ナイロンやポリエステルなど人工的に作られた髪の毛を植える方法で、定期的にメンテナンスが必要なうえ、数年で抜けてしまいます。数の制限なく植えられるものの、拒絶反応や頭皮の炎症、感染症などのリスクがあり、いまは世界的に人工毛植毛の手術が禁止されています。自毛植毛の方が、安全で仕上がりも断然きれいです」

Q.けがややけどで毛穴がないが…

A.植毛では毛穴から作る!

「植毛では新たな毛穴をあけ、髪を作る組織ごと移植するので、毛穴がない部位にも植えられます。血流が悪いと通常より定着率が低くなるので、数回に分けて移植します」

Q.自毛植毛のお値段は?

A.1株700~1000円×植えた本数

「植毛する毛は、毛根を包む“毛包“と呼ばれる組織ごと採取します。この毛包を“グラフト“または“株“と呼び、何株植えるかにより価格が変わります」

Q.腕が確かな植毛クリニックを選ぶ際のポイントは?

A.専門医の資格、使用する植毛方法、過去の症例などを確認すること

採取した毛髪はすぐに植えないと、細胞が死んで生着しなくなるため、採取~植毛までの手術を1日で済ませる必要がある。緻密な作業な上、スピードも必要で、医師には高い技術力が求められる。「クリニックを選ぶ際は、専門医の資格、使用する植毛方法、過去の症例数、サポート体制のチェックが大切です」。医師との相談を繰り返し、慎重に選ぼう。

取材・文/鳥居優美

※女性セブン2024年12月12日号

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