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《美容医療最前線》メスを使わない「注入治療」が人気に ボトックス、ヒアルロン酸など8つの成分と効果&リスク、気になるQ&A

目の下に目の下に注射している
市場規模が年々拡大している美容医療(写真/buritora/PIXTA)
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美容医療の市場規模は年々大きくなり、なかでもメスを使わない“プチ整形”の市場規模は7000億円(美容医療プラットフォーム『トリビュー 』の公開情報より)ともいわれている。施術へのハードルも下がり、いまや肌のお手入れの延長線上にあるといっても過言ではない。そんなメスを使用しない美容医療の“代表格”でもある注入治療を徹底深掘り!

広がりを見せる“メスを使用しない”注入医療

「美容院やネイルサロンと同じような感覚で施術を受けているかたもいて、美容医療は当たり前の美容習慣になっていると感じます」と言うのは『湘南美容クリニック』皮膚科医の西川礼華さん。

なかでも、注入治療が広がりを見せているという。

「肌悩みへのアプローチは、マシンを使う照射施術や薬剤を投与するなど、さまざまな方法があります。

たとえば、しわの改善であればヒアルロン酸注射などの注入治療が効果的。有効成分が肌に直接入り、物理的に溝を埋めるので、手軽で効果を実感しやすいのです」(西川さん・以下同)

ほかにも、しわを寄りにくくするボトックスや肌つやをアップさせる水光注射など注入治療は多種多様で、数十種類のメニューを用意するクリニックもある。

「メスを使用しない安心感に加え、施術後の腫れや赤みなど、ダウンタイムが比較的短い点も注入治療の魅力といわれています」

こうした手軽さから50、60才を過ぎてからのアンチエイジングとして取り入れる人も増加している。

これらの注入治療を含めた施術が「プチ整形」といわれるようになって20年以上経つが、その進化について、ビューティエディターの藤井優美さんはこう語る。

「特にヒアルロン酸など、長年、大勢のかたが受けている治療は量や注入する部位などの知見も豊富なため、より理想的な仕上がりを叶えやすくなっています」

過度に治療を重ねると皮膚トラブルや不自然な見た目に

一方で、“やりすぎ”は禁物だ。

「より高い効果を得ようと過度に治療を重ねてしまうと皮膚トラブルを起こしたり、徐々に目が慣れてしまい、見た目が不自然になるケースもあります。肌悩みに真摯に寄り添い、リスクも丁寧に説明してくれる医師を選びましょう」(藤井さん)

西川さんも同様に語る。

「注入治療は回数を重ねるほどいい、というものではありません。ナチュラルさを感じる治療を心がける必要があるのです」

また、「カウンセリングを受けても即決する必要はない」と西川さんは言う。

「病気の治療とは異なり、美容施術に緊急性はありません。話を一度持ち帰り、家族と相談するなどゆっくり検討しましょう」

“美を叶える”ために、知っておくべき注目の成分8つ

注入治療は使用する製剤によって効果が異なり、その種類は多岐にわたる。その中からよく耳にする成分をピックアップ。

※価格は、以下の【A】~【D】のクリニックの料金を紹介。
【A】湘南美容クリニック、【B】神田美容外科形成外科医院、【C】湘南皮膚科クリニック中野駅前院、湘南内科皮フ科クリニック町田院、【D】湘南美容クリニック 六本木院

あごに注射している
注入治療の主な成分を紹介(写真/Aleksrybalko/PIXTA)
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注入治療

ヒアルロン酸やボトックス、コラーゲンなどを注入し、しわやたるみなどを改善する治療で「プチ整形」と呼ばれる。また、有効成分を組み合わせた「カクテル注射」も登場している。

筋肉の動きを緩め、しわ改善「ボトックス」

鏡を見るたびがっかりする、「しわ」「シミ」も「たるみ」も「くすみ」も1本で解決
チクッとするけど「注入治療」で劇的肌改善

有効成分はボツリヌス菌から抽出されたA型ボツリヌス毒素。これを用いた治療が「ボツリヌストキシン」や「ボツリヌス注射」と呼ばれ、筋肉の動きを緩めてしわを軽減する。しわの予防にも効果的。

【効果】表情じわや、眉間・目尻・おでこ・鼻根部などのしわが寄りやすい部位の改善。エラ張りや肩こり、多汗症なども解消する。
【持続性】3~4か月
【ダウンタイム】数日
【価格】3500円~【A】

真皮層に注入し肌の弾力アップ「コラーゲン」

コラーゲンは皮膚や骨に多く含まれ、体全体のたんぱく質の約30%を占める物質で、肌の弾力を担っている。ウシ由来、ブタ由来、ヒト由来のコラーゲンがある。真皮層に注入することで、肌にハリや弾力をもたらし、しわやたるみの改善も期待できる。

【効果】細かいしわから、ほうれい線など凹んだ肌の改善。外傷性の凹みや手術痕にも有効。
【持続性】6~12か月
【ダウンタイム】ほぼなし~2週間程度
【価格】11万円~【B】

1gで約6Lの水分を蓄える「ヒアルロン酸」

皮膚の真皮層に多く含まれ、その保水力はわずか1gで約6Lの水分を蓄える。肌の乾燥を防ぎ、ハリや弾力をキープするが、60代は20代に比べると25%まで減少するといわれる。化粧品やサプリにも多く使われている。

【効果】しわやほうれい線など凹んだ肌の改善。濃度の高いものは唇・鼻・あご・輪郭などの形を整える。
【持続性】3~12か月
【ダウンタイム】ほぼなし~2週間程度
【価格】1万8330円~【A】

みずみずしい肌になる「リジュラン」

韓国発祥の治療法。専用の機械を使って皮膚の浅い層に、ヒアルロン酸など目的に応じた製剤を注入する。薬剤が広く浅く浸透し、輝く肌をもたらす。

【効果】使用する製剤によって、しわやシミ、たるみ、くすみの改善、透明感や弾力アップなど。
【持続性】製剤によって異なる
【ダウンタイム】数日~10日程度
【価格】2万5800円~【A】

肌が内側から回復する「水光注射」

サーモンから抽出した「ポリヌクレオチド(PN)」という有効成分が、細胞の再生と活性化を促す。水光注射と同じ機械で注入することも。

【効果】表皮と真皮が内側から回復し、ハリや弾力を生み出す。皮膚の厚みが増し、しわを改善する。
【持続性】3~4か月
【ダウンタイム】数日程度
【価格】3万350円~【A】

美容注射

有効成分によって、美白や疲労回復などの効果が期待できる。

更年期症状の改善にも◎「プラセンタ注射」

ヒト胎盤から抽出したロイシン、リジンなどのアミノ酸や、酵素などを含有した製剤を皮下や筋肉に注射する。筋肉注射の方が吸収や効果の出現が早い。

【効果】皮膚代謝やコラーゲン増殖促進、美白効果、乾燥肌の改善、疲労回復、更年期による諸症状の改善など。
【持続性】2~3日
【ダウンタイム】ほぼなし
【価格】1000円~【C】

血行を促進して疲労回復「にんにく注射」

にんにくに多く含まれる、アリナミンF(ビタミンB1)を中心とした成分を血中から全身に行き渡らせる。蓄積した乳酸が燃焼され、血行促進や新陳代謝を高める。注射時には、にんにく特有のにおいを感じることもある。

【効果】疲労や倦怠感の解消。
【持続性】3日前後
【ダウンタイム】ほぼなし
【価格】1230円【C】【D】

メラニンの生成を抑制「白玉注射」

肝臓に多く含まれ、老化の原因となる活性酸素から細胞を守る役割がある「グルタチオン」というアミノ酸化合物を主成分とした有効成分を注入。美容効果だけでなく免疫力アップにも。

【効果】高い抗酸化作用とメラニン生成抑制作用があり、シミやくすみの改善が期待できる。
【持続性】数日~1週間程度
【ダウンタイム】ほぼなし
【価格】4980円~【A】

施術前に疑問を解消!注入治療QA

「低リスクとはいえ本当に安全?」「60代でも、いまさらやる意味はある?」など、興味はあるけど一歩を踏み出せない人が多いもの。ここでは、素朴な疑問にお答えします。

カウンセリング風景
施術前に知っておきたい注入治療のギモン(写真/Luce/PIXTA)
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Q.注入治療に適した年齢はある?

A.「20代からシニア層まで幅広く来院されています。基本的にどの施術も、年齢による条件の違いはありません。眉間のしわを気にされる20代のかたが施術に来られたり、シミ改善で60代のかたが定期的に来院されることもあります」(湘南美容クリニック・吉川優菜さん)

Q.デメリットは?

A.「針を刺す際に痛みが伴います。痛みに弱いかたは、笑気麻酔や麻酔クリーム(追加料金各3300円)の使用がおすすめです。施術後には内出血などのダウンタイムが生じる場合も。また、成分は徐々に体内に吸収されるので、効果をキープするには定期的なメンテナンスが必要です」(吉川さん)

Q.リスクはないの?

A.「副作用や合併症などのリスクはゼロではありません。たとえばヒアルロン酸の場合、極めて低い確率ですが誤って血管内に入ってしまうと、血管をふさいでしまう危険があります。また、アレルギー反応が出るケースもあるので、施術当日の体調など、しっかり医師と相談しましょう」(西川さん)

Q.初めての注入治療には何がおすすめ?

A.「ボトックスがおすすめです。目尻のしわや額の横じわなどが解消され、すぐに効果を実感できます。ほかの製剤に比べ、価格(3500円〜)もお手頃です」(吉川さん)

Q.50代以降でも手遅れではない?

A.「何才からでも遅くありません。注入治療を半年に1度でも継続していただくと、5年後、10年後は周りのかたより若々しさを感じると思います」(西川さん)

Q.効果が出るまでには何日くらいかかる?

A.「平均して3日~1週間ほどで効果が実感できるといわれています。施術直後は内出血や赤みが出る場合もあるため、同窓会や写真撮影など大事な日に備えるなら約2週間前の施術がベスト。トラブルがあっても2週間前なら対処可能です」(吉川さん)

Q.注入治療はどれも自由診療?費用は?

A.「更年期症状や歯科の治療など医療目的の一部のケースを除き、注入治療を含む美容医療は基本的にすべて自由診療です。そのため、同じ施術でもクリニックによって価格が異なります。高いから安心、安いから危険とは一概に言い切れませんが、施術を受ける際は価格だけで選ぶのではなく、複数のクリニックでカウンセリングを受け、比較するとよいでしょう」(藤井さん)

取材・文/藤岡加奈子

※女性セブン2024年11月28日号