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白菜の高騰に悲鳴も!韓国冬の風物詩“キムチ作り”「キムジャン」を50代の日本人留学生ライターが体験レポート

キムジャンは体力勝負!
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韓国料理を代表するキムチは、各家庭に専用のキムチ冷蔵庫があるほど、韓国人の食生活に欠かせない存在です。今回は、冬恒例のキムチづくり「キムジャン」についてソウル在住のライター田名部知子さんがレポートします。

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家族総出で行う「キムジャン」とは・・・?

韓国では厳しい冬を迎える前に、一年分のキムチを漬け込む「キムジャン」という伝統行事があります。家族や地域社会が協力して行うこのキムジャンは、2013年にユネスコ世界無形文化遺産に登録され、例年11月から12月にかけて行われます。この時期は白菜や大根などキムチ作りに欠かせない食材が旬を迎えるためです。

最近は共稼ぎ家庭の定着や食生活の多様化により、キムジャンをする家庭は減少していますが、今でもこの伝統を大切にしている家庭も少なくありません。私が韓国に住んで一度体験してみたかったことのひとつがキムジャンなのですが、今回はお世話になっている三姉妹家族のキムジャンに参加させてもらいました。

三角巾、エプロン、専用ゴム手袋のキムジャン・スタイル
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白菜価格70%急騰!キムジャンのタイミングが読めない異常気象

今年は夏の異常な猛暑と豪雨のため白菜が生育不良で、9月中旬には白菜の供給量が減少。白菜1株の価格は前年同時期と比べて約70%も急騰し、9337ウォン(約1000円)にまで達したほどです。政府は価格安定のため、契約栽培量の拡大や政府備蓄量の市場供給などの措置を講じた結果、11月中旬には株当たり3257ウォンと落ち着きました。

また、キムジャンは最低気温0℃以下、平均気温4℃以下の日が続く時期が適しているとされていますが、今年の秋冬は例年に比べて気温が高く、タイミングを見極めるのが難しい状況でした。この点から今年はキムジャンをあきらめる家庭も多いといわれています。 

キムジャンは2日がかりの一大イベント

キムチづくりは家庭や地域によって使う材料はさまざまなのですが、工程はほぼ同じで2日がかりで行います。

ヤンニョム作りには大量のからし菜やねぎなども使用
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1日目:白菜の塩漬け

今回用意した白菜は、大きめのものが全部で32株! 長女オンニ(お姉さん)のご主人が家庭菜園で大切に育てた白菜です。あらかじめ収穫しておいた32株を、前日にご主人が一人で水洗いして、半分に割って塩水に漬けておいてくれました。それを当日の朝、軽く水洗いするところまで全部一人でこなすのは相当な重労働だったと思います。

前日から塩水に漬けておいた白菜
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ちなみに韓国の白菜と日本の白菜の大きな違いは水分だと言われています。韓国のほうが水分が少なくて白菜自体に甘みがあるため、キムチ作りに適しています。一方、日本の白菜は水分が多いため、汁が多く出てしまい仕上がりが水っぽくなって、韓国産ほどおいしく作れないのです。

2日目:ヤンニョム(キムチの調味料)作りと、作ったヤンニョムをキムチに塗り込む作業

キムチの味の決め手はヤンニョム作りにあるといわれています。私の最初の担当作業はヤンニョム(薬味)の材料となる大量の大根の千切りでした。26本もの大根を2時間かけて3人で千切りにしたのです。韓国の大根は短くずんぐりと丸みがあって、日本の大根に比べると水分が少ないので硬く、とにかく扱いづらいのです。千切りが終わる頃には、手に豆ができるほどかなり大変な作業でした。

ヤンニョムに使う26本分の大根の千切り
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その後、青いビニールシートをリビングの床一面に敷き、大人1人が軽く入れそうな大きなたらいに千切りにした大根を入れ、大量の調味料をドバドバ投入します。こちらの家庭のキムジャンの調味料は、にんにく、しょうが、アミの塩辛、魚醤、唐辛子の粉(粒の大きさが違うものを2種)、塩、砂糖、もち米糊、出汁などを使用します。そして大根のほかにこのヤンニョム作りに使用した野菜は、からし菜、ねぎ、細ねぎなどで、これをキムジャン専用の長いゴム手袋をはめて、大きなたらいの底からひっくり返すように全体を混ぜ合わせます。専用のゴム手袋は丈がひじ上くらいまであり、袖口がゴム状になっているので作業中に袖がずり落ちてこないようになっています。

調味料と野菜を底からかき混ぜるのは楽しい作業
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ヤンニョムを白菜にひたすら塗り込む

水気を軽く絞った塩漬け白菜とヤンニョムが用意され、いよいよキムジャンの最終段階。白菜一枚一枚にヤンニョムを、根元までしっかりと丹念に塗りこんでいくのです。「薬味が少ないとおいしくないのよ」というオンニは、慣れた手つきで適量のヤンニョムを塗りながら、次々と美しい形のキムチを作り出していきますが、私はその適量がなかなかつかめず苦労しました。

延々と続くヤンニョム塗り
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その後、ご近所の方もこのヤンニョム作業を手伝いにきてくれ、作業をしながら世間話で大いに盛り上がります。ところがアジュンマ(おばさん)たちの話はあちこちポンポン飛ぶし、人の名前も固有名詞もわからず、正直私はほとんど会話についていけませんでした(涙)。

完成品を容器に詰める

最後は完成したキムチを、専用のプラスチック容器に詰めていきます。それをすぐにキムチ冷蔵庫へ保存するのではなく、常温で1日置いて水気が出てくる翌日に冷蔵庫へ入れるのがベスト。そして食べごろは5日~1週間後です。

きれいに巻き上げたキムチを容器へ移していく
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キムジャン後のお楽しみは牡蠣ポッサム

重労働後、出来立てのキムチを囲む食卓は至福の喜び
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今年の11月も暖かい日が多かったのですが、私たちがキムジャンをした週末だけはぐっと冷え込むキムジャン日和。室内もかなり冷えていたのでオンドル(韓国式床暖房)をつけてほしかったのですが、キムジャン中に過度に発酵が進んでしまうからとつけてもらえず、寒い中での重労働はさらなる疲労を生みました。

量が量だけにキムジャンは想像以上の重労働でしたが、キムジャンの締めくくりは、出来立てのキムチとポッサム(茹で豚肉)を囲む昼食です。オンニお手製のジューシーなポッサムに生牡蠣という至高の組み合わせを、出来立てのキムチと一緒にエゴマの葉で巻いて食べれば、全身疲労も吹き飛ぶおいしさ。キムジャンの日のポッサムもまた、韓国では定番の食事なのです。特に私は出来立ての浅漬けキムチをサラダ感覚で食べるのが好きなので、大満足の食事でした。

キムチと生牡蠣の相性は抜群
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翌日は全身が筋肉痛で何もできないほどの疲労感が残りましたが、冷蔵庫に並ぶキムチの容器を見るたびに幸せな気分になります。キムジャンの季節には観光行事として韓国のあちこちでキムジャン体験ができるので、この季節に来られる方はぜひ一度挑戦してみてください。

我が家の冷蔵庫に陳列された数種類のキムチ
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◆ライター・田名部知子

ライター田名部知子さん
ライター田名部知子さん
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『冬のソナタ』の時代からK-POP、韓国ドラマを追いかけるオタク記者。女性週刊誌やエンタメ誌を中心に執筆し、取材やプライベートで渡韓回数は100回超え。韓国の食や文化についても発信中。2023年1月から、韓国ソウルで留学生活と人生初めての一人暮らしをスタート。大学が集まる新村(シンチョン)にある西江(ソガン)大学の語学堂に通いながら韓国で就活中。twitter.com/t7joshi