
ファッションやフードの流行が目まぐるしく変化するソウルで、今いちばんホットな街と言われているのが聖水洞(ソンスドン)です。2022年、韓国のInstagramでもっとも多くのハッシュタグがつけられ、日本のファッション誌などでも数多く取り上げられるようになりました。そんな聖水洞の魅力にどっぷりハマっているソウル在住ライター・田名部知子さんが、聖水洞のお気に入りスポットをご紹介します。
聖水洞ってどんな街?
聖水洞はソウルの東側に位置し、DIORなどのハイブランドや最先端のショップが続々とフラッグシップ店を出し、個性的なカフェが次々と生まれています。かつては靴職人や町工場が数多く集まっていたので、古い工場や工房をそのままリノベーションした店舗が多く、今でもハンドメイドシューズや革素材の店、昔ながらの町工場が立ち並び、新しいカフェやショップと上手に混在している点がこの街の大きな特徴でもあります。観光客でも素材も含めてフルオーダーできるシューズを良心的な価格で購入することができるんです。

また「聖水洞カフェ通り」と呼ばれている通りには、ドラマ『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』に登場して話題になった壁画をはじめとする、多彩なジャンルの壁画が集まるアートスポットもあり、1日のんびり散歩をしていても飽きません。最寄り駅は地下鉄2号線の聖水駅で、明洞や江南からも約20分という好立地です。

月1で通う“人生カムジャタン”
聖水洞はカムジャタンの名店があることでも有名です。カムジャタンとは、豚の背骨肉をじゃがいもやエゴマの葉、大根の葉などと一緒に辛いスープで煮込んだ鍋料理。1983年開業の専門店『ソムンナン聖水カムジャタン』は韓国の有名グルメ番組などで何度も紹介され、地元の人にも観光客にも長年愛され続けているお店です。私がこれまで食べたカムジャタンの中では間違いなく一番の味で、韓国風に言うと“人生カムジャタン”。月に1回は通っています。

骨付きの豚から出た旨味がスープに溶け込み、ずしりと重い骨付き肉は箸で簡単にほぐせるほど柔らかく煮込まれているのですが、頼めばビニール手袋も持ってきてくれるので(逆に頼まないと持ってきてくれない〈苦笑〉)、豪快に手を使ってかぶりついてください。10時間じっくり煮込んだスープだけでも、ごはんや焼酎がどんどん進みます。赤唐辛子の辛さと胡椒のスパイシーさとのバランスが絶妙なのですが、日本人がおいしく食べられる程度の辛さなのでご安心を。
そしてどんなにお腹がいっぱいでも最後にぜひ食べていただきたいのが、残ったタレと山盛りの韓国のりで作る締めのポックンパブ(チャーハン)で、カムジャタンのだしが染み込んだチャーハンは、食べ過ぎても後悔のない格別のおいしさです。一人前の「カムジャスープ定食」もあるのでおひとりさまでも安心して入ることができ、もちろんテイクアウトも可能です。
韓国にはもともと24時間営業のお店が多かったのですが、コロナ禍で営業時間を短縮する店が増え24時間営業のお店が減る中、この店は今でも24時間営業を続けています。いつも大行列なのですが、店内は広くて回転がいいので、混んでいても20分も待てば入れます。

店舗情報
店名:ソムンナン聖水カムジャタン
住所:ソウル特別市城東区聖水洞2街315-100
アクセス:地下鉄2号線聖水(ソンス)駅 4番出口徒歩3分
営業時間:年中無休、24時間営業
メニュー:カムジャタン 大 43,000W、中 32,000W、小27,000W カムジャ定食(1人用)10,000W~ ポックンパブ(チャーハン)3,000W
甘さ控えめの絶品ミルクレープ
『ソムンナン聖水カムジャタン』から徒歩2分の距離にあるのが、こちらもまた私が個人的に、今ソウルでいちばんケーキがおいしいと思うカフェ『マルリ』です。アースカラーで統一された店内は広く開放感があり、小あがりのような座席もあってついつい長居をしてしまいます。ケーキはエントランス横のキッチンで作ってすぐに店頭に並べられるので新鮮で美味。

ケーキに限らず韓国のパンやスイーツのサイズは日本よりかなり大きく、1人で食べ切るのはちょっと大変なことが多いのですが、こちらのケーキのサイズ感はちょうどよく、フルーツの味もしっかり感じられます。韓国にしては珍しく甘さが控えめで、塩味とのバランスもいい上品な味。特にミルクレープが有名で、いちごやマンゴーなど季節のフルーツを常時3種類ほど置いています。

店舗情報
店名:マルリ
住所:ソウル特別市城東区聖水洞2街315-55-1F
アクセス:地下鉄2号線聖水(ソンス)駅 4番出口徒歩6分
営業時間:年中無休、9:00~23:00
主なメニュー:ミルクレープ8,000W~ コーヒー5000W
聖水洞ブームの先駆けとなったヴィンテージカフェ
現在の聖水洞ブームのパイオニア的なカフェ『聖水洞 大林倉庫(デリンムチャンコ)ギャラリー』はあまりにも有名なカフェなのですが、洗練された無機質な店内がとても素敵で聖水洞を語る上では外せないカフェです。

店名にある通り、90年代には工場の資材を保管する倉庫として使われていた場所を見事にリノベーションし、不定期で音楽イベントなども開かれています。赤レンガの外観や朽ちかけた倉庫の雰囲気がそのまま上手に生かされ、高い天井はコンクリートの打ちっ放しで梁がむき出しになり、お客さんのおしゃべりや笑い声が響いて、それもまた洗練された雰囲気を醸し出しています。

大きな牛乳瓶にたっぷり入ったいちご牛乳(デリンムチャンコ・タルギウユ)が有名です。ビジュアルが最高のバスクチーズケーキですが、味は普通(笑)。個人的にはもっと塩味が効いて香ばしいものが好みです。ブレッドカフェとしての側面もあり、ここのパンは特に大きいのが特徴で塩パンが人気。値段はバスクチーズケーキが1ピース9,000Wと全体的にかなり高めです。ちなみにここはアルコールも提供しています。


店舗情報
店名:聖水洞大林倉庫ギャラリー
住所:ソウル特別市城東区聖水洞2街322-32
アクセス:地下鉄2号線聖水(ソンス)駅3番出口徒歩4分
営業時間:年中無休、11:00~22:00
メニュー:デリムチャンコタルギウユ(いちご牛乳)9,000W 塩パン4,000W バスクチーズケーキ9,000W コーヒー6,000W
メイク初心者~達人まで楽しく遊べる大人のテーマパーク
聖水駅の北側には、『聖水洞 大林倉庫ギャラリー』と並んでこの街のシンボルになっているブレッドカフェ『onion』があります。そこを少し通り過ぎたところにあるのが、韓国化粧品メーカー大手『アモーレパシフィック(AMORE PACIFIC)』が運営する体験型のコスメショップ『AMORE(アモーレ)聖水』。

店内ではSulwhasoo(ソルファス)、ARITAUM(アリタウム)、innisfree(イニスフリー)などアモーレパシフィックの30以上のブランド、合計2300種類以上のコスメを自由に試し、買うことができます。予約制でオーダーメイドのファンデーションやリップグロスの製作、ビューティー講座などの体験も可能。

2階建ての古びたビルの外観は殺風景なコンクリートの建物ですが、こちらもまた自動車整備工場を利用しているので、内装も普通のコスメショップとは異なり工場のよう。1階のフロントで受付をすると、コスメサンプルの引換クーポンなどがもらえます。
最初のクレンジングルームには、アモーレパシフィックのさまざまなブランドのクレンジング剤や洗顔料が整然と並び、自由に試すことができます。洗面台やタオルも用意されていて、まずはメイクをすべて落としてメイクアップを楽しんでほしいという計らいなのです。ここに来ると背筋がすっと伸びて、新しいメイクに挑戦してみたい気持ちにかられるので、大人メイクを考え直すいい場所になると思います。

店舗情報
店名:アモーレ聖水
住所:ソウル特別市城東区聖水洞2街277-52
アクセス:地下鉄2号線聖水(ソンス)駅2番出口徒歩3分
営業時間:10:30~20:30 月曜日・祝日休み
体験メニュー(要予約):
・HERA SILKY STAカスタムファンデーション:所要時間約60分/68,000W(ファンデーション本体費用込み)
・デイリーメイク無料メイクサービス:所要時間30~40分
・LIP PICKERカスタムリップティントサービス:7月末より新サービスを実施予定
※予約はHPからwww.amore-seongsu.com
街の変化のスピードもソウルならでは
今回紹介したお店へ行くには、スマートフォンでNaver Mapのアプリをダウンロードして、韓国語で店名または住所を入力して検索してみてください。韓国ではGoogle MapよりNaver Mapのほうが精度が高いようでおすすめしています。日本のスマホであれば日本語で見ることができますが、場所を入力するときは韓国語の入力が必要なので、翻訳アプリと合わせて使ってください。

行くたびに新しいお店ができていて現在も進化中の聖水洞ですが、韓国の街の人気の移り変わりは日本とは比べものにならないほど速いです。かつての人気スポット・江南の新沙にあるカロスキルや裏カロスキルなどは、今は週末でもあまり人が歩いていないくらい寂しい街と化しています。でもその盛衰のスピード感こそがソウルの面白さでもあり醍醐味だとも感じているので、ぜひ何度も通って街の変化のスピードを体感してみてください。

※紹介した店舗の営業時間や価格は変動の可能性があります。
◆ライター・田名部知子

『冬のソナタ』の時代からK-POP、韓国ドラマを追いかけるオタク記者。女性週刊誌やエンタメ誌を中心に執筆し、取材やプライベートで渡韓回数は100回超え。韓国の食や文化についても発信中。2023年1月、韓国ソウルで留学生活と人生初めての一人暮らしをスタート。大学が集まる新村(シンチョン)にある西江(ソガン)大学の語学堂に通う。twitter.com/t7joshi