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嘔吐が続くと注意!命にかかわることもある【猫の腸閉塞】予防法を獣医師が解説、原因は大別して異物か腫瘍 

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嘔吐が続くと注意!命にかかわることもある【猫の腸閉塞】とは?(写真/イメージマート)
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犬より猫に多い腸閉塞。なんらかの原因で腸がふさがってしまって、消化中の内容物が腸に詰まってしまう病気だ。腸閉塞になるとその猫は嘔吐を繰り返すことになる。見るからに苦しそうで、飼い主さんはいてもたってもいられなくなるはず。実際に命にかかわることもある。なぜ腸閉塞が起こるのか。予防する方法はあるのか。獣医師の鳥海早紀さんに聞いた。

腸閉塞から腸重積や腸穿孔になる恐れも

腸閉塞とは、読んで字のごとく、なんらかの原因で腸がふさがってしまって、消化中の内容物が腸管を通過できなくなってしまう状態のことだ。内容物を便として体外へ排出できなくなるので、嘔吐を繰り返すようになる。

「腸閉塞までになると、飼い主さんが気づけないことはまずないですね。水を飲んでも吐く、1日に何度も吐くのが、腸閉塞の主な症状です」と鳥海さんは話す。

さらに悪化すると、閉塞して動きにくくなったところに、腸の一部が入り込んでしまって、腸重積という状態になることもある。腸重責になると、嘔吐はいっそう激しいものになる。

また、腸が完全に詰まってしまった場合や、腸の一部が異物で引き延ばされてしまった場合などに、腸が壊死して腸に穴が開いてしまうことも。穴の開いたところから消化管液が漏れ出し、腹膜炎になってしまうと、命を落とす危険性がある。

原因は大別して異物か腫瘍

猫の腸閉塞の原因は「大きく2つに分かれる」と鳥海さんは言う。

「1つは、異物誤飲。誤って飲み込んでしまったものが腸でつかえてしまうパターンです。もう1つは腸に腫瘍ができて閉塞するパターン。腸の内側にできた腫瘍が原因のこともあれば、腸の外側に腫瘍ができて、腸の内腔が押されて狭くなることもあります」(鳥海さん・以下同)

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異物誤飲による腸閉塞は若い猫に多い(写真/イメージマート)
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異物誤飲による腸閉塞は若い猫に多く、腫瘍による腸閉塞は中高年の猫に多い傾向があるという。

「若い猫は経験が浅い一方、好奇心が旺盛だったりするので、飼い主さんが食べ物として与えた以外のものもパッと口にしてしまうことがあります。中高年になると、なんでもかんでも口に入れる子は少ないと思いますが、かわりに若い頃より腫瘍ができやすくなります」

猫の年齢や普段の行動が診断の参考に

動物病院で腸閉塞らしい症状の猫を診るとき、飼い主さんに猫の年齢をまず尋ねる獣医師は多いのだそうだ。

「最終的にはレントゲン検査と超音波検査で診断を下すことが多いですが、最初に当たりをつけるときは、年齢は結構、参考になる要素なんですよ。13歳だったら腫瘍を疑うし、生後3か月と聞いたら誤飲かなと思うし。普段の性格や行動も聞きます。シニアになってもごみをガサガサするのが好きな子もいれば、若くてもビビリさんで新しいものに自分からは近づかない子もいますからね」

異物でも腫瘍でも腸閉塞は開腹手術が基本

腸閉塞の治療は、異物が原因の場合、外科手術で取り除くことになる。実は、猫が麻酔下での処置や手術を受ける理由で、歯周病/歯肉炎の次に多いのが、消化管内異物/誤飲だ。

「異物が停滞しているのが胃までなら、麻酔をかけて内視鏡を口から挿入して鉗子でつまんで引っ張り出せるケースもあるんですが、腸に達してしまったら内視鏡は使えないし、閉塞しているなら開腹手術になりますね」

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引っ張り出せるケースもあるが…(写真/イメージマート)
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腫瘍の場合も、外科手術で除去した上で投薬することが多いという。

「完全に腸がふさがるところまでいかない狭窄や半閉塞の状態であれば、投薬で小さくできることが分かっている腫瘍の場合、手術はしないこともあります。腸閉塞にまでなって今もう吐いて苦しそうだという場合は、まず手術で腫瘍を除いてから投薬を並行します」

また、閉塞によって腸管の血行が滞って壊死が起きている場合には、詰まりを解消するだけでなく、壊死した部分も切り取って、健康な腸管を縫い合わせてつなげることになる。

腸閉塞の手術は数日入院しての点滴治療を伴うことが多く、費用も高額になりがちだ。

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