健康・医療

《88才の外科医・帯津良一&高齢者専門精神科医・和田秀樹対談》名医2人が明かす食生活「朝食に生ビール」「お酒のシメにはラーメン」「生野菜は食べない」

高齢者専門精神科医・和田秀樹&88才の外科医・帯津良一
左から88才の外科医・帯津良一さんと高齢者専門精神科医・和田秀樹さん(撮影/浅野剛)
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もっともらしい健康知識が氾濫し、それも次から次へと否定され更新される現代において、「老い方の正解」を探すのは至難の業だ。だが、88才のいまも現役で外来に立つ外科医の帯津良一さんと、高齢者専門の精神科医である和田秀樹さん(64才)は口を揃えて言う。「正解を探すことこそが不正解なのだ」と。

朝食に生ビール、毎晩ワインを飲む

年を重ねたら、病を予防し寝たきりを防ぐために、「早寝早起き」「適度な運動」「栄養バランスのとれた食事」「節酒・節煙」「健康数値に気を配る」ことなどが推奨される。しかし帯津さんと、和田さんは一笑に付す。

帯津:私がこれまでに入院したのは、盲腸と骨折の2回だけで大病をしたことがありません。それどころか、ここ30年、風邪もひいていない。健康に気を配っているんですかと聞かれますが、私はお酒が大好きで、毎日の楽しみは晩酌です。ビールを中ジョッキで2杯と、焼酎かウイスキーのロックを2杯。休肝日はありません(笑い)。

地方に講演に行ってホテルに泊まったりすると、朝食に生ビールを飲みます。しょうゆをたっぷり入れた納豆ご飯をつまみにしてね。最高です。

生ビール
帯津さん、朝食に生ビールを飲むことも(写真/PIXTA)
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和田:素晴らしいですね。ぼくも毎晩ワインを飲んでいます。お酒を控えるという発想はないですね。

帯津:普段のつまみは湯豆腐と刺し身が好物で、あとは塩気が強いもの。いかの塩辛に、酒盗に筋子なんかはつい箸が進みます。この間は、白子ぽん酢を食べましたがこれがうまくて、体中が生き生きしました。生野菜は好きじゃないので食べません。

飲み終わると、ご飯やラーメンを少し。ウイスキーを飲んでいるときは、桜餅など甘いものも食べます。

88才の外科医・帯津良一
帯津さん「毎日の楽しみは晩酌です」(撮影/浅野剛)
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和田:帯津先生はとても若々しいですよね。しっかり食べているから、ふっくらされている。そういうかたは長生きするんです。

帯津:どうも(笑い)。

和田:ぼくらが小さい頃は、「どんどん栄養を摂れ」と言われていたのに、1980年代頃から急に、「栄養の摂りすぎや肥満は敵」と言われ出した。アメリカに倣ったんでしょうが、日本人には到底当てはまりません。いまでも、日本人は栄養不足ですよ。

正常値に揃える必要はない

帯津:私は高血圧も痛風もありますが、薬はあまりのみたくなかったので、最初は「ライフスタイルを変えるから薬はいらない」と言ったんです。でも、よく考えたら、痛風はお酒が飲めないし、高血圧は塩気がダメ。これは無理だと思って、薬をのみながら酒も塩気も充分に摂ると決めました。血圧はいまも160くらいですが、別にどこも具合が悪くないから、気にしていない。最近は測ってもいません。

和田秀樹
和田さん「減塩ブームは、はっきりいって大きな勘違い」(撮影/浅野剛)
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和田:近頃の減塩ブームは、はっきりいって大きな勘違いです。血圧を下げることは活力を奪うことになるし、高齢になれば自然と血圧は高くなるもの。適応現象で、シニアになれば160くらいは適正でしょう。血管を元気に保つにはたんぱく質が必要ですから、豆腐や納豆を食べるのは非常に理に適っています。

帯津:数字に頼って、正常値に揃える必要はないというのは同感です。私は死ぬまで働きたいし、お酒を飲みたいと思っていて、そのためには下半身を弱くしてはいけないなと、骨の脆弱化を防ぐために、牛肉と昆布を食べるようにしています。昆布はカルシウムが豊富で吸収率が高いんです。

若い頃は分厚いステーキが大好きで昼から手術が終わると食べたりしていましたが、最近はどちらかというとすき焼きです。昆布はね、図らずも湯豆腐で摂ってました。最近は、昆布のだしをチェイサーにして飲んでるんです。

すき焼き
帯津さんおすすめのすき焼き(写真/PIXTA)
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和田:1980年代頃からアメリカでは心疾患を撲滅しようと、体重を減らしてコレステロール値を下げるために「肉食を減らす方向」に舵を切りました。食の欧米化が進んでいた日本も追従しましたが、当時、アメリカ人は1日に300gの肉を食べていましたが、日本人はわずか70gほど。それで減らすのは大間違いです。現代においても、日本人は肉も脂も足りていません。

揚げものも健康に悪いなんて思われているけど、日本人はもっと食べた方がいい。ぼくは揚げもの全般が大好きですよ。女性の場合は肌のハリにも影響しますから。

カニクリームコロッケ
和田さん「ぼくの大好物はカニクリームコロッケ」(写真/PIXTA)
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ラーメンは完全食

帯津:朝からビールを飲むのが好きと言いましたが、本の執筆をするときなど、ホテルに缶詰になることがあって定宿にしていたところがありました。そこでの朝食は決まっていて、オレンジジュース、砂糖をいっぱい入れたコーヒー、目玉焼き、そしてビール(笑い)。いつもそれを頼んでいたので、そのホテルが閉館することが決まったとき、ホテルの人が「次のホテル、ご紹介します」と言ってくれて、そこに行ったら朝食にちゃんと同じメニューが出てきたんですよ。うれしかったね。

和田:肝臓の働きがいちばんいいのは、実は朝と昼。だから、朝食や昼食でたんぱく質をしっかり摂ると筋肉になりやすいんです。でも日本人は、夜はしっかり食べるけど朝とか昼は軽めですよね。朝、しっかり食べるってすごく大事です。帯津先生はいろいろな食材を摂っていて、それってすごく健康にいい。

ラーメンも最近は化学調味料なんかじゃなくて、きちんとだしをとっているから、スープだけでそれこそ10種類以上の食材が使われていて、麺があって、具材があるという、一杯で20種類くらいの食材が摂れるわけですから。シメにラーメンはもう完璧です。

ラーメン
ラーメン(写真/PIXTA)
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帯津:結局のところ、好きなものを好きなように食べるのがいちばんいいんですよ。私は、がん患者さんに言うんです。「抗がん剤治療を受けている人が、野菜ばっかり食べてたらダメだよ。苦しい思いをしてるんだから、食べ物くらい好きなように食べなさい」って。

和田:その通り。

帯津:家族は渋い顔をしますけど、患者さんは喜びます。お酒もね、飲んでいいよって言います。たばこもね、1日数本なら「いつ吸おうか」って考える楽しみがその人を元気にするんだから。その人が生き生きと生きられることが大事です。

和田:養老孟司先生はいまも現役の愛煙家ですが、先生は口癖で「世の中、理屈通りにいかないからね」っておっしゃる。でもね意外と理屈に合っていて、老人ホームで10年間の追跡調査をしたデータがあるんですが、それを見ると喫煙者と非喫煙者で生存曲線に差がないんです。ホームに入る年齢まで喫煙していて平気なら、たばこに強い体質なんだというのが考察で、年をとって元気でいるなら、そのままでいいんですよ。

好きなように食べて、好きなことをすることが免疫力を高めるわけですから。

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