健康・医療

薬が体に害を及ぼすことも…「糖尿病薬で血栓」「降圧剤で血流低下による酸素不足」「コレステロールを下げる薬ががんリスクに」 服用前に知っておくべきこと

コレステロールの薬で細胞が暴走することも

女性ホルモンの減少に伴い40代以降、特に更年期前後から女性を悩ませるのがコレステロール値だ。“悪玉”といわれるLDLコレステロール値が上昇するため、抑えるための薬が処方される。

「LDLコレステロール値が高い=健康リスクが高い、ということ自体が医療界では疑問視する声があります。コレステロールは、体の必須成分だからこそ肝臓で生成されていて、脳の神経を正しく機能するようコーティングしたり、細胞膜など細胞の材料として必要です。

体内の“運搬役”として細胞に材料を運ぶ役目もある。コレステロール値を下げるスタチン系製剤は、肝臓の働きを阻止しコレステロールの生成や機能を阻害してしまいますが、そうすると脳の働きが不安定になったり、細胞が暴走してがんのリスクが高まる可能性があります」(水野さん)

群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春さんは、気をつけるべき副作用について警鐘を鳴らす。

コレステロール値を下げるスタチン系製剤はがんのリスクが高まったり腎不全につながることがある(写真/イメージマート)
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「スタチンには筋肉の細胞を壊してしまう副作用が見られることがあります。筋肉が溶けて痛みが出る横紋筋融解症は代表例です。

ほかにも体に力が入りにくい、筋肉痛が起きるなどのほか、筋肉をつくるたんぱく質が破壊され血中に出ることで腎不全につながることもあります」

ただし、遺伝性の家族性高コレステロール血症の場合は医師との相談が必要だ。

「遺伝性の場合、血栓を起こすリスクが高いのですが、実は血小板の異常も同時に遺伝しているという説もある。この説によれば、コレステロール自体は高くても体に悪さをしないということになる。そればかりか、高コレステロールの人ほど、免疫力が高い、がんになりにくいといった報告もあります」(水野さん・以下同)

更年期以降のホルモン変化で女性を悩ませるのは骨粗しょう症も同じ。しかし、安易に薬に頼るのも考えものだ。

「骨を丈夫にするのは、活性型ビタミンD3製剤です。これは、カルシウムの吸収を高めますが、同時にカルシウム濃度の上昇とマグネシウム不足が起きる。特に処方薬は、紫外線が当たって活性化した後のビタミンDなので強力にカルシウムの吸収を高める一方で、カルシウムが過剰になるというデメリットがあります。

マグネシウムが不足しやすく、前述の通り糖尿病を悪化させる可能性や、がんリスクが上がるともいわれています。カルシウム過剰で溶けきれないカルシウムが体のあちこちにくっつくと、関節痛や動脈硬化を引き起こす恐れもあります」

花粉症薬で意識レベルが急激に低下

処方薬で治す病気だけでなく、市販薬によって症状を改善・予防する病気についても気は抜けない。女性を悩ませる便秘では、薬を手放せなくなる人が多いが、恒常的に服用することによるリスクは小さくない。

「刺激性の下剤は、長期にわたってのみ続けると大腸メラノーシスを引き起こすとされています。大腸メラノーシスは大腸の粘膜が変色したり機能が低下したりする状態で、便秘がより悪化してしまうケースが見受けられます」(長澤さん・以下同)

まずは自分がいまのんでいる薬の整理から始めよう(写真/PIXTA)
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これからの季節で注意したいのは花粉症の薬。

「花粉症の薬の一部には、ヒスタミンという脳内の神経伝達物質を抑える効果がある。これが、うつ病の薬と同じ作用で、意識レベルが急激に下がって起き上がれなくなったり、場合によっては精神状態が不安になり、うつ病を罹患している場合にはそれが悪化するケースもあります」

胃もたれや胃の痛みを感じ、やわらげようと薬を手にする人は多いだろう。しかしそれも、慢性化すれば体にとっては大きなダメージとなりうる。

「胃薬には、効果が弱めのH2ブロッカーと、効果が強いプロトポンプ阻害薬の2つのタイプがある。このうち、プロトポンプ阻害薬には、長期間の服用でいくつものリスクが増えることが複数の論文で明らかになっています。

具体的には、胃のポリープや胃がん、認知症、腎臓病、心筋梗塞、脳卒中など命にかかわる重篤な疾患もある。とはいえ、急に服薬をやめると、“リバウンド”で胃酸が強く出すぎることもあるので服用が長くなっている人は医師や薬剤師に相談して減薬を心がけましょう」(水野さん)

症状をやわらげ、体をよくするどころか、時に死に至らしめるほどのリスクがある薬。自分にその一錠が本当に必要か、じっくり考えることが重要だ。

※女性セブン2024年12月19日号

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