友人は家族とは違い、関係を続けるのも、遠ざけるのも自由で「個人の判断」で構築される存在だ。だからこそ何十年も続く関係はとても大切で、大事にしたい。檀ふみが友情に満ちた罵倒合戦を繰り広げる阿川佐和子との仲について教えてくれた。
今日も阿川さんは変だったな
「檀さんと気が合いそうなかたがいますよ」
檀ふみがTBSのプロデューサーにそう話しかけられたのが「女の友情」の始まりだった。
「ちょうど阿川佐和子さん(71才)がTBSのキャスターを始めた頃でした。たまたま母が番組を見ていて、すごくすてきなお嬢さんと言っていたので、私もお会いしたいと思いました」(檀・以下同)
TBS関係者2名を加えた初顔合わせの会食は、楽しくも乱れる場となった。
「会ったその日から2人ともベロンベロンになって、2軒目で別のお客様のところに倒れこんだりしてハチャメチャでした。当時はお互いにすぐ酔っ払って、おじさんみたいな酔い方をしていましたね。
阿川さんは快活でおしゃべりで、話の引き出しをたくさん持っているチャーミングなお嬢さんでした。彼女は私との初対面に“緊張した”と言っていたけど、そんな素振りはまったくありませんでした」
海外旅行を共にするまでの仲に
以降、阿川の活躍の場が広がるにつれて檀との接点が増し、プライベートな交流をするうちにお互いを深く知るようになった。
「一緒に海外旅行をするようになって、荷造りが苦手でパスポートを忘れる私を見て阿川さんは“あー、この女、ダメな女なんだ”とわかったみたい。
香港旅行では、お通じが悪かった私にご親切にも便秘薬をくださったのでのんだんですが、そのあと何度もお通じが来て、そのたびに旅を中断させてしまいました。阿川さんはイライラなさっていたようですが、ぜんぶ、あちらのせいだったんです。彼女は旅先に必ず仕事を抱えてくるけど、結局、作業の途中で寝ちゃうから、持ってこなくてもいいんじゃないかとはいつも思っていましたね。ほかにも印象的なことが多く、“今日も阿川さんは変だったな”といつも思っていました」
現在の“愛と罵倒の名コンビ”にどのようにしてなったのか
いまでは文化人屈指の名コンビとして「友情に満ちた罵倒合戦」を繰り広げる2人はどんな関係なのか。
「性格はまったく似ていなくて、私はおっとりゆっくりで、阿川さんはいつもせかせかしています。ただし最初にプロデューサーが紹介してくれたのも『慶應大学出身』『父親が作家』『飛びそうで飛べない(結婚のこと)』という共通点があったから。もっとも阿川さんは無事にお飛びになりましたけど」
その言葉通り、阿川は2017年5月に元大学教授と結婚した。檀は祝福しつつもボヤくことしきりだ。
「阿川さんから直接、結婚報告がなかったのはショックでしたね。おつきあいしていたことは知っていたけど、結婚はないとの見立ては外れました。昔はお優しくて、自宅に招いてくれてローストビーフとかチキンの丸焼きとか作ってくれたけど、この頃は彼女が忙しいことと、奥さまになられたからか、まったく招待されません。寂しいです。
あまりに憎たらしいので、この間会ったときに“今度、阿川さんのお友達ということでインタビュー受けるから、本当に嫌なやつだと言っておくわ”と伝えたら、“何言っているのかしら”とすかされました」
穏やかな笑顔で憎まれ口を叩くのも、心が通じ合っているから。阿川がどんな存在かと尋ねると檀はキリっとこう答えた。
「すごく尊敬しています。私にはないバイタリティー、仕事に対する情熱があるから。旅行中はうとうとが多くてあまり集中力が続かない人と思っていたけど、これほどたくさんお仕事をこなされてきたのはすごい。私にはできないので尊敬します」
さすが愛と罵倒の名コンビ。最後に檀は、生涯の友人にこんな愛情あふれるメッセージを送る。
「直接伝えているし、この間はお誕生日のカードにも書いたんですけどね。たまには私とも遊んでください!」
◆俳優・エッセイスト:檀ふみ
東京都生まれ。高校在学中に俳優デビューすると、ドラマ『日本の面影』(NHK)など多くの作品に出演。クイズ番組『連想ゲーム』(NHK)では15年間解答者を務めた。
※女性セブン2024年12月19日号