
日本人の半数以上が、年末年始にすき焼きを食べるという結果が(キッコーマン+会員・オンラインアンケートより)。毎年おなじみのわが家の味もいいけれど、今年はさらにおいしさを格上げしてみませんか? 肉の選び方から焼き方、味つけまで、東西の名店がおいしさの秘訣を伝授。家族みんなが笑顔になる最強料理で、年末年始の食卓を彩りましょう。
【関東】「伊勢重」割りしたで”煮る”牛鍋風で味の変化を楽しむ
創業以来変わらぬ配合の割りしたで“煮る”すき焼きを提供する「伊勢重」。

「甘さ控えめのあっさりした割りしたが特徴です。関東風すき焼きの醍醐味は、煮ているうちに具材の旨みが溶け出して味わいが変化することなので、最初から強い味にならないような割りしたにしています。食べきれなかったら冷蔵庫で保存して、翌日は牛丼やおじやにしてもおいしいですよ」(「伊勢重」6代目宮本重樹さん・以下同)
◆教えてくれたのは:「伊勢重」6代目宮本重樹さん

明治2年創業。現存するすき焼き店としては東京最古といわれる。手切りの肉、炭火、割りしたの配合など、創業当時の伝統をいまも守る。
肉の選び方:いくつかの部位をミックスするのが伊勢重流

この日はリブロース、サーロイン、ヒレを合わせて提供。
「違った肉の味わいが楽しめます。家庭ではほどよく脂がのった、リブロースなどがおすすめです」
味つけ:しょうゆが利いた甘さ控えめの割りした
家庭で作るときは、「大まかな配分ですが、みりん、砂糖、しょうゆ、水が1:1:3:6です」。まず肉を人数分焼いたら、すぐに溶き卵で食べる。

牛脂を溶かし、割りしたが煮立ったら、脂の多い肉から加え、サッと火を通す。

焼き方:肉や野菜を加え、煮詰まったらだしを足す
店では煮詰まってきたら昆布だしを加える。

「水でもいいのですが、だしで薄めるとより上品な味わいに。具材は『食べ切ってから加える』を、何回か繰り返すのがおすすめです」

◆伊勢重

肉は産地にこだわらず、A5ランクのものを使用。板前が手切りで切り分け、水火鉢に入った炭火で焼く。夜は6050〜1万4080円(サービス料別)のコースから選べる。
東京都中央区日本橋小伝馬町14-9
【関西】「豚捨」肉に砂糖としょうゆをかけ手早く焼いていく
牛脂を溶かして肉を入れたら、上から調味料を直接加えるのが関西流。
「砂糖としょうゆを振ったら、強火で手早く焼くのがコツです」と、白幡欣也さん。とはいえ焦がさないように焼くのは難しく、店でも一人前になるためには1か月の特訓が必要だという。

「焼くときは肉の音を聞きながら、素早く手を動かします。パチンパチンという高い音がしたら焦げる前兆。家庭では、昆布だしを加えてください」(「豚捨」統括マネージャー・白幡欣也さん・以下同)
◆教えてくれたのは:「豚捨」統括マネージャー・白幡欣也さん

明治42年、三重県の伊勢で西洋料理店として開業。『捨吉』という名の初代が養豚業を営んでいたことが、店名の由来といわれる。
肉の選び方:家庭ではサシが入った肩ロースが焼きやすい
「強火でサッと焼くため、ある程度脂のある肩ロース肉がおすすめ」
店ではA4~A5ランク相当の、1枚100g近くある大判の肩ロース肉を使用。

味つけ:肉の上に直接砂糖としょうゆを振る
まずは鉄鍋にしっかり牛脂をなじませる。
「なければ、薄くサラダ油をひいてもOKです」

店ではたまりじょうゆに近い濃口しょうゆと上白糖を使用。焼けたらまず、肉を食べる。

焼き方:野菜、残りの肉も焼きながら味つけ
「野菜を入れたら同様に砂糖としょうゆを振り、手早く焼きます。ねぎは断面がプクプクしてきたら裏返す。豆腐から焦げていくので注意を」

残りの肉を加えたら、再度上から砂糖としょうゆをかけてサッと焼く。

牛肉は『豚捨』専用に30か月育てられた伊勢肉の未経産雌牛のみを使用。熟成肉のような味が特徴。伊勢コース(1人前・9350円〜)。
◆豚捨 KITTE丸の内

東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE5階
撮影/玉井幹郎、菅井淳子 スタイリング/三谷亜利咲 料理/新田亜素美 取材・文/勅使河原桜
※女性セブン2025年1月2・9日号