『ひき潮』が流れ、汽車が駅に戻り、会場に明かりがともる。2時間半の旅が終わり、客席からゆっくりと、本当にゆっくりと去っていく波が見える。
杖を突いていらっしゃる高齢の方も多い。きっと、じっと長く座るだけでも大変な人もいるだろう。それでも大好きな彼の曲を聴きたくて、知らない曲も知りたくて、訪れる。そして、次の旅に向けて気力をみなぎらせるのだ。
さださんも、コンサートの途中こう告げていた。
「この年ですが、まだまだ成長するからね」
72才の成長宣言。会場から、大きな拍手が起こっていた。
知らぬならワクワク聴こうホトトギス。そんな今回の「さだ旅」に興味を持った方に朗報だ。「2024さだまさしコンサートツアー“51”」(11月22日東京ガーデンシアター公演)が12月30日、U-NEXTで配信される。旅の出発は18時! 私も参加する予定だ(見逃し配信は2025年1月13日まで)。
音楽は、誰もがどこでも行ける特別な指定券なのだと改めて思う。
『銀河鉄道の夜』に出てくる、ジョバンニが手にした、どこへでも行ける緑色の切符とちょっと似ている。
「次はどんな曲が聴けるのだろう」
そう思った瞬間、もう旅の切符はその手に。さあ、汽笛が聞こえてくる——。
◆ライター・田中稲
1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。近著『なぜ、沢田研二は許されるのか』(実業之日本社刊)が好評発売中。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka
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