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『シルエット・ロマンス』『スローモーション』『セカンド・ラブ』…女性歌手の表現力を覚醒させる来生きょうだいの楽曲 来生たかおの歌声は「優しく温かなグレーの彩り」

聴けば、心をロマンスに染められる来生たかお作品の数々
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1970年代から数多くのアーティストに楽曲を提供してきたシンガーソングライターの来生たかお(74歳)。姉の来生えつことのコンビによる名曲が多く、『夢の途中−セーラー服と機関銃』や『シルエット・ロマンス』など、提供曲を自身のオリジナル・シングルとして発表したケースも多い。そんな来生たかおの世界について、ライターの田中稲氏が綴る。

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いきなり冬がやってきた……。突然にもほどがある、とボヤキながらセーターとコートをアワアワと出している方、多いのではないでしょうか。私もです。

コートで身体を包んでも、心が追い付かない。クリスマスキャロルが聴こえても「あっ、えっ、クリスマス!? ハイハイ確かに時期的にはそうですね、ハイハイ(汗)」と焦ってしまう。冬のロマンチックモードへの切り替えには、秋という助走が必要不可欠なのだとつくづく思う。

ああ、どう切り替えよう。こういうときこそ音楽! 秋がないなら、来生たかおを聴けばいいのよ。私のラグジュアリーなハートが、ロマンスの匠、来生たかお楽曲を欲している!

♪シルエーッ……(←『シルエット・ロマンス』の一部を歌ってみました)

アイドルの表現力を引き出す来生きょうだいの作品

思い出してみると、私は来生えつこさん&来生たかおさんコンビの楽曲に、常に心をロマンスで染められてきた模様。お2人が姉弟なのか、兄妹なのか(調べてみたら姉弟でした)という小さなミステリーも含め、昔からその関係に惹かれていた。家族がタッグを組み、こんな美しい風景を紡ぎ出せるなんて、生まれる前から神が仕組んだとしか思えない。まさに運命!

お2人が描くのは、恋や愛のフィルターがかけられ、いつも以上に美しい色に染まった情景と、そこに浮かぶ想いのみ。煽るような強い言葉やリズムはない。それが、女性歌手の底知れぬ表現力を覚醒させ、恐ろしいほどのメランコリック&ドラマチック&ロマンチックが生まれるのである。

たまにアイドルの歌唱に「女優」を見る瞬間があり、テクニカルな上手さとはまた違う、表現力にびっくりすることがある。その作詞作曲の欄を見ると、必ず彼らの名があるのだ。「来生えつこ、来生たかお」と。クーッ!

具体的に、私が仰天した人たちの名前と曲を挙げてみよう。

・中森明菜『トワイライト〜夕暮れだより』(1983年)
・南野陽子『楽園のDoor』(1987年)
・河合奈保子『疑問符』(1983年)
・原田知世『悲しいくらいほんとの話』(1982年)

原田知世『悲しいくらいほんとの話』はドラマ版『セーラー服と機関銃』(フジテレビ系)の主題歌
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ビビった。私自身の、アイドルが歌うバラードに目がない、という嗜好の問題あるだろうが、これらを歌う彼女たちは、歌の主人公として生きていた。

中森明菜さんはデビュー曲『スローモーション』や3rdシングル『セカンド・ラブ』(いずれも1982年)も来生作品。『セカンド・ラブ』は、大橋純子さんに提供する予定だったというのがビックリ。大橋さんが歌えば、また違ったラブの風景が広がったことだろう。

デビュー当時の中森明菜(1982年撮影。ph/SHOGAKUKAN)
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アイドルだけではなく、艶やかな歌声を持った実力派アーティストの品と艶を底上げする点でも、恐ろしい威力を発揮する来生印。前述した大橋純子さんの『シルエット・ロマンス』(1981年)、桃井かおりさん(来生たかおさんとのデュエット)の『ねじれたハートで』(1982年)、薬師丸ひろ子さんの『語りつぐ愛に』(1989年)などなど、こうして書いているだけで、心が夕暮れ色になる。

女性歌手の歌声の品と艶を底上げする威力に驚いた
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どんな他愛ない日常もロマンスに

改めて来生たかおさんを知りたくなり、オフィシャルサイトに飛んでみた。「スペシャル」のメニュー欄で読むことができる、本人の手による身辺雑記風の「コメント」がとても興味深い。あんなに美声なのに、タバコが大好きで50年間やめたことがない、と書かれていて驚いた。そういえば、うちの父も1日に1箱以上吸っていたが、「北新地の裕次郎」と異名をとるほどの美声であった。吸い方の問題なのだろうか。タバコについて考えさせられる。

最近では、クレジットカードを6枚も落としてしまった(しかも戻って来た)という、衝撃の日常がほのぼのと描かれていた。もう少し遡ると、お笑いコンビ・かまいたちの濱家さんのYouTubeを見て、ラッキョウ入りチャーハンを作ったという記述があり、萌えた。来生さんが作れば、ラッキョウ入りチャーハンだろうが、味噌ラーメンだろうが、すべて赤ワインと合う味になる気がする。

来生さんの曲を聴きながら読んでいると、どんな他愛ない日常もロマンスになり、勝手にいろんな妄想が湧き出てくる。危険だ。

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